最終更新時刻:2009年11月7日(土) 10時00分
230

初音ミクから宇宙開発まで。日本のテクノロジー

公開日時:
2007/11/24 22:27
著者:
tchiga

 そういえば、2007年は1月から毎日新聞のネット社会の批判[my-mai.mainichi.co.jp]で始まり、朝日新聞がアベする[asahi.com リンク切れ]をアサヒる[asahiru.net]と日本テレビがアサヒるをアサヒったり、話題の絶えないコトばかりでした。そして、日本は終わっていくな、と感じてしまいました。

*本来ここに投稿すべきものではないのかもしれませんが、ちょっとガッカリすることが続くので、批判を承知で投稿してみます。批判的・感情的文章が続きますので、不快に感じる方はスルーしてください。

日経BPに「ハイビジョン月面画像をネット公開しなかったNHK」という記事があがっています。この記事を読んでかなりガッカリすると同時に、このままで良いのか?むしろ日本をだめにしていくのではないのか?と思ってしまいました。

宇宙開発に限らず、新しい技術を開発するには多額の資金を必要とします。利益を追求する企業であれば、商品という形で収益を得なければ技術を開発していくことは出来ません。しかし、宇宙開発や基礎科学の分野などは、直接収益につながるものではありません。特に宇宙開発は膨大な資金がかかる上に、失敗すると一撃で全てが吹っ飛んでしまうと同時に、さらに資金を必要とするやっかいなものです。従って、本当に宇宙開発は必要なのか?税金をつぎ込む必要があるのか?という批判の対象になります。そして失敗のたびに開発費は削られ、成功確率は下がるという悪循環を生み出していきます。

 しかし宇宙開発は、日本の技術力を示すものであると同時に、そこから派生する多くの技術の根底になりうるものであり、様々な分野で応用が可能なとても重要なものです。そしてそれらは儲からない(利益追求型では成り立たない)分野であるからこそ国が主導で行うのです。健康保険や年金、ユニバーサルサービスだって同じです。

打ち上げの際、9月14日付の日経新聞の春秋[nikkei.co.jp リンク切れ]に宇宙開発についての記事が掲載されました。内容は以下の通りです。

日本で一番古い物語『竹取物語』では「月の都の人」かぐや姫がしばらく住んだ「この国」を、月から姫を迎えに来た「天人」が「穢(きたな)き所」とさげすむ。現代のこの国も、首相がよく分からぬ理由で突然辞めてしまうようでは「美しい」とは、とてもいえない。▼「穢さ」に愛想を尽かしたわけでもなかろうが今日「かぐや」がこの国を離れる。月へ向かい、周回軌道に乗ったあと、100キロメートル上空から地形や地層・断層、表面の映像、岩石の分布、磁場の様子などを観測し地球にデータを送ってくる月探査衛星に『竹取物語』の姫の名を付けたのである。▼専門家によれば「月の誕生の論争に終止符を打てるかもしれない」し、これから中国、インド、米国が相次いで月へ人工衛星を打ち上げるので国威発揚の意味も少なからずあるらしい。そう聞かされてもなお、文筆家の山本夏彦さんが昔、発した警句「何用あって月世界へ」の方に共感する人は多いのではないか。▼巨額の国費を費やす宇宙開発なら、月を研究するより、宇宙から、温暖化に悩む地球を調べたり日本の安全を保つのに必要な情報を集める技術を磨くのが先。そんな考えもある。税金の使い道に優先順位をつけるのは政治の仕事だ。混乱を早く収め、天人にさげすまれない国にする本来の仕事に取り組まなくては。 

 このような記事が、大手新聞社で掲載されることにかなり絶望しました。日本の未来に絶望を憶えました。「直接金にならないならやるな」ともとれる文章であり、科学技術への不理解と同時に、科学技術に興味を持つ機会さえ奪いかねないものではないかと思うのです。

これは宇宙開発に限ったことだけではなく、最近ネットを騒がせている「初音ミク」にも言えることではないかと思います。

クリプトン・フューチャー・メディアから発売されたバーチャル・シンガー・ソフト音源『VOCALOID2 初音ミク』は、その歌唱力と、いわゆるアキバ系をターゲットとした商品で、Youtubeやニコニコ動画にアップされるやいなや、爆発的なヒットとなりました。¥15,000程度と比較的手頃な価格設定も良かったように思います。

