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脳と記憶についての序章

2004/11/11 19:11
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唐突だが、ストループテストというのがある。

まずは下記の文字を声に出して読んでみて欲しい。

きいろ あお みどり きいろ
あお きいろ あお みどり
きいろ あか あお みどり
あか みどり あか きいろ
みどり きいろ あお あか
きいろ みどり あか あお

続いて、下記の文字が何色で書かれているか(文字ではなく)を声に出して読んでみよう。

きいろ あお みどり きいろ
あお きいろ あお みどり
きいろ あか あお みどり
あか みどり あか きいろ
みどり きいろ あお あか
きいろ みどり あか あお

比較してみると、後者のテストの方が多く時間がかかったことだろう。

このテストでは、前頭連合野という、「脳の中の脳」と言われる最も高次の人格や社会性といった属性にかかわる部位の、「定型行動の抑制」という機能が試されるという。

同じ対象に対する複数の経路(文字を文字として認識する経路と、色を言語に変換して認識する経路)からの情報の入力によって、求める出力を得るプロセスが混乱されてしまうのを調停するのだ。

表語文字(logogram)と表音文字(phonogram)の分化の歴史をめぐる混乱など、ちょっと言語学をかじっていればこのテストから得られる結果の一貫性には問題がありそうだとすぐに気付くのだが、まぁあくまで前頭連合野の機能をお手軽に実感できる一例ということで。

今さら言うまでもないのだが、「情報」の最終消費者は人間の脳である。脳を知らずして、情報というものの本質を知ることはできない。この問題意識は多くの情報科学の研究者たちを脳科学へと向かわせてきた。

■記憶と情報

ここ20年ほどの脳科学の進歩は著しい。

特に「記憶」をめぐる研究では、長期記憶や短期記憶といった大ざっぱな分類から進んで、現在では前頭連合野にあるワーキングメモリという機能がよく取り沙汰されている。

『脳のメモ帳 ワーキングメモリ』

ワーキングメモリは短期記憶の一種だが、際だった特徴としては「行動のために使われる記憶である」という点がある。目や耳から入ってくる多くの情報のうち、現在の自分にとって意味のある情報だけをフィルタして抜き出す「選択的注意」というのがその主たる役割である。

そして、過去(知識)・現在(知覚)・未来(予定)にわたる多くの情報を総合し、行動や感情を調整する。まさに、コンピュータのCPUにおけるレジスタや1次キャッシュと同じような働きをする部位である。

ところが、このワーキングメモリ、容量が極めて小さいことでも知られている。数字にして約7桁程度、ある文章を読んでいる時ならある文の意味をひとまとまりに解釈する程度の期間しか保持できないという。

これは様々な経験則に一致し、非常に興味深い。

人間社会の営為において、マーケティングにおけるキャッチコピーや科学における数式など、抽象度の高い記号化を行う際にはとにかくコンパクトで小さいものが美しいとされる。この背景には、このワーキングメモリの狭さが決定的な制約条件となっているのかも知れない。

我々の大脳には約100億個のニューロンがあり、一つのニューロン上にあるシナプスの数を1万個とすれば、全体では約100兆個のシナプスがある。それぞれのシナプスにおける受容体の大小を0か1に置き換えるならば、我々の大脳は約10テラバイトの情報量を持つことになる。これは、DVD画質の動画を撮り続けて半年分程度の記憶容量である。

もしこの仮定が正しいとして、これを多いと思うか少ないと思うかは自由だが、ともかく脳の記憶容量には一定の限界があるということは事実だ。ということは、脳の記憶容量を超えて外部化された情報、例えばインターネットなどにある情報をどうフィルタして取り込むかということはかなり根本的な問題設定となる。

我々は多くの場合、「情報」というものを「知識(過去)」とイコールにして考える傾向にある。しかし、現在の脳科学は過剰な過去に押しつぶされないように記憶を消去するメカニズムにも及んでいるということは触れておくべきだろう。

まだ私自身が脳科学については初心者であり、まだ自分なりのアイデアを抽出できるところまで行っていないのだが、情報産業の次なるパラダイムを切り開くアイデアの宝庫だと直観している。また機会があれば切り口を見つけて書いてみたいと思う。

Aerosmith / Mama Kin

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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