最終更新時刻:2008年8月29日(金) 12時13分

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ストレージは小さく、大きく、堅く、軽く

公開日時:
2004/08/23 02:47
著者:
kenn

ストレージの容量はどんどん大きくなり、入れ物はどんどん小さくなる。

ストレージは「データを読み書きする」というただそれだけのために存在するというシンプルさゆえ、技術革新の辿る道筋について多くの示唆をもたらしてくれる。

■小さく、小さく。

もうこれ以上の需要はないだろうと言われ続けてきた大容量のストレージが、飽くなき小型化の追求と容量の増大を続けているうち、ある臨界を超えるたびに新しい需要を生み出してきた。2.5インチのHDDの必要十分な性能・容量・剛性の達成はPC市場をノートパソコン中心へとシフトさせる契機となり、1.8インチHDDはiPodの登場によって「音楽の楽しみ方」を変えた。

いずれも「より小さなものへ」「より性能や品質の妥協できるものへ」「よりシンプルなものへ」「より安価なものへ」という下方に向かう進歩を続けてきたものである。ハードディスク業界は、クレイトン・クリステンセンが10年前に著作「イノベーションのジレンマ」で調査し、予言した生態系の変化を、恐ろしいほど正確になぞっている。

明治ドレスナー・アセットマネジメント : 用途拡大により成長続くハード・ディスク・ドライブ(HDD)市場

それぞれの世代の中核プレイヤーたちは、未来を垣間見せられるギリギリの容量でキラーアプリを提案し、そこからぐんぐんマーケットを育ててきた。2年前には5GB/10GBだったiPodの容量は、すでに20GB/40GBと4倍になっている。需要が伸びれば、技術の進歩も供給能力も加速する。こんな当たり前の市場原理が、手に取るようにわかる事例である。

CD-ROMベースのポータブルオーディオとの差別化をはっきりさせるには、1GBではダメだった。5GBでポケットに2000曲が入ってはじめて「世界が変わるかも知れない」と実感できたのである。この意味において、1.8インチHDDの1GBと5GBは、単に5倍の容量であるという関係ではなく不連続なジャンプを生む臨界となったのだ。これぞ未知と格闘するプラットフォームビジネスの醍醐味であろう。

■大きく、大きく。

一方、大容量化を牽引するのは、間違いなくデジタル家電だろう。数百GBの容量を要求する用途は、今のところ動画データぐらいしかない。アテネオリンピックで深夜の録画予約ニーズに訴えるなど追い風もあって徐々に離陸を始めたDVD/HDDレコーダーが、本格的な普及期に入れるかどうかが鍵となる。

CNET Japan : デジタル家電の影の主役になったHDD

さて、それではPCはどうか。

2000年頃、ローエンドPCのハードディスクの平均容量は約10GBであった。そして2001年になるとハイエンドで100GB超への到達が意識されるようになり、MaxtorからBig Drive規格が提案された。そして2003年以降にローエンドで約40GB、ハイエンドで約300GBとなって以来、ここ1年ほど停滞しているようである。

AtmarkIT : 動向解説 IDEディスクの壁を打ち破る最新ディスク・インターフェイス

ローエンドとハイエンドの格差が10倍近くまで拡大している背景には、PCの用途の分散化がある。ノートPCが主流になりつつある昨今、通常用途なら40GBもあれば十分なのだ。しかし、このシナリオはiPodの大容量化によって覆されていく可能性は十分にある。ノートPCしか持ってない人にとって、iPodには40GB入るようになっているのに、その母艦たるPCにはあと30GBしか空きがないという苦しい状況が生じているのだ。iPodブームは、この格差を埋めていくことに徐々に貢献するだろう。

次に、象徴的なのは業務用のハイエンド・ストレージの行き詰まりである。

本来、サーバ系システムで扱われるデータは、データウェアハウスなど一部のアプリケーションを除けば実はそれほど大容量を必要としない。テキストや数値といったデータは、時系列に膨らむことはあっても単一レコードあたりの情報量は極めて少ないのだ。SCSIの大容量化がIDEに比べて遅れ続けたのは、インターフェース固有の基底コストもさることながら、容量に対する絶対需要の少なさが原因であったろう。

大容量化のイノベーション・リーダーは民生機器に移ってしまった。従ってハイエンド・ストレージのベンダーは性能と高信頼性に逃げ込むしかなく、変化に乏しいマーケットになってしまう恐れは十分にある。

そこで、今や世界を代表するストレージベンダーとなった日立である。当時、IBMからHDD事業部門を買い取るというのは大きな冒険だったはずだ。私の周辺でも、あのディールは失敗だったのではないか、とみる向きも多い。確かに現状メインストリームである3.5/2.5インチの市場は今後も莫大な利益を生むことはないだろう。しかし、iPod miniの1インチHDDを受注するなど、「イノベーションのジレンマ」のセオリーに忠実な戦略が展開されており、決してハイエンドに逃げ込まない野心が見えてきている。小型化が進めば進むほど、日本企業の復権は近づいてくるのだ。

iPod上陸で注目集める小型HDD市場

■堅く、堅く。

しかし、容量が大きくなればなるほど、バックアップが現実離れしてくるという、新たな問題も出てくる。

私もかつて、巨大な音楽データのバックアップ運用計画を考えあぐねていたところにクラッシュに見舞われるという事故に遭ったわけだが(バックアップのすすめ)、数十GB以上のデータをバックアップするというのは本当に大変なことだ。下手をすると、バックアップを開始してから寝て、起きてもまだバックアップが終了していないという事態にもなりかねない。

