Lingrをリリースしてからちょうど1年が経ったので、この機会に総括してみたいと思います。
お世話になってるユーザやAPI開発者の皆さんに恩返しをする意味でも、これから自身で何かを開発する際の参考にしてもらえればいいな、という思いから、なるべく具体的な数字を伝えることにしました。

これはデータセンターで計測されたデータ転送量のグラフです。
あとはGoogle Analytics(以下略GA)による統計で、簡単にご紹介できる現状の数字としては、
といったところです。
なお、GAのデータに関しては、API経由のアクセスは一切カウントされないのと(あとで述べますが、API経由のアクセスはブラウザ経由の2倍あります)、AjaxやCometによるアクセスもページビューにはカウントされないという点に注意が必要です。
たとえば上のグラフ(転送量)で見ると2月のAPI公開直後、および3月末のJustin.tvがLingrを採用していた頃のトラフィックがスパイク状になっているのがわかりますが、これはAPI経由のトラフィックなのでGA上には数字としてほとんど現れていませんでした。
あとAlexaもありますが、中で取ってるデータと傾向が全然一致しないのであまり信用できない印象です。
それから、GAで取得したユーザの言語については70%日本語、20%英語、4%中国語、1%ドイツ語、あたりがメジャーどころとなっています。
ほかにもアラビア語(ar)、韓国語(kr)、オランダ語(nl)、スペイン語(es)、ポルトガル語(pt)、フランス語(fr)、イタリア語(it)、デンマーク語(da)、スウェーデン語(sv)、ノルウェー語(no)、ロシア語(ru)、トルコ語(tr)、タイ語(th)、チェコ語(cs)、ギリシア語(el)、ハンガリー語(hu)、クロアチア語(hr)、スロベニア語(sl)などからのアクセスが少ないながらも定常的にあり、これらほとんどの言語圏の人と実際に会話したことがあります(翻訳ボットをつかって)。特に最近はアラビア語&ペルシア語圏(イラン人・イエメン人)のコミュニティが活発です。
ブラウザのシェアは
と混戦模様。
アプリケーションレベルのデータとしては
という実績が主たる数字になっています。
登録ユーザ数をどう見るかについては、Lingrの場合にはユーザ登録しなくても使えるので、一般的なサイトとの比較が難しいところではありますが、おおむね経験からいうと登録ユーザ数の3-4倍ぐらいが非登録のまま使ってるのではないかと思われます。この推測を信じるなら、だいたい一般サイトでいうところの3万人ぐらいがサインナップしている状況に近いのではないかというところです。
また、全発言のうち70%ほどが非公開の部屋で行われているところも、当初予想したよりもかなり多い割合です。
さて、以上の数字から、あっさり結論を述べると、
ということが言えると思います。
さて。
現在はまだウェブを同時的(リアルタイム)に使うというパラダイムにはなっていないが、確実にそちらに向かうので、これらの数字の立ち上がりは遅いが着実に伸びるだろう、というのが当初からの予想でした。
たとえば、今から10年後を想像してみてください。さまざまな流行が生まれては消えるこの世界で、10年後も確実に残っているといえる本質的な分野はそうそうありません。ウェブの世界で、検索はずっとキラーアプリケーションでしょう。ブログやウィキなどのCMSもずっとキラーであり続けるでしょう。チャットもまた、何らかのかたちで10年後も確実に需要が広がっているだろうといえる、数少ない分野のひとつだと考えました。
あらゆるアプリがウェブ化していく昨今にあって、まだまだSkypeだのLimeChatだのMSNメッセだのクライアントアプリが全盛で、明確な勝者がおらず「小さな市場に群がる多数のプレイヤー」状態のウェブ・チャットも、市場が全体として小さくなることはないと考えています。
ひとつこだわりがあるのは、いま市場が小さいということは、グーグルやヤフーのようなシリアスな競合がやってこないという意味で、矛盾するようですがとても重要な意義を持っている、という考え方です。大手は需要が証明済みのマーケットに後から参入してくるので、それよりも後に参入したのでは絶対に勝てません。挑戦者にとっては、存在しない市場を自ら創造して証明者になることが唯一にして最大の正攻法だと思います。
成功しているアプリを見てインスパイアされ、すでに存在する市場で模倣品や改良品を作るのは精神的には楽だし、技術を鍛える良いトレーニングにはなりますが、それと「いまは存在しない新しいモデルを作る」という決断の間には超えられない壁があるように感じます。
たとえば、Cometという技術について、ブログで解説してみたり実験的に実装してみました、という人はかなりの数いると思うのですが、実際に腹をくくってCometをプロダクションレベルで使うアプリを作った人というのは、あれから一年経ってみてもほとんどいないみたいで、ちょっぴり残念です。(しかし、公平のために、あれから登場したいくつかの実装はとても面白いものだったし、勉強になった、とも言っておきたいと思います。)
時代はまだまだブログだのウィキだの非同期メッセージング全盛。ようやくTwitterのような半リアルタイムのアプリケーションがようやく先進的ユーザの間でブレイクしているという時代ですから、純リアルタイムで複数人がコラボするようなアプリケーションの時代は徐々に近づきつつあるとはいえ、まだまだ遠いと感じます。
結局のところ、ビジネスはタイミングが全て。モノの善し悪しはともかく、残念ながらLingrは時代にドンピシャではまるタイミングで登場したとは言えない、というのが現時点でのぼくなりの総括です。
果たして、このまま伸びればLingrがクリティカル・マスを迎える時代は来るのか?くるとして、いつ?
