「BDは勝ったけど、勝利の大きさとしてはMD程度におさまっちゃうのでは」という小飼 弾さんのご意見には賛同できません。MDは音楽メディアとしては容量が足らず、たくさんの曲を聴くために何枚も持ち歩くか、1枚ポッキリで我慢するかといった使い方でした。今考えると、音楽好きな人にとってこれはかなり不自由な制約でした。そんな折に登場したのがiPodに代表されるポータブルオーディオプレイヤーです。自分のお気に入りの音楽を好きなだけ詰め込んで持ち歩けるというのですから! 言わばパラダイムシフトが起こったわけです。娘が飛びつくわけですよー(今やライブラリは4000曲越え!)。
MDを包括する形でiPodなどのオーディオプレーヤーが発達していったのです。一方、CDは今でもしぶとく残っています。それは何故?
CD(CD-ROMに限らず書き込み可能なメディアを含む)は録音のためのメディアというよりは、商品を提供するためのメディアとして流通しました。もっとも、ネットで入手できるタイトルも増えてきており、早晩CDはネットに取って代わられるのではという指摘もあります。おそらく長期的なスパンで見ればそうなることでしょう。しかし、ここ数年は物理的なメディアは安泰なはずです。その理由はネットでの音楽配信がマーケットとしては未成熟なこともありますが、物理メディアに対するコレクターの需要が少なからず存在することが大きな要因となっています。音楽とか映画・ドラマ・アニメといった映像の分野では、作品やアーティストに対する熱狂的なマニアがいるものです。
例えば、うちの娘はあるアーティストのファンです。CDが発売されると複数バージョン(ジャケットや中身がちょっとずつ違う)をすべて揃えないと気が済みません。まんまと制作会社のワナにはまっているのですけど、自ら進んでやっているのでどうしようもない。私にとっては理解に苦しむ行為ですが、こういうファンが五万といるわけです。
DVDでも同じことが言えるのではないでしょうか。そしてここが肝心なのですが、Blu-ray Discは録画媒体であるだけでなくDVDと同様、コンテンツを提供する器でもあるということです。「オタク」は今やワールドワイドな存在で、ことアニメに至ってはかなりコアなユーザー層を形成してます。プラス、昔からの映画ファンですね。こういった層はパッケージメディアにお金を落とすことを厭いません。少なくともカタチあるモノを集めたいという欲求を満たすために、CDやDVD、Blu-rayは存在し続けるわけです。
「YouTubeやニコニコ動画はどうなの?」という声も聞かれますが、これはそもそも使われ方が違います。見流すことが前提です。特に「ニコニコ動画」は仮想的に同期を取ることで共通体験として視聴やコメント投稿ができ、皆で盛り上がれる「場」が楽しいわけです。もちろんニコニコ動画を含め、YouTubeのような動画共有サイトやWinnyといったファイル共有ソフトは、コンテンツのダウンロードが主たる目的となり得ます。しかしこれらは電子的に保存はできても、カタチが残りません。付加価値が無いに等しく、そこがマニアにはちょっともの足りないのです。また、一般のコンシューマーにはPCの操作が必要となる動画視聴方法は未だに敷居が高く、ディスプレイ越しに観ることにも抵抗を感じる方が多いようです(他にもやり方はあるのですけどね)。
iTunesストアにおいては、音楽タイトルの差別化が図られてきています。それがアルバムアートワークの提供であり、PCやiPodにおける美しいカバーフローの表示でしょう。これはファンの心をくすぐる心憎い演出です。iTunesストアでの音楽販売の成功例を見ると、別にそれほどのマニアでないなら「映像だってネットでいいジャン」という結論に至りそうです。特にアメリカでは「映像は消費するもの」という考え方が主流のようで、AppleはHD品質の映画レンタルを推し進めています。日本でも1回観れば十分というコンテンツはTVやレンタルショップで済ませる傾向があります。音楽に比べると映像は一過性のものが多いので、ネット経由で視聴しやすいと言えます。しかし、メディアが安価であればそれはそれで消費してもよいモノとして一般に認知されますから、しばらくはDVDのコンテンツが売れ続け、Blu-rayがDVD並の価格になればそれに取って代わるいうのが私の予想です。