しかし、メディアの取り上げ方には疑問符がつきます。 「オタクの間で」「動画投稿サイトで」ヒットしているという書き出し文句で始まる記事ばかりで、VOCALOIDというサンプラーの表現力、ひいては技術力に注視したものが少ないように感じます。挙げ句の果てにはTBSで明らかに歪曲したとも思える紹介[J-CAST]がなされ、クリプトンの公式BlogでTBSに抗議する「報告とお詫び」が掲載される始末。そこまでひどくはないとはいえ、CNETの記事もITmediaの関連記事も似たような傾向にあると言えるでしょう。

自分は初代のVOCALOID「MEIKO」から使用していますが、まだまだ進化する余地があるとはいえ、その再現性にかなり驚き、感動しました。 個人でDTMをやっている人間にとって、ボーカルを入れることが出来るのはかなり革命的です。もともとDTMは世間一般的に広く知られている分野ではなく、基本的にソフトウェアは海外製のものが主流で、値段も手頃なものではありません。そんな中に登場した初音ミクは原型をYAMAHAが開発し、クリプトンが商品化した日本の技術の結晶といえます。上記にある通り、企業としては収益を上げなくてはなりません。その中でコンピュータに近いオタク向け商品として発売することはビジネスモデルとして当然の結果であり、それは見事に的中したことになります。また、開発元のYAMAHAからではこのような形で商品化することは困難だったと、インタビューに載っています。初音ミクという商品が、今までDTMに興味の無かった層を取り込み、DTMの裾野を開いたことは素晴らしいことです。

 おもしろおかしく記事を書くことで、注目を集めることは必要なことかもしれません。しかし、それによって本来その根底にある素晴らしい技術・コンセプトを、歪曲しないにしろ正確に伝えないというのは果たして正しいことなのか?と思えるのです。(この記事のタイトルの付け方もそれに近い気もしますが)

防衛省の技本で開発されている次期哨戒機試作機「XP-1」[wikipedia.org]や先進技術実証機「心神」[wikipedia.org]を戦争反対をスローガンに批判することは簡単です。しかし、注目すべきは今までアメリカからブラックボックス状態で購入していた「ジェットエンジンを日本が開発」しているという事実であって、その技術は軍事目的だけではなく、世界に通用する技術力と可能性を秘めていることではないでしょうか。心神に至っては年間109億の予算で開発されていますが、109億「」ではなく109億「しか」であるべきです。ジェットエンジンの開発費用が年間109億というのは世界の水準から鑑みても、少ないとしか言いようがありません。導入されるかどうかは、危ういですがアメリカの次期主力戦闘機F/A-22ラプターは1機400億はするらしいです。また、先進個人装備システムに「ガンダム[yahoo.co.jp]」の名称が使われていることに、笑いが起きるかもしれませんが、それもまたネーミングに注視するあまり本来のテクノロジーを蔑ろにしているようにも思えます。また、このような開発は一般の企業で行うことは難しいのも事実です。

さて、始めのNHKの記事に話を戻しますが、学術的価値のある映像を権利にこだわることで、一般に広く知れ渡る機会を減らすことによって、JAXAへの関心、ひいては将来の科学技術者を誕生させるきっかけを奪っていることに他ならず、日本の技術を世界に発信することもままならず、日本の科学技術の発展に支障を来す可能性すらあると言えます。果たして、どれくらいの日本人(視聴料を支払っている)が本来あるべき姿の映像を見ることが出来るのでしょうか。知的財産推進計画2007[kantei.go.jp PDF P.95参照]にあるNHKアーカイブスのネット配信はこのままの状況でネット配信出来るのでしょうか。それ以前にNHKは「公共放送」ですよね?誰のための放送ですか?

