10月30日に流れた記事だったが、このニュース。ついにダメだったのかという思い。
アイピーモバイルが自己破産--免許は総務省に返上(CNET Japan)携帯電話事業への参入を目指していたアイピーモバイルが10月30日、破産の申し立てを東京地方裁判所に対して行った。また、割り当てられていた2.0GHz帯の周波数は総務省に返上した。
アイピーモバイルは30日10時に総務省に免許を返上。その後11時に破産を申し立てた。負債総額は8億5000万〜9億円で、うち7億円が総務省に支払う電波料という。
香港企業の支援を受けようとしていたが、期限の延長を認められなかったために、断念したという。アイピーモバイルは記事にもあるが2006年にTD-CDMAという方式でのモバイルインターネットサービスを開始するとして、総務省から免許を取得した。サービスは11月9日までに開始することが求められていたが、資金で行き詰って、サービス開始ができず、事業の見通しが立たなくなって、破産申請したという。
この件の推移を少しここで振り返ってみる。
アイピーモバイルはイー・モバイル(イー・アクセスの子会社)BBモバイル(ソフトバンク子会社)とともに総務省から周波数を割り当てられ,携帯電話事業への参入を認められた。3社のうち、イー・モバイルは3月31日にデータ通信による携帯サービスを開始した。。BBモバイルは,親会社であるソフトバンクの旧ボーダフォン買収によって周波数を返上している。(ITproより)
さらにITproから引用するが、アイピーモバイルは、2007年4月8日に、一旦このサービス参入断念のニュースが流れた。
アイピーモバイルは2GHz帯を使った携帯電話事業への参入を取りやめることを明らかにした。「アイピーモバイルが携帯参入断念・総務省,周波数再割り当てへ」との一部報道に対して事実と認め,「本格的な携帯事業参入をするには資金が不足していた」(アイピーモバイル)と参入を断念する理由を説明した。関係者によると2007年度最初の営業日である4月2日に,アイピーモバイルは総務省を訪問。この時点で2GHz帯の周波数の返上が事実上決まったという。(ITpro)
ところが、この僅か数日後、4月10日に開かれた記者会見では、筆頭株主のマルチメディア総合研究所の所有する株を森トラストに譲渡し、事業の続行を表明する記者会見を開いている。そのときの記事はこれ。
アイピーモバイルは10日に記者会見を開催。筆頭株主であるマルチメディア総合研究所の所有するアイピーモバイル株を森トラストへ譲渡すると発表し、一部で報道されていた携帯電話事業の参入断念という報道を否定した。
代表取締役執行役員社長の杉村五男氏は、「今後も総務省より認定いただいた開設計画に基づき、携帯電話事業を進めていく」とコメント。「経営方針や事業計画などは今後筆頭株主となる森トラストと協議を進める」とした上で、「一部で報道されている携帯電話事業参入断念という事実はない」と否定した。(InternetWatch)
筆頭株主がマルチメディア総合研究所から、森トラストに変更されるということは、総務省に報告済だとした上で、資金としては「アイピーモバイルの事業規模に関しては「関東圏内で600億円、地方展開を考えると1,000億以上」であり、「その事業規模を理解していただいた上で森トラストにもご判断いただいている」と説明。森トラストによる増資の方向でも動きがあるとしていた。
記者会見にマルチメディア総合研究所も森トラストも出席しなかったことなどから、憶測も呼んだ様だ。さらに、発表当時は、森トラストの出資比率は不明だったが、その直後に、森トラストの子会社であるパルコが、森トラストのアイピーモバイル株式取得について発表。それによれば、取得株式数は164,422株で、株式の所有比率は69.23%だったが、依然として資金調達の不安が解消されたかどうかについては、はっきりしなかった。
さて、実は話が前後するが、これに先立つ2006年7月28日にアイピーモバイルは、40.5億円の増資を行い、これによって、資本金と資本準備金の合計は53.75億円となったというリリースを出している。さらに若干の役員移動を発表しているが、当時のリリースを読む限りでは、事業計画に必要な資金に関する言及はない。
先の一節を思い出してもらいたいが、後に発表された携帯電話事業に必要な資金は必要資金は「関東圏内で600億円、地方展開を考えると1,000億以上」であり、この当時の増資額ではとても事業開始には程遠い。にも関わらず、当時のリリースに、残りの資金をどうするかという危機感はあまり窺われない。
それどころか、ITproによれば、当時2006年10月に予定していたサービス参入を2007年春に延期したというニュースとともにこの増資に触れて、こういう記事になっている。
(アイピーモバイルは)40億5000万円の増資を実施したことも明らかにした。これにより,資本金と事業準備金の合計は53億7500万円となり,「サービス開始に向けた資金のメドはついた」(アイピーモバイル)としている。同社は東京23区の一部からサービスを始める予定だ。また端末のベンダー選定についても,「ベンダー名は明らかにできないが既に決定済み」(同)という。
つまり、東京23区の一部からとした上でも、この増資でサービス開始は可能であると当時言明しているのだ。これはその後の経緯を見ると、厳密な計画であったとは言いがたいような印象を受ける。
これだけではない。時系列をもっと遡ってこのおよそ1年前。2005年9月30日の日経新聞は免許申請前の記事だが
「アイピーモバイルが携帯電話事業への参入を目指し30日に総務省に免許交付を申請する。アイピーモバイルには米メディア大手のリバティグローバルやCSKなどが合計500億円を出資する方針。アイピーモバイルは携帯電話と放送を融合するなどの新サービスを提供する予定だ。」
とある。また
「アイピーモバイルはコンサルティング会社のマルチメディア総合研究所の100%子会社で、共同で携帯電話事業を運営するパートナーを探していた。リバティ、CSKの他、楽天やIIJ、NTT、三井物産など多くの企業が参加・協力する。増資により財務体質を強固にした後、円滑な業務提携で新サービスを提供していく。」
となっており、奇しくも増資目標の500億円というのは、必要資金としている額に近いのだが、既に調達可能な印象を与えている。
さらに皮肉なことに
「総務省の審査ポイントは「サービス地域の展開力」、「技術力」、「財務力」。特に財務力は重要で、米国では競争激化で破綻した例もあり、安定してサービスを提供できるかが最大の条件となる。新規参入企業には設備投資や販促費など巨額な資金負担が必要となってくるため、消費者に受け入れられるサービスの提供と同様に、資金繰りも大きな課題となっている。」
とも記載されている。
さて、延々とアイピーモバイルを巡る2転3転の状況について、発表された記事を追ってみてきたが、ここで疑問を呈したいのは、果たしてこの事業は当初から実現可能なものだったのだろうかということである。申請時に提出された資金計画を信頼して、総務省は免許を認可したはずであり、その信頼を元に、増資に応じた株主もあったはずだ。森トラストの支援以降、どんな動きがあったのかまでは追いきれていないが、ここに列挙しただけでも、アイピーモバイルの事業計画は、あまりにも先の見通しが甘かったとしか言いようがないし、その都度都度で触れ幅が大きすぎる。
こうした企業の事業計画にお墨付きを与えた総務省にも、大きな責任があると思うがいかがであろうか。
【参考】
狐につままれたアイピーモバイルの会見(2007年4月13日 ITpro)
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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