上記のエントリでも述べたように、バックアップというのはHDDの物理的な信頼性とはあまり関係なく、そのHDDにアクセスするOSやアプリケーションのバグ、および操作ミスなどによる論理障害からデータを守るという意味合いがあるため、RAIDなどとは無関係に検討すべきことである。

データセンターなどでも、旧来のテープドライブによるバックアップは維持管理のコストがかさむため大容量化の時代には不評である。現在では、NAS(Network Attached Storage)を使ってHDD to HDDでバックアップをとるというケースが増えているという。いずれにせよ、バックアップのためのインフラはまだまだ安・楽・速を達成できていないのが現状ということである。

それまでは、録画したデータなどは何らかのトラブルで消えてしまうかも知れないというリスクを覚悟の上で、デジタル化に踏み切るかどうかの判断をするしかないのだろう。

キーマンズネット : バックアップの新常識早わかり講座

AtmarkIT : システム・バックアップを基礎の基礎から

そのうち機会があれば、私自身が事故の経験と反省に基づいて個人的に導入したバックアップモデルを例示したいと思う。

■軽く、軽く。

さて、最後はリムーバブルメディアで締めくくろう。

CNET Japan : Blue-ray Disc、普及のカギを握るのはインタラクティブコンテンツ

この記事で言及されているBlue-ray DiscもHD DVDも、今や数々の逸話で有名になった青色LED技術の応用分野のひとつ、次世代光ディスクである。

しかしこちらの将来はいささか不透明である。セルビデオ・レンタルビデオなど再生専用市場におけるVHSからDVDへの媒体リプレースには、サイズのコンパクトさ、劇的な画質・音質の向上と耐劣化性、ビジネスモデルの転換による低価格化など、明らかなメリットが打ち出せていた。だからこそDVDは短期間のうちに映像配布媒体のスタンダードに躍り出ることができたのだ。

しかし一方、書き換え可能なDVD規格をめぐっては、典型的なユースケースがはっきりしないために凄まじい数の規格が乱立し、市場を混乱させることとなった。

Blue-ray Discが不透明なのは、紛れもなく用途それ自体である。先の記事ではインタラクティブコンテンツがキラーとなると述べられていたが、これは明らかに思いつきレベルのアイデアに過ぎず、とても規格を一本にまとめきれるだけの求心力があるとは思えない。

光ディスクの利便性は「軽くてポータブル」「多くの種類の機器で再生できる」「(比較的)堅牢」「メディアの単価が安い(容量あたりの単価ではなくメディア一枚の絶対額)」である。これらはすでにDVDで実現されてしまっており、大きさも重さも価格もそのままなら容量がどれだけ増えても新しい用途は生まれないだろう。これだけ成功した規格の二匹目のドジョウを狙うには、正直言ってBlue-ray Discでは不足である。

では書き換え可能な媒体としてはどうかというと、×倍速のドライブの存在によって回転数と連続転送のスループットは改善したが、今なおレテンシ、すなわち初期応答(シーク時間)の遅さは如何ともしがたい。やはり、激しいランダムアクセス環境においてはHDDとの差は歴然だろう。ともかくすべてが中途半端だ。

よって、私としてはBlue-ray DiscもHD DVDも市民権を得ることはないだろう、と予言しておこう。では、その存在を脅かす次世代メディアは何か。

私としては、ようやく実用化の目処が立ってきたNTTの「インフォ・マイカ」をイチオシしておきたい。

インフォ・マイカ

ホログラフィック技術を用いて切手サイズのメディアに1GBのデータを記録でき(将来的には10GBも)、読み取り機にはスピンドルが不要で小型化・省エネ・静粛性に優れ、量産性が高くコスト低下が容易で、気軽に使い捨てあるいはリサイクルできる。と、久々にグッとくるROMメディアである。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
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イノベーションへの解―利益ある成長に向けて
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Pat Metheny / Question And Answer

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

2

おおっと、ご指摘ありがとうございます。
これだと「情けは人の為ならず」クラスの意味反転ですね。
ただの「不足」に修正しました。

ところで全然関係ないですけど、クロワッサンをクロッサワンと呼び続けている友人がいます。(笑)
誤用の刷り込みの期間が長いと、修正も大変みたいですね。
それをネタにしすぎたために、私もたまにどちらが正しかったのか一瞬判らなくなることがあります。。。
(私のATOKは既に「クロッサワン」で一発変換されるようになってます)
というわけで、万が一、また勢いで間違えたらごめんなさい、というオチでした。(笑)

  kenn on 2004/08/24

1

>これだけ成功した規格の二匹目のドジョウを狙うには、正直言ってBlue-ray Discでは役不足である。

とありますが、この場合は「役者不足」というべきではないでしょうか。

  秋山 on 2004/08/23

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