 話の焦点がブレ始めているようにも思えますが、「税金」や「サブカルチャー」というバイアスのかかったフィルタを通して伝えられることで、その根底にある日本の技術力を蔑ろにすることは、確実に良いことではありません。メディアの言う「技術大国日本」の技術を正しく伝えなければ、この先日本のテクノロジーは死滅していってしまうのではないでしょうか。それはメディア・リテラシー以前の問題のようにも思えます。既存メディアのインターネット批判にしても、それはインターネットを上手く活用できないでいたメディアの方に問題があるとも言えます。BBCJoostZattooなどをみれば、決してメディアとネットが相性の悪いものではないということがわかります。 これまでのメディアは放送されればそれきっりで、批判されてもスルーしてしまえばどうとでもなっていましたが、BlogやWiki、動画投稿サイトなどで情報が見える形で残るようになりました。同様にメディアに対する批判も情報として残っていきます。本来驚異ではないそれを驚異だと感じてしまうメディアは、その体質が現代には似つかわしくないのかもしれません。

また、話がずれてしまいました。すみません。長文になってしまいましたが(もっと書くことがあるようにも思うのですが、風呂敷がたためなくなりそうなので)、私は戦争肯定論者ではありませんし、直接の科学技術者でもありません。しかし、やはり情報が正しく伝えられないことによって、将来発展する可能性のある、日本の誇る技術を死滅させかねない今の現状は、かなり危険であると思います。おもしろおかしいだけではない、その奥に燦然と輝く日本の誇る技術にもっとスポットが当たるべきだと思うのです。

ここまで、かなり批判的に書いてきましたが、最後にこの記事に問題があったときの逃げの台詞を、使い古されたメディアの言い訳の常套文句で。

「むしゃくしゃしてやった。今反省していません

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

3

>>「公共放送」
彼らにこの意識があるのかが非常に問題なのだと思います。
この「看板」があればお金が集められる…程度なのではないでしょうか。昨今のNHKの行動を見るに、そう思えてなりません。
(そもそもたとえば「公務員」たる社保庁の人たちが…な段階で「公」の字がついているからといって、国民のほうを向いている…というのは「個人の自由」崇拝の教育の結果、幻想になっている気がします。)

>>本当にこっそりでもDRMつきでも「公式に」公開してほしいです...
事、中国絡みの事案に関しては、日中記者交換協定によって丸くなってしまい、中国に、向こうの国営テレビ局と合弁の北京メディアセンターをおったてたNHKをあまり信用していません。(かなり偏見に満ちてますが…)
なので、先のコメントの
>>>>もしくは、こそ〜り映像を渡してたりして。
というのは、今回の映像を中国メディアが嫦娥の手柄として公開するかもね〜〜といった茶化しのつもりでした。

>>「報道」のあり方も問われるような気がします。
ワイドショーでしかないですからねぇ…ほとんど。
「報道のありかた」というか「報道なのか」という問題ない気もします。

  かる on 2007/11/26

2

かる様 コメントありがとうございます。

今回のかぐやの件では、放映権を獲得したカナダのディスカバリーチャンネルがネットにHD画像で公開しています。(海外からはアクセス不可)
このような状態ですから、元の記事にある「事態が微妙なので」の言い訳も微妙であるどころか、コンテンツホルダとして世界に発信する機会を失ったことにもなります。

さらに言えば、コンテンツホルダとしての権利を重要視した結果、
「コピーされる可能性」と「公開されることで技術に関心を抱く機会」
を等価ととらえ、かつコピー抑止の観点から、将来への可能性を軽視したことが「公共放送」として問題があるのではないかと思います。

本来、今回の記事は「月面画像がHDで公開!」というような、好意的な記事で関心を集めるべきであって、HD画質という一般的に認知された技術を用いることで期待された「宇宙開発への関心」や「日本の技術への興味」が裏切られた形となるのではないでしょうか。

他の件も同様に「面白いかどうか」を基準としてしまっているが故の、事実を正確に伝えるという「報道」のあり方も問われるような気がします。
何にしても、とても悲しむべき事態です。

本当にこっそりでもDRMつきでも「公式に」公開してほしいです...

  tchiga on 2007/11/26

1

お隣の自称「発展途上国」が月探査衛星を打ち上げて、同じく画像を地球へ送ってくるようです。

お隣の国のコピーに対する認識を鑑みれば、NETにあげない方がよかったかも…と思えなくもないです。
あちらは国威掲揚のためなら手段を選ばないですから。

そんなわけで、あちらが公開してから「要望が強い」とか言いながらしれっとネット公開するとNHKも株が上がるんですが…。
ま、九分九厘ない話ですが。

もしくは、こそ〜り映像を渡してたりして。

既存メディアの「報道」においての職人・技術軽視についてはほぼ同意です。
ま、数字が取れないんでしょうけど。(だからたまにドキュメンタリーとか、深夜に技術系番組が…。)

  かる on 2007/11/26

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。