お知らせです。
以前、平野啓一郎氏の新刊についての記事をここに掲載しました。
平野啓一郎『バベルのコンピューター』に見る新たなアポリア(前編)
平野啓一郎『バベルのコンピューター』に見る新たなアポリア(後編)
これを平野本人に贈呈したところ、予想以上に面白がってくれて、新潮社の『新潮』の矢野編集長にこの記事を紹介してくれました。
すると、これがまた矢野編集長にもウケたらしく、「『新潮』の9月号にこの論考をアレンジして掲載しないか?」というオファーをいただいたのです!
早速、CNET Japan山岸編集長と相談し、これまで「ネット言論発→文芸誌」という流れは恐らくそれほど多くなかったので、話題的にも面白いのではないか?ということで、この挑戦的な試みを謹んでお受けすることにしました。
■『新潮』2004年9月号:2004年8月7日(土)発売■
ネタバレを避けるため詳述は控えますが、元の記事を大幅に更新し、技術的な表記は抑えつつしかし、コンピュータ・サイエンスの歴史マニアがニヤッとするような仕掛け、人工知能・認知などのハードプロブレムを持論の問題意識で甘辛く味付けをした論考など、様々な主題が凝縮された8000字の短編です。是非、ご笑納下さい。
。。。と威勢良くアピールしつつ、少し舞台裏を明かしてみると。
今月上旬にこのお話をいただいてから、頭の中で構想だけは膨らませていたのですが如何せんまとまった時間がとれず、この連休に死に物狂いで書いて昨夜ようやく脱稿したところです。自分で書いた元ネタがあったにも関わらず、ちょっと趣向を変えただけでたった8,000字の辻褄合わせに丸三日間も悶絶し七転八倒してしまいました(1,312,000字なんて、とても無理です)。就中、日曜日などは書棚を引っ繰り返していただけで日が暮れ、ほとんど一行も書けませんでした。気負いもあったのでしょうけれど、期せずして自らの文才の限界を知った次第です。。。プロの作家やBlogを毎日更新している方々の、才能と努力と忍耐を心から尊敬します。
あと、今日たまたま『文學界』の8月号で平野のロングインタビューが掲載されているのを見つけましたが、この中で語られている下記の言葉がとても印象的でした。
僕は今、一部の批評家の言動に見えている、非常にくだらない幻想にうんざりしているんです。それは、ある革命的な作品の登場が、現在の文学の閉塞状況を一気に打開してくれるというような、悪しきロマンティシズムに彩られたヴィジョンです。
文学はそれこそ限界とまで言われるほどに、今、成熟しきっているわけでしょう?そういうジャンルで、例えばかつてのように探偵小説が登場したり、心理小説が出現したり、といったような大味の革命がボンボン起こるはずないんですよ。科学の分野でも何でもそうですけど、あるジャンルの成熟期には、そこに従事する人間は前の時代までになされたことを、具体的に、詳細に検討して、地道にコツコツ発展させてゆく以外にないわけです。そうした中で、たまには大発見もあるでしょうが、大抵は、彼の一生を通じた仕事によって、まあ、何事かが幾分かは前進した、というその程度のことでしょう。
仮に技術革新の成熟と閉塞感というものに我々が直面しているとするならば、他のどの分野よりも時計の止まった文学という世界を敢えて選び身を投じ、その懊悩を引き受けようとする彼の誠実さから、私たちが学べることはまだまだ残されているという気がしてなりません。
最後に文字通り蛇足ですが、来月号の『すばる』に平野が立教大学で行ったボルヘス会での講演が載る予定で、そこでこのBlogに書いた記事について少し触れられているそうです。こちらも、よろしければご覧ください。
追記:
発売になりました。
「白紙のコンピューター文学」というタイトルの短編です。
♪ Brand X / Is There Anything About?
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