最終更新時刻:2008年8月29日(金) 12時13分

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ISO標準コードは最強最悪のサブマリン的・知的財産権となるか?

公開日時:
2003/09/24 21:21
著者:
kenn

さて、今日はこの話しかないでしょう。

ISOによる標準使用料の徴収案が浮上?

多くの商用ソフトウェア製品で使われている2文字の国識別コードなど、一般的に利用されている各種業界コードの使用料引き上げにつながる提案に対し、複数のIT標準化団体が警戒感を強めている。

 問題となっているのは、複数のコード標準に関して使用料を徴収するというInternational Organization for Standardization(ISO)の仮提案。これに対して、ISO準拠の製品を販売するソフトウェアメーカーに使用料の支払いを強制すれば、標準に対する支持が弱まる可能性がある、との反対意見が出ている。ISO 3166、ISO 4217、ISO 639の各標準は、それぞれが国、通貨、そして言語の各コードを規定している。

さてさて、この話は筆者にとって非常に深刻な問題である。ソフトウェアの世界では、信頼性と再利用性の高いビルディング・ブロックは当たり前に使われる。ソフトウェア・ビジネスというものが、あるものを使い、ないものを作るというビジネスである以上、これはごく当然のことである。さらに、標準コードは標準ソフトウェア部品よりも再利用性が高く(実装非依存)、あらゆるビルディング・ブロックの中で最もインパクト・レンジが広いものだ。

ISO標準と筆者とのかかわりといえば、製品企画という社内での立場もさることながら、ContactXMLなど筆者自身が参画してきた仕様の中でも、コード標準としてISOの利用を積極的に推進してきたという経緯がある。しかし、例えばISO 3166(「JP」とか「US」とかっていうやつ。国コードですね)などは、国際化対応のシステム仕様を企画する立場なら誰でも使うものだ。このようなコードにライセンスを主張し、課金しようなどというアイデアを口に出す輩がISOにいる可能性があるとは、全く考えもしなかった。いや、もう少し正確に言うと、常識的判断としてISOのライセンシングが成功する確率を「まずあり得ない」と考えている、というリスク判断の結果ともいえる。

しかし、リスク判断というものは関係者のセンチメントに対して脆弱で、「全くあり得ない」という結論が出ない限り、世間の動向に連動して無駄な議論が常に発生するものだ。多くの組織が、「あり得ない」と言い切る勇気ある結論を出せるかどうか、リーダーシップを試されることだろう。

ところで、この件に関してOASISのebXML-DEVというメーリングリストで議論されていた内容が面白かったので少し引用しよう。

まず最初にTodd Boyleが

Regarding http://xml.coverpages.org/ni2003-09-20-a.html (excerpt below)
ISO is "clarifying" that they expect payment for commercial use of 3166, 639 etc. Can anybody tell us whether the OASIS or UN/CEFACT are unable to speak against these royalties, within the terms of their MOU with ISO?
http://xml.coverpages.org/MOU-OASIS-200202.html

と投げかけた。OASISとIEC,ISO,ITU,UN/ECEの間で交わされているMoUの中で、OASISの仕様はこのロイヤルティ課金のスコープから外れるということを明確にできないものか?というものだ。

さらに議論が進む中で、Toddは

The economic value of all commonly used semantics arises precisely from the fact that the speaker and listener have some alignment in naming and meaning, within their mental models.

This is the intended purpose of standards like 3166 and 639, it is not an incidental or secondary aspect. These semantics are the property of their community of users. Certainly they are not the intellectual property of the first consortium of giant corporations to publish definitions.

There should be no copyright or patent protections for any symbol or semantic representations of real things, or conceptual artifacts, that have a pre-existing manifestation in the minds of the sender/receiver. These are really the dictionary of humanity. Nobody owns language itself.

とした。ここで言われているのはつまり、例えばある言語における「単語」の「意味」は、それを理解し共有するコミュニティがいて初めて価値のあるもので、「単語」つまり言語そのものがライセンスの対象になることはあり得ない、というものだ。

なるほど。確かに、広辞苑は「単語」と「意味」を関連づけたアウトプットとしての書籍・CDなどの「使い勝手」に対価を払われているのが本質であって、そこに掲載されている「単語」を所有し課金をするものではない。さらに、現実世界に存在するエンティティに初めてうまい名前を命名した人がライセンスを徴収できるなら、例えば「貸し渋り」なんて言い回しを始めた人は大儲けだろうし、「タマちゃん」なんておいそれとは呼べないのだ。(ちょっと例が雑すぎるか?まぁでもこの議論自体があまりにお粗末なので正直これ以上の適切な比喩を捻出しようという気も起きない)

ともかく、ISOが今更コード標準に課金するなんて、いかにも世の中にとって迷惑千万な話なのである。

一方で、実は私はコード標準の維持に費用を払うということについては否定する立場ではない。組織的に維持・管理されているコードは、自然言語と違って文字通り「管理されて」いる。例えば国が合併したり通貨の統廃合が起きたりしたら、コードはメンテナンスしなくてはいけない。それを実行する。そういったコミットメントに対しては、対価を払ってしかるべきである。(払うのが誰か?ユーザーか国か?というコスト転嫁の方式とその合理性に問題の焦点が移る)むしろ、知財の可視化が進む今後はそういったビジネスモデルが増える傾向になるとさえ考えている。

ただ、今回の件はいわゆる「サブマリン型」だ。課金は行われないという長い時間をかけて醸成されてきた暗黙の信用と了解があり、そのもとで広く使われるようになったにも関わらず、途中から課金化の議論を持ち出す。このやり方は、特許など私企業の利害という小さいスコープならともかく、世界の情報産業のインフラ的な知見についてはどうだろう。世の中のあちこちでこのような無駄な議論を巻き起こし、世の中の大多数を占めるリスク回避指向の人々によって情報産業の進展スピードを殺すことになり、結果的に誰も得しないだろう。個人的な定義で言わせてもらえば、これは「テロリズム」だ。

ソフトウェア業界および各種標準化に身をおく立場からみて、こんな小さい粒度のものでこまごま商売している場合ではない。世の中で言われているほどIT化なんて全然進んでないし、成功していないのだ。もっともっと大きな問題が山積みで、その解決に腐心しなくてはいけない。どうしてもISOとして維持・管理に金が必要なら、各国の税金などもっと上流の制度やルートから徴収する方法を考えてくれればよい。「ごめんくださーい、コード使用料の請求のお知らせです」なんてつまらない用件で電話してこないでね。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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