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Yahooを巡るOracleとRed Hatの攻防に見る「競争の裏側」

2007/04/01 03:16
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殿岡良美

幻の博覧会「世界都市博覧会」で、インターネットを応用した公共イベント企画をプロデュースしたことが、ネットでの活動の出発点でした。しかし結果はご存知の通り。あるいはその未完の記憶が満ち足りない思いを私に残してしまったのか、ネットという愛すべきも、摩訶不思議で捉えようのないものに惹かれ続けてきました。リアルとネットが激しい火花を上げている今日。CNETでは、あらゆる前提や先入観にとらわれない視点から、BigBang的なIT論を展開したいと考えています。
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かねてからOracleは子会社「ミラクル・リナックス」を通じて、自社DB製品と親和性の高いディストリビューションを提供して、Linux市場への影響力を駆使してきた。Oracleの製品のLinux対応版をインストールするにあたって、親和性の高いミラクル・リナックスを使うことによって、ユーザーは細かな設定や前準備の煩雑さから開放される。これで私などもずいぶんと恩恵を受けた口である。ミラクル・リナックスが出る前は実に面倒な手順を踏まなければならなかった。

この方向性は、現在では「Unbreakable Linux」のプロジェクトに引き継がれており、Red HatのEnterpriseのクローンである、Oracle Unbreakable Linux のバイナリは OracleサイトからFREE でダウンロード可能となっている。

ところで、Linuxを直接「いじろう」とする巨大企業Oracleのこうした姿勢は、旧来のディストリビュータからは、強い警戒感を持って受け止められているようである。

internet.comによれば、OracleのCEO Larry Ellisonが、2007年会計第3四半期の業績を発表する電話会見の中で、YahooがRed Hatから自社のLinuxに乗り換えたと述べたが、これにRed Hatが反論するという事態になっており、Yahooを巡ってOracleとRed Hatとが、緊張関係にあることをうかがわせている。

●Oracle、Yahoo! が Red Hat から自社の Linux に乗り換えたと主張
(Japan internet.com)

Red Hatはすぐにこれに反応しており、

●Red Hat、決算発表で Yahoo! との蜜月関係を強調
(Japan internet.com)

大手『Linux』ベンダー Red Hat (NYSE:RHT) は3月29日、第4会計四半期 (12-2月期) および2007会計年度通期の決算を発表した。同社 CEO の Matthew Szulik 氏は決算発表の電話会見で、Yahoo! (NASDAQ:YHOO) が Oracle (NASDAQ:ORCL) の『Enterprise Linux』(OEL) を用いていると認めたが、Red Hat 製品を置き換えた訳ではないと述べた。そして、Yahoo! が間もなく『Red Hat Enterprise Linux』(RHEL) の配備規模を増やすことも、同氏は明らかにした。なお、OEL は RHEL に手を加えたクローン版だ。

同社CEO の Matthew Szulik 氏は、Yahooとの関係は良好であることを重ねて強調している。

「昨日 Yahoo! の幹部らと会談した際、当社との関係は非常に良好で、今後もこの関係を維持していくと彼らは即答した。Yahoo! は多数の Oracle 製データベースサーバーを運用するため、OEL の採用を決めたが、現在そして今後も、当社との建設的な関係を保っていく心づもりでいる」

としている。ただ、話はこれだけではすまないのであって、この応酬の真の意味は、Linux市場に衝撃を与えた、昨年秋のOracleの発表の意味と合わせて考えないと理解できないだろう。

●Oracle、Red Hat 製品にも自社製品と同等のサポート提供
(Japan internet.com)

によれば、

Oracle は、サポートプログラム『Oracle Unbreakable Linux』の一環として、『Red Hat Enterprise Linux』(RHEL) に対応し、国際規模の24時間サポートを提供する。Oracle は同プログラムを通じ、現行版を含め過去のバージョンの Linux についてもバグ修正を行なう。

と報じられている。この件と今回のYahooを巡る状況を合わせて考えてみると、状況はRed Hatにとって、猶予ならざる事態に向かっていることが推測される。

つまり、Oracleは自社製品だけでなく、他社の製品に対しても自社と同様のサポートを行うということを表明しており、この範囲にRed Hatの製品が当然に含まれることになる。このことがどれほどの脅威であるかは、昨年10月のITmediaに詳しい。

しかし、Red Hatにとっては、たまったものではないだろう。世界17カ所のサポートセンターで7000人のスタッフが働くOracleがLinux自体のサポートに乗り出すのだ。しかも、キーノートで公表されたサポート料金は、年額99ドルから始まり、Red Hatの半値以下。さらにRed Hatが提供していない、データセンターのデータベースをサポートするのと同等の品質水準もメニューに加えている。(Red Hatを葬り去る? OracleがLinux自体のサポートに乗り出す    / ITmedia

つまり、せっかくRed Hat製品が稼動している環境にあっても、Oracleのサポート部隊が「敵の心臓に手を突っ込む」ことが可能になるわけであり、過去のバージョンに対してもバグフィックスを行うことにより、実質「Oracleに都合の良い」Linuxに改造してしまうことが可能になったわけである。それも強力なOracleの資本力を持って。この背景には、「最新バージョンでしかバグフィックスを提供していなかった」Red Hatのサポート姿勢もあると、ITmediaは論評している。

実際、Oracleのこの方向性が発表された直後、Red Hatの株価は急落している。投資家は、このOracleの方向転換が、明らかにRed Hatに対して脅威となると見たのだ。

つまり、Yahooにおいても、いくらRedHat版のLinuxとOracleとの「共存」が現在は実現されているというRed Hatの言い分が正しいとしても、今後の「サポート合戦」の中で、いつの間にかRed Hatの製品の心臓部がOracleの手によって置き換えられていく可能性があるということになる。

Red Hatの直近の決算内容は、「純利益が5990万ドル (希薄化後1株あたり29セント) となり、前年度の7970万ドル (希薄化後1株あたり41セント) から25%近く減少した。反対に通期売上は前年比で44%も上昇し、4億60万ドルを計上した。」(Japan internet.com)となっている。業績に著しい落ち込みはないものの、純利益の現象が目立つ結果となっている。これについては、Red Hatは「オープンソース ソフトウェア会社 JBoss の買収と事業統合などに伴う運営費の増加」を理由としてあげているが、Japan.internet.comでは、厳しさを増すLinux市場でのRed Hatの今後の地位を危ぶむトーンの記事となっている。

しかし、Yahooでは相当数のOracleデータベースが動いているというのは、少々意外な感じも受けるのだが、同社がオープンソース開発を中心に自社システムをオリジナルで構築しているという印象が強かったのは、こちらの偏見か。

IT市場における「競争」は、その表面的な部分だけ見ていると、なかなかその裏側は見えてこないものだという感を強くさせる出来事ではある。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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