人間の習慣はすぐには改まりません。HD対応テレビを購入するタイミングで、Blu-rayレコーダーを買いたいと考える人は多いはず。デジタルであろうと無かろうと、TVのドラマや映画・バラエティ等の番組を取りためるのは日本人の習性だと思います。ハードディスクの容量には限界がありますから「もったいない」という感覚で、ついついディスクに焼いてしまうのです。うちの例ばかりで恐縮ですが、我が家のDVDレコーダー内蔵のハードディスクは何故かいつも満杯です。録画する前にDVDに焼いてから消すという作業をいつも娘が行っています。うちの家族にとっては、TV番組は残すだけの価値があるものなのです。また、一般ユーザーはわけの分からないネット配信システムやセットトップボックスを「選択して使いこなす」または「しばらく様子を見る」よりも、まずは慣れ親しんだ方法を選ぶでしょう。ただ、Blu-rayレコーダーはまだ高嶺の花。ここで一気に広めてしまわないと買い控えが起こり、ネット配信の普及が追いつくまでDVDで我慢してしまうということにもなりかねません。
ハードディスク等の据え置きメディアがもっと巨大になるとか、あるいは、インターネット上のサーバーに所有するコンテンツを保存できるようになったなら、パッケージメディアは不要になるだろうとは思いますが…。ダウンロードしたコンテンツを一括してネット上に保管するなどという話はコンテンツホルダーが許すはずもなく、まず実現しそうもないですし。本題からは反れますが、そもそもコンテンツを電子的に保存しておきさえすれば、世のメディアがいかに変遷したとしても未来永劫安泰であるというのは幻想に過ぎません。物理的な媒体は必ず劣化しますし、機器には寿命があります。その前にコピーしようともくろむかもしれませんが、動画の場合は「ダビング10」で対応しきれるものやら。乗り換えたり廃棄する直前にしかたなく試みるだけでしょう。いきなりブッ飛ぶまで手付かずなのがオチです。まあ、この話は長くなるのでここまで。
「ユーザー不在の規格戦争」という意見には「一票」ですね。ともあれ、規格が統一したことは良いことです。これでやっと次世代機器を安心して購入できるというものです。PS3の普及にも拍車がかかりそうだと期待してます。ですが、HD DVDを支持して早々と機器を購入してしまった方には「お気の毒」としか申し上げられません。もちろん、東芝は責任を持ってサポートし続けるべきだと思います。早速Blu-ray対応機器を売り出して「乗り換えキャンペーン」をやるのもいいかも。アーリーアダプター層こそ、機器を買うべくして買った「最も優良なお客さん」なのですから。「ものづくり」においては、えてして後発の方が成功したりします。一から出直せるというのは、実は絶好のチャンス到来なんじゃないでしょうか。東芝は今こそ、株価が上がった理由についてとくと考えるべきですね。
2008/03/03:続編追加
Shin_s さんやBLACK.さんのコメントに対する返答として、続編を書きました。下記リンクよりご覧ください。
ネットの向こう側にDVDライブラリはあるのか −「Blu-ray」つづき
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
kirifue on 2008/03/03
kirifueさん、こんにちは。おひさしぶりです(おぼえてらっしゃらないでしょうけど(^_^;;)
さて、特に BLACK. さんの書込みも読ませていただいての感想ですが。
「ご自分の使い方が世間一般の標準とか常識だと、勘違いなさっている方が多いように思います」
とのコメント、僕も常々感じていることです。
単にウェブを見るとか、メールを使うとかいうこと以上にネットを使う、つまり、こうしてブログを持ったり、そこに積極的に書込みまでする人って、日本人全体からすればごく一部です。少なくとも僕のまわりの友人でそこまで日常的にやってる人間はいません。
そういうことを言うと今度は、それはおまえのまわりが遅れてるんだ、と“進んだ”人たちは言うのでしょうが、それは特異な進み方だと気づくべきです。
いや、僕自身もkirifueさんがおっしゃるように、自分の位置を当然と思って論じちゃうことがあるのですが。
BLACK.さんが書かれていた反論もまさにその通りだと思うのですが、案の定そういう人たちから、たとえば「手許にディスクを置いておきたい人間なんてすでに少数派だと、まずは認識すべき」なんて反論がされていましたが・・・。
実は僕もちょっと前に
● 【余談・放談】パッケージソフトを所有するということ
http://japan.cnet.com/blog/skys/2008/02/12/entry_25005064/
なんていうエントリを書かせていただいていました(宣伝、すみません(^_^;;)
