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CNET Japan ブログ

エンタープライズ市場とお手軽ソフトウェア開発

2004/07/13 01:31
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渡辺聡さんのBlog「大型M&Aから読むエンタープライズ市場の変化」を読んで、

CNET Japan : ソフトウェアベンダー各社、業績に黄信号--今四半期の下方修正相次ぐ

を読んだ。

ソフトウェア業界にはここのところ明るい話題が少ないが、ヒントになるような情報はよく見ればポロポロと落ちているように思われる。

■ソフトウェアベンダーの歪なハイエンド寄り分布

ソフトウェア業界を国際的な観点から見渡せば、Remedy、Magic、Marimbaといったテクノロジー企業を買収してきたBMC Software、そしてWebLogic、Tuxedoといったテクノロジー企業を買収してきたBEA Systemsのように、M&Aを戦略の軸に据えて急成長を遂げてきた企業を中心として、Novell、Siebel、Veritasのような新旧のベンダーが年間売上10億ドルのレンジにずらりと並ぶ。

非常に象徴的なのは、マイクロソフトを除くほぼ全てのソフトウェア業界のトップベンダーが、大企業向け市場、すなわちエンタープライズ市場をターゲットとしていることだ。Oracle、SAP、CA、PeopleSoftなどなど。この分析にIBMやHP、あるいは富士通や日立などの国産メーカーを加えると、よりエンタープライズ志向がはっきりしてくる。

CAやVeritasのようにそれ自体では何ら価値を生まない運用関連のツールで収益を上げているプレイヤーが多いことを見るにつけ、ソフトウェア業界は相変わらずテクノロジー偏重で、言い換えればハードウェアに近いレイヤーで製品開発をし、大企業に取り入ることが儲かるビジネスの定番となっていることがわかる。年間売上5億ドルクラスのMercury InteractiveやTibcoのような成長企業も、やはりターゲットは大企業となっている。(参考までに、非エンタープライズ系ではSymantecが19億ドル、Adobeで13億ドル、McAfeeが10億ドル、Macromediaがちょっと飛んで4億ドルほど)

また、メインフレームとオープンシステムの両分野でソフトウェアの経験を持っているのは業界広しと言えどBMC Software、Computer Associates、そしてIBMの3社ぐらいだが、そのCAとBMCは売上規模ではそれぞれ30億ドル、13億ドルの規模に及ぶ。これらのメディアを賑わすことの少ない地味(失礼。。。)な企業がソフトウェア業界のトップ10クラスの売上を誇っているという事実にあまり実感の沸かない皆さんも、その収入の多くをメインフレーム向けソフトウェア(その複雑怪奇なラインナップが歴史を物語っている)から得ていると聞けば、なるほどと思うことだろう。

話を元に戻すと、従業員数が100人程度の中小企業にとって、OracleやSAPやVeritasやBEAのようなトップベンダーの提供するソフトウェアにはほとんど縁がない。彼等にとって最も親しみがあるのはWindowsクライアント上のVisual Basicアプリケーションであり、Windowsサーバ上のIISアプリケーションである。

そういう状況なのだから、「エンタープライズソフトウェア市場に活気がない」とは、大手ソフトウェアベンダーの多様性のなさを示しているにすぎない。伸びるときはみんな伸び、堕ちるときにはみんな堕ちるのだ。さしずめ「イノベーションのジレンマ」で言うところの「上り詰めて降りられなくなったプレイヤーたち」である。

1億ドルのレンジには、純ソフトウェアではないがSalesforce.comのようなプレイヤーが控えている。これからのソフトウェア業界の世代交代は、現在この1億ドル以下のレンジにつけている新興企業が主役となるはずである。だが、道筋はまだ見えない。

■簡単なことを簡単にできる技術

ただし、この五里霧中の状況はソフトウェア技術が顧客の真のニーズを満足できるところまで達していまい、あとはコモディティ化に向かいつつあるという後退は意味しない。むしろ新たなイノベーションを待って足踏みしている状況と言える。

以前にも「サーバにイノベーションのジレンマは起きているか」で述べたように、ソフトウェアの進化は呆れるほど遅い。これはソフトウェア技術が劇的な進歩を遂げているかのように言われていた1990年代後半でさえ感じられたことである。

これまでのWebアプリケーションサーバやDBサーバは、あくまでエンジニア向けのものであった。例えばEclipseを使い、JavaやSQLを書けるエンジニア=プログラマーがその想定利用者であった。

しかし今後は、キャラクターベースのUNIXがグラフィカルなWindowsに取って食われてきたあるように、ユーザインターフェースの改善によって「簡単なこと」が「簡単にできる」テクノロジーが有無を言わさぬ力をもって台頭してくるはずである。

高レベルなテクノロジーの進化により、優秀なプログラマーが頑張ってやれば、どんなに難しいシステムでもうまく作れるようになったのはよくわかった。でも、私たちが本当に望んでいるのは技術者じゃない人が簡単なシステムなら手軽に作れるようになるという、低レベルなテクノロジーの進化ではなかったろうか?

例えば「このCSVファイルをDBに入れてWebの検索画面から表示させるようにしたい」なんていう、パッとできそうなことでさえ、日々プログラミングの鍛錬を積んでるわけではない人が実際にリファレンス首っ引きで開発してみれば、どのくらいの時間でやれるか定かではない。運が良ければ30分で完動させられるかも知れないし、運が悪ければ一日かけてもクリアできないかも知れない。プログラミングなんて1ヶ月も離れたら完璧に勘が鈍るから、このぐらいのブレは付きものである。

これが外注さんに開発委託してとなると、さらに級数的にかかる時間が増える。フットワークの軽いソフトハウスでも、初日は「データ量はどのくらいですか」とか「フィールドはどう持ちますか」などとヒアリングだけで、画面のプロトは三日後で、手直しして一週間後で、テストだ何だかんだと言っているうちに二週間ぐらいはすぐに経ってしまうだろう。

この程度の、言葉にすればたった40文字程度の日常的にありふれている要件でさえ、20年前の技術水準から見ても開発効率が特別向上したようには思えない。こんな状況で、果たして我々のテクノロジーは進歩してきたと言えるのだろうか?

とはいえ、エンジン側のイノベーションは一応の収束を見たと言ってよいだろう。WebアプリケーションサーバやDBサーバなどのエンジンは間違いなくオープンソースに取って食われるコモディディ化への道を辿っている。しかし翻ってユーザインターフェース側はどうか。MacOSやWindowsのGUIからWebベースのUIへ向かったはいいが、現段階の選択肢はいずれも今一つエレガントとは言い難い。頑張ればそこそこリッチなものが作れるが、逆に言うと頑張らなくては大したものができない。

Appleが次期OS Tigerの新機能Dashboardとしてパクったとされる騒動で一躍知られるようになったKonfabulatorのような、参照中心のロジックレスお手軽GUI開発が次のフロンティアではないかと考えている。

♪ Tony O'Connor / Eventide

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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