最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

2

ダルフール紛争をGoogle Earthで見る----Googleの苦いプレゼンテーションは有効だ。

公開日時:
2007/04/12 01:38
著者:
BigBang

グーグルが、Google Earth上で、ダルフール紛争に関する3つのレイヤーを追加したというニュースが報じられた。これによって、ダルフールの大虐殺の実態をビジュアルによって知ることができるようになったという。これらのレイヤーは、Google Earth日本語版でもオンになっており、さっそく最新のGoogle Earthをダウンロードして、私も見ることができた。

詳細は
http://www.ushmm.org/googleearth/
(United States Holocaust Memorial Museum and Google Earth)

米ホロコースト博物館、「Google Earth」と連携--スーダンの集団虐殺情報を視覚化(CNET Japan)

「Google Earth」にダルフール紛争に関する新レイヤー追加(Internet Watch)

ダルフール紛争に関するレイヤーはデフォルトでオンになっており、新たに設けられた「グローバル・アウェアネス」項目の下にある。このレイヤーでは写真、データ、目撃証言などを英語で表示する。これらの情報は米国務省、米国ホロコースト記念博物館、国連、NGO組織などによって提供されている。
ダルフール地方の大虐殺の実態を知ることは一般には非常に難しい。ジャーナリストですら、スーダン政府によって同地方への立ち入りを禁じられているからだ。しかしGoogle Earthからは、スーダン軍と武装民兵組織「ジャンジャウィード」によって破壊された10万以上の家、学校、モスクや建造物を高解像度画像ではっきりと確認できる。このレイヤーでは、被害を受けた村や破壊された村を印で表示するため、そこを拡大していくことで容易に破壊現場を見つけられる。ジャーナリストでも全容をつかむことが難しいダルフールの現状について、人道支援組織が活動を行なう上で有用な道具となることも期待されている。

下図は、Google Earthで実際にこのレイヤーを通してダルフールを見たところである。各村の被害状況がわかるようになっているほか、拡大すると、家や学校、建物の破壊の状況が、確認できるようになっている。(写真はクリックで拡大できる)

Dal1

Dal2

さらに、被害の状況を示す写真やビデオがリンクされている。

Dal3

Dal4

この取り組みについて、米国ホロコースト記念博物館のディレクターであるSara J.Bloomfield氏は、「過去と現在の残虐行為について今日の世代を教育することは、Google Earthのようなテクノロジーによってその度合いを一層高めることができる」とコメントしている。さらに米国ホロコースト記念博物館では、過去に起きたナチスによるホロコーストに関するタイムラインや強制収容所の場所などをGoogle Earth上に示したKML地図情報ファイルの配布も開始した。(Internet Watchより)

Google Earthのこのような使い方は、非常にインパクトがある上、国際社会の中での意義は大きいと言えるだろう。同時に、非常に有効なプロモーションの形にもまっていると思われる。今回のダルフールのレイヤーはデフォルトでオンとなっているが、今後はレイヤーを追加し、必要に応じて切り替えることによって、地球上で起きている様々な「把握しづらい」現状について、リアルタイムで、しかもパースペクティブを切り替えながら見ることができるような使い道が予想される。

急成長したGoogleは、その先端的な存在にもかかわらず、Web2.0に対して、どのようなスタンスをとるのかが、疑問視される見方もあった。検索エンジンは、全地球の情報をインデックス化することで、確かに情報相互のニューロンをすさまじい勢いで構築することはわかったが、情報への「働きかけ」ははっきりしなかったし、さまざまなWebサービスを取り込みながら無償で提供していく姿勢は、かつてのポータルの成長過程をダイナミックに再現しているだけであり、その手法は伝統的なものであるという見られ方もしていたと思う。

しかしながら、Google Earthのこの試みは、明らかにGoogleという企業の次の可能性を提示するものであると思われる。各地域から情報のフィードが、逆にGoogle Earthに向かい始めた時、レイヤーという手法と相まって、多重な情報を無限に抱えた巨大な地球をGoogle自身が構築する可能性が出てきたことがわかる。

もちろん、これらはビジネス軸の話ではあり、ダルフールのような切迫した社会的な危機をその宣伝素材にもしていることで、批判が起きる可能性もあるかもしれない。しかしながら、援助にも救援にも、有効なプレゼンテーションは必要である。署名用紙をどれだけ目の前に積まれて協力を求められるよりも、モニタの中に浮かんだバーチャルな地球の上で今も繰り広げられている惨劇を静かに語るGoogleの地球は、実はきわめて雄弁であると考える。

人は、言われなければわからないし、あるいは「見せられなければ」わからないのである。私を含めて。非常に苦いプレゼンテーションではあるが、この方向性を支持したい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

2008年8月
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点グーグルはストビューで「よそ者」化する
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

なにわのITベンチャー社長BlogWEB2.0 じゃなくって PC0.5
なにわのITベンチャー社長Blog
インターネットの裏側を探しましょtaspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
インターネットの裏側を探しましょ
木田わをんのパソコン武士道@Tovas for AppExchangeのセットアップを30分で完了
木田わをんのパソコン武士道
夢幻∞大のドリーミングメディア夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
夢幻∞大のドリーミングメディア

企画特集

仮想化環境で求められるストレージの要件仮想化環境で求められるストレージの要件
それに応えるNetAppの実力とは?
DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

たばこによる経済効果よりも関連の損失額の方が何倍も大きいという試算があり......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:PowerYOGA
こういうのいいですね!ちなみにCNETブログのシステムは全然進化しないですね......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:尊仁
櫻吉さん、いつもお世話になっています。アクセス順に並んでくれるとありがた......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:mugendai
「アダムとイブが楽園を追放されたのは、神様の言いつけを破って禁断の実を食......
毎日新聞社内で何が起きているのか(下)
投稿者:keijizyou
きむこうさん、コメントありがとうございました。 > 「お客さんが絶対必要......
新しい開発手法:初期にユーザインターフェースを完璧に作れば、最高の要件定義になる 2
投稿者:生島勘富

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性