そこにも書いたのですが、おっしゃる通り、人間の習慣というか本性というか、そういうものってテクノロジーの進化だなんだっていうことに関わらず、変わらないものってあると思うんですよね。
技術を理解し、その進化に期待するのはもちろんいいことですが、“人”が見えなくなるのはどうなのかな、と。
自戒を込めてそう思います。
Shin_s on 2008/03/02
ご自分の使い方が世間一般の標準とか常識だと、勘違いなさっている方が多いように思います。そんなわけないのに。
このままではいけないとか、こうすべきだとか、こうなると未来が明るくなるという建設的な意見は良いと思うのですが、「これはダメだ」とバッサリ切り捨てるのはどうかと。
いえ、これは私自身にも言えるので、自己反省点でもるあるのですが(過去に何度か失敗してます)。
YouTubeは高画質化するらしいですし、これからは他の動画サイトもそういう方向に進むのは間違いありませんが、まだまだ難しいでしょう。Stage6も閉鎖しましたしね。
kirifue on 2008/03/02
特に青紫レーザーは最後の周波数ですからね。
これ以上電波に近づくとレーザーの透過率が落ちるそうで。
ここで中途半端な規格に決まらなくて良かったです。
そうそう、MD程度の成功には私も賛成できなかったので
実は氏のブログに反論を書いてます。
どうも負け惜しみにしか聞こえないんですよね。
BDと決まった以上は順次DVDを置き換えていくと思います。
BDのコストダウンは必至ですから、いずれDVDとBDを使い分けるのが馬鹿らしくなる時期が来ます。
(その時にはPS4が出ているかもしれませんね)
ゆえにMD程度の成功なんて考えにくい。
ネット配信も当面GBクラスの配信は現実的ではありません。
YouTubeでも満足しているなんていう人はその裏には前提条件がいくつか存在する事に気づいていません。
BLACK. on 2008/03/01
技術として何を選択するかは企業にとっても判断が難しいでしょうが、統一できるところをあえて異なる規格で押し通すのにはやはり無理がありました。今だから東芝だけが一方的に責められますけど、どの企業もその点をよく肝に銘じるべきだと思います。
技術は消費者のためにこそあるべき。東芝のように技術力があるならなおさらです。
kirifue on 2008/02/25
我が家もRDシリーズを愛用中ですが、PCから予約できる点は二重丸ですね。
東芝もいい製品を出すので好きなんですが、今回のHD-DVDの規格争いはいただけない。
何せテレビもバズーカの最終モデルを愛用中で気にいっています。
kyamaga on 2008/02/25
録音テープからの解放は、確かに画期的な出来事でしたね。
さらに、iPodによってMDをはるかに上回る容量と音質が実現し、ネット配信も当たり前になってきました。動画においても高画質で使いやすいインタフェースを備えたネット配信システムができれば、爆発的に普及する可能性はあると思います。
それでも、ディスクやそれに替わるようなメディアはしぶとく生き残るでしょうね…
kirifue on 2008/02/23
BLACK. on 2008/02/23
事情をよく知らずに買った方も結構いるんじゃないかと思いますが、かなりショックだったでしょうね。あせってディスクを買いに走るとか…。
あと、東芝の「RDシリーズ」には熱狂的なファンがいますよね。録画・編集機能は評判いいらしいですから。まあ、8年サポートしてくれるなら、使い倒すこともできますし。
当事者じゃなくても、東芝の今後が気になりますねぇ。BDレコーダーが出たら、買っちゃうかも、ですよ?!
kirifue on 2008/02/22
テレビでやってましたが、HD-DVDのディスクが品薄なんだそうです。すでに使ってるユーザーが居る以上、供給するのは展開した会社としての義務では・・・?と思いますね〜
現在の提携関係見てると、ソニー、シャープ、パナって、液晶テレビ出してるメーカーですよね。
アクオスならアクオスのレコーダーを買う傾向があるので、自動的にHD-DVDは選択肢から消えますしね。
PS3も比較的安いので、見るだけなら投資もそんなに大きくなくて済みますし・・・・普通ならBDかな、と思ってました。
撤退も早かったですねぇ・・・
ちえ☆ on 2008/02/21
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Shin_sさん、こんばんは。
返事を書いていたら長くなってしまったので、別ブログとしました。
http://japan.cnet.com/blog/kirifue/2008/03/03/entry_25005684/