時代のモメンタムというものは、小さなベンチャーごときが「おれたちが動かして見せる」と威勢のいいことを言うには手に余るものです。
一方で、プロダクトというのは手を加え続けるとどんどん複雑怪奇になっていき、使いにくくなっていくものです。Lingrにとって、シンプルさと使いやすさは最強の武器ですから、そのメリットを減じるような新機能追加をどんどんやることは、「真に進むべき方向が見えてくる成長期」をまだ迎えていない現段階では自殺行為です。
かといって、時代が追いついてくるのをただ寝て待っているわけにはいきません。技術者のエネルギーをくすぶらせておくわけにもいきません。
では、どうするか?
長らく悩んでいたこの問いに、やっと答えが出ました。
「Lingrの反省を活かし、もっと時代に即した新しいアプリケーションをつくる」
これです。Lingrと同じビジョンを共有しつつも、もっと早期に立ち上がるアプリケーションをスクラッチから作る、という方向性がこの夏、ようやく出てきました。もう道筋は見えていて走り出しているので、内容については書ける時期がきたら書きたいと思います。
長くなってきたので、今回はここまで。次回はもっと掘り下げて「Lingrから学んだ反省点のまとめ」みたいなのを書く、かも。
p.s.
あと、9月7日に東京でITpro Challenge!というイベントで講演やります。募集はすぐに締め切られましたが、プレゼン資料は後日入手できるので、なるべく具体的に書いておくようにしたいと思います。ぼく以外の講演が全部面白そうなので、一人の観客としてすごく楽しみです。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
ぽんてぃ on 2007/09/15
> ぽんてぃさん
現実の経営にはリソースの制約から選択と集中がつきものです。やれればいいなぁと思うことが100ある中から、実際にやれる10を選んでやるわけです。ご指摘いただいたような点は、当然考慮していますが、その10に入らなかった、ということですね。
なかでも、営業努力を増やせば何とかなる、というような考えには全く同意できません。天に向かってつばを吐けば、自分にかえってきます。それを、もっと強く吐かないからだ、と根性論に持って行くのは間違った戦略だと思います。この世界には目に見えにくい物理法則のようなものがあって、大事なのはそれに抗うことではなくて、それを見抜いて生かせるかどうかだと思います。
> 跳箱管理人さん
まぁ、言い訳ととれるかも知れません。でも、今言える精一杯のことを包み隠さず正直に伝えたつもりです。
> Chikara Miyakeさん
まず、「日系企業をバックに日本人が率いて開発した」という色は極力出さないようにしています。あくまでシリコンバレーのスタートアップのひとつ、という見え方を意識しています。というのも、日本バックをちらつかせることはデメリットにしかならないからです。
で、ご指摘の閉鎖性の問題ですが、米国にもごく一部の上流社会にはありますが、日本みたいなことはない、と言えると思います。かなり純粋かつフェアにモノが評価されると言ってよいと思います。ただし、英語のセンスはかなり文化的に踏み込んだレベルの高水準が要求される、という一点は言えると思います。
このあたりの話は一エントリぶつ価値があるかとも思っていますが。。。
kenn on 2007/09/12
あ、ただ、一点、気になった(興味のある)ことがあります。
日系企業をバックに日本人が率いて開発したWebアプリケーションは、米国ではどのように迎えられるのでしょうか?
(馬鹿な質問かもしれません)
閉鎖性という意味では、米国と日本とを比べるにはあまりにも違いすぎるかも知れませんが、例えば、我が国では、韓国、中国系のサービス(オーマイニュース、百度)だけでなく、王者Googleでさえ、ほぼ日本化したYahooを相手に、検索のシェアの面では苦戦しています。
今のところ、日本発(もしくは日本企業発、日本人発)で、米国でブレークしたWebサービスを知りません。実際のところ、先に述べた閉鎖性は、米国にもあるものなのでしょうか?もしあると感じるなら、マーケティングの面で、なにかしら戦略を考えていますでしょうか?
(でも、そんなこと、ここでは書けないですよね・・・)
Chikara Miyake on 2007/09/09
私も、
> 現在はまだウェブを同時的(リアルタイム)に使うというパラダイムにはなっていないが、確実にそちらに向かうので
だと思います。
リアルタイムでコミュニケートできるWebベースのサービスが、非リアルタイムのサービスのシェアを超えるとは考えられませんが、そんなに遠くない将来、前者が我々の実生活に大きく食い込んでくることは間違いないでしょう。
「早すぎた」といえば買いかぶりかもしれませんが、ここはひとつ、「まともに使えて、UIもヒップなプロトタイプを作ってやった」くらいに考えて、次のプロダクトに繋いでいって下さい。
Chikara Miyake on 2007/09/08
跳箱管理人 on 2007/09/07
チャット自体にあまり魅力を感じません。
そう思っている人は多いと思いますが、そのあたりの調査結果はどうなんでしょう?
チャットに未来があると信じているのなら、営業努力が絶対的に足りないと思います。
また、一般市民に広く普及することを目指しているのなら、日本語版も必要ではないでしょうか?
マニア向けのマニアックなものを目指しているのか、大衆受けするものを目指しているのか、どっちなんでしょう?
ぽんてぃ on 2007/09/06
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営業努力についてのコメントは残念極まりありません。
チャットに疑問を感じつつも、Lingr は、もしかしたら良いかもしれない、行くところまで行くかもしれないと密かに期待していました。
だからこそ、大々的に宣伝してほしいと思っていたわけです。
それなのに、今回のコメントは、営業するに足りない糞でした。と言っているようなものですよね?
残念です。