最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

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疲れるコンピューティング体験とタンジブル・インターフェース

公開日時:
2005/04/08 04:21
著者:
kenn

ぼくらのコンピューティング体験は、ここのところ完全にGUI (Graphical User Interface) 一色となっている。四角四面のディスプレイ上に陳列されたボタンやアイコンのメタファーに、マウスを使ってポインタを動かし、クリックによってアクションを起こす。今やあまりにも当たり前となったこのGUIというのは、実はけっこうストレスを溜めがちだ。

なぜだろうか。

  • ディスプレイのユーザ作業空間が狭く、フィードバックが弱く、実世界とのギャップが大きい
  • マウスを操作してクリックするという行為は、意識的・直線的・計画的な動作だから遅い(例えば、同時に複数箇所をクリックできない)
  • 人間はプライオリティを決めて行動するのが苦手だから、実は無駄の方が増えやすい(例えば、急ぎの仕事があるときに限って机の片づけを始めたくなるように)

他にも色々あるに違いない。

ユビキタス・コンピューティングの提唱者・故マーク・ワイザーは、コンピュータは気配と存在感を消してバックグラウンドの世界に入っていく必要があると考えた。

とにかく、ぼくらがコンピュータに向かっているときは、あまりにコンピュータに向かい過ぎているということなのだ。

MITメディアラボの石井裕教授は、タンジブル・ビッツという未来的コンセプトにおいて、「時計はいつも見るものではなく、チラッと見られればいい」という話をする。自宅の部屋なら、壁にかけられた時計はそのような役割を果たしているが、これはつまり裏を返せばこういうことだ。興味のない情報は積極的に視界から消して欲しい、と。

環境とはもともと、そういう性質のもの。人間が環境のうちにある何かに意味を見出す瞬間、注意を向けた瞬間に、それを「見る」のであって、「見えている」という状態には実はまったく意味性がない。環境というのは「余裕」と表裏一体なのだ。

ちなみに、このあたりの感覚の個人差はけっこう大きい。使っていないアプリやウィンドウはマメに閉じたり終了したりするタイプの人もいれば、一度起動したアプリはずっと上げっぱなしという人もいる。ぼくは仕事に集中しているときには気にならないが、それでも時としてアイコンやウィンドウがぎっしりのデスクトップは気分が悪くなる。

これは、机の上がいつも整頓されている人といつも散らかっている人との違いにそっくりだ。でも、いつも資料が机の上に散乱している人も、その資料を常時見ているわけでは決してない。むしろ見ないことが習慣化してくる。

コミュニティエンジン中嶋さんのweblogで、このような記述があった。

東京に住んで思うことは、目から入る情報が膨大すぎて疲れることだ。
目をずっと開いていると、余分な情報が、何度も何度も、くりかえし入ってくる。
おなじ広告を100回も見たくない。3回ぐらいでいい。
私の目は、不必要な情報を何度も見るために存在しているのではない。
この街はくりかえしが多すぎるのだ。

広告は、街角の立て看、ラッピングバスからレシートの裏まで、人目につくあらゆる平面を埋め尽くしてきた。でも、人間が一日に消化できるカロリーと情報量は限られているのだから、媒体そのもののリーチを広げることで人様のアイボールを奪い合うことに発展性はない。そんなことよりも、時代の空気を読み、ピリリと気の利いたセリフを考えて人様を振り向かせる文脈力だ。プロの仕事だとわかっていても客を足繁く通わせるのがホステスの実力であるように、このとおり広告でござい的な露出がいくら増えてもシラケるだけだろう。

では、まったく新しい体験を供給するデバイスがメディアとして登場したら、どうなるか。

例えばオーグメンテッド・リアリティ技術(現実と仮想を重ね合わせる技術)とウェアラブルなデバイスによって環境と情報端末の融和が進んだらどうなるのか。

戦闘機のヘッドアップディスプレイ(HUD)のように、外の世界を見る透明スクリーン上にデータを直接投影してしまうことで、視線の動きを最小化させる技術がそれだ。米陸軍で採用されたヘッドマウントディスプレイ(HMD)デバイス「Nomad」も同じ。

ドラゴンボールのスカウターだとか、ミッション:インポッシブル2でトム・クルーズが着用していたOAKLEYサングラス型のHMDデバイスだとか、この手のものをクールなガジェットとして使ってみたいという層は潜在的に結構いるはずである。そもそもぼくは、いずれ携帯電話の技術革新が小型化に向かえばヘッドホン一体型かHMDサングラス一体型のものが出現するだろうと予想している。

こういう話をすると、ウェアラブルなんて流行らないよという人がでてくる。でも、考えてみて欲しい。今年は花粉症のためマスクをつけている人がとても多い。周囲を見渡すと、5人に1人ぐらいはいる(かくいう私もそうだ)。そんな都内の風景を、外国人は口を揃えて奇妙だという。私の知っている外国人はアメリカ人もフランス人もイギリス人も、激しいクシャミに見舞われても意地でもマスクはつけない。だが慣れとは恐ろしいもので、あれほど不格好なマスクでも、つけている人が多いとだんだん不自然だという感覚がなくなってくる。ウェアラブルコンピューティングも、ほんのちょっとしたきっかけで普及する可能性がないとは誰にも言えないはずだ。

さらに脳に電極を埋めて神経接続して思念だけでデバイスを操作ができるようになったら。。。(これはちょっと行き過ぎか?)

いずれにせよ、こういうデバイスが使えるようになったらビジネスのルールが大きく変わるので、ゲームも携帯アプリも情報システムも広告も質的な変容を迫られるだろう。楽しみなことだ。

参考:
AtmarkIT : “タンジブル・インターフェイス”を商品化、内田洋行
港区赤坂四畳半社長ブログ : アーギュメント・リアリティとゲーム

DEPAPEPE / 激情メランコリック(祝メジャーデビュー!)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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