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Second Lifeのビジネスモデル----CPUの作り出す「もう一つの地球」はハッピーか。

2007/01/27 03:09
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殿岡良美

幻の博覧会「世界都市博覧会」で、インターネットを応用した公共イベント企画をプロデュースしたことが、ネットでの活動の出発点でした。しかし結果はご存知の通り。あるいはその未完の記憶が満ち足りない思いを私に残してしまったのか、ネットという愛すべきも、摩訶不思議で捉えようのないものに惹かれ続けてきました。リアルとネットが激しい火花を上げている今日。CNETでは、あらゆる前提や先入観にとらわれない視点から、BigBang的なIT論を展開したいと考えています。
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日本語版公開を目前にして、注目度が上がっているSecond Lifeには様々な人がコメントをしているが、ここのところ、私たちの従来の固定観念では何とも理解できない出来事が続いている。

例えばこれ。

広く報道されている通り、CNET NetworksのSecond Lifeシアターで大入りの観客を前に行われたこのインタビューは、「グリーファー(griefer)」と呼ばれる悪質なプレーヤーの一団によって妨害され、Ansche Chung氏は15分間にわたって、空飛ぶ男性性器の群れやポルノ画像による「デジタル攻撃」にさらされた。
(中略)
ビデオと記事に用いられた画像はインターネットを通して瞬く間に広がり、Ailin Graef氏の夫でビジネスパートナーでもあるGuntram Graef氏を激怒させた。Graef氏はこのビデオを「著作権侵害」行為と見なし、デジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act)に基づいて、YouTubeに申し立てを行った。
Second Life不動産王とDMCA違反申し立ての舞台裏-- CNET Japan

Ansche Chung氏は、中国人女性実業家の作成した、Second Life上のアバターである。Second Lifeで不動産投資で大成功を収め億万長者になったという。彼女の記者会見場に「男性器型」のアバターが大量に押しかけた。YouTubeに公開されたこの画像は、今でも一部見ることが出来るが、報道されたようなモノモノしさはなく、まるでまぬけで出来の悪いゲームを見ているようであるが。

あるいはこれ。フランスの極右政党、「国民戦線」がSecond Life上に支部を設けようとしたら、反対したユーザーとの間で「銃撃戦」が発生したという話。


「自由、平等、平和」が魅力の一つであるSecond Lifeとはとても相容れる存在ではありません。早速この政党のSecond Life支部設置に対し他ユーザーが反発、抗議行動に。激しい抗議が行われ最終的には銃撃戦や事務所打ち壊しにまで発展したそうです。もっとも、 Second Lifeには「死ぬ」ということは無いので実害はありませんが、サーバーが遅くなるなどの問題は発生したとのこと。(右翼団体 Second Lifeから締め出しを喰らう---CNET Japan読者ブログ-- ネットでポン

銃撃戦!?

いずれも、ちょっとこっちの頭がおかしくなりそうな話ではあるが、こうした「奇奇怪怪」な出来事を次々と生み出すSecond Lifeとは一体何なのだろうか。

これらの出来事が、バーチャルワールドで起きた深刻な問題であると、いくら言われても、「普通の人々」にはどうもピンとこない。常識的な「リアリティ」を著しく欠いた、どこか遠い世界の御伽噺のように聞こえるであろう。
思えばこの「リアリティ」のなさは、インターネットが登場した当初にも感じられたことであった。大変なことが起きている、革命的な出来事が起きていると「先端的な人々」がいくら画面上のMosaicを示して叫んでも、インターネットをやったことのない人たちにとっては「それで何か?」というような鈍い反応しかない状態が数年続いたことは、まだ記憶に新しい。
後にインターネットは想像以上の大発展を遂げたわけだが、果たしてSecond Lifeも、そうした「何者かの」孵化期なのだろうか。

その予想を楽しむのは結構であるし、楽しくさえあるのだが、楽観ばかりしていていいのだろうか。ここで私が引っかかっているのは、Second Lifeのビジネスモデルが、従来のインターネットの原理とは全く異なるのではないかと言われている点である。

Second Lifeの大きな特徴の一つは、リンデン・ドルと呼ばれるネット内通貨を、現実の世界のドルと交換可能にしたことにある。これによって、バーチャル空間内の経済が、リアルの経済と繋がったと、注目を集めた。だが、もう一つ忘れてはならない重要な点がある。それは、通貨の互換と表裏一体なのだが、昨年行われた、「ネット3D化の先駆けか メディアの未来を垣間見るバーチャルリアリティSecondLife」(ExciteWebADTimes)という、リンデンラボのマーケティング部長へのインタビューに詳しい。

――御社のビジネスモデルについて詳しく知りたいのですが。

セカンドライフへは誰でも無償で入ることができますが、プレミアム登録者には月額10ドルで土地所有などの特権が与えられます。土地を購入したユーザーには、月々の固定資産税が課金されています。住人は、そこに住宅やオフィスなど種類を問わず建物を作ることができます。
登録者数についての質問を多く受けますが、登録者の月額料金で事業を成り立たせせているオンラインゲームの収益モデルが適用されていないため、登録者数では収益を算出できません。
収益の大半は、登録者の月額料金ではなく、土地の売却とその他の定期的な税金から生まれています。
セカンドライフに関するすべての統計データは、自社サイト上で一般公開しており、アクティブな登録者数はセカンドライフの中で継続的に活動している利用者を反映したものになっています。セカンドライフに適用される税金は、クレジットカードで決算可能な架空の通貨リンデンドルで支払われます。現在、リンデンラボでは円やユーロなど国際通貨での支払いにも対応できるよう、決算システムのローカライズ化に取り組んでいます。(同上 デービッド・D・フレック:David D.Fleck リンデンラボ社マーケティング部長)

多くのインターネットのビジネスモデルが、先端性を競いながらも、所詮は広告モデルであるのに対して、Second Lifeは違う。彼らのビジネスの基盤は、デジタル空間における「不動産業」であることを、フレック氏は、明言している。参加者が、リンデンラボ社から、バーチャルワールド上の「土地」を有償で借りて、高付加価値を生むような事業を行う。そして収益が上がれば、リンデンラボに「税金」を払うのである。
こうしたモデルは、確かに今までなかった。しかもSecond Life上にある土地や建物は、現実世界と見まがう空間認識を持てるような質感にあふれている。(これは今現在の「おもちゃ」が進化していく仮定のもとに)

企業がこの世界の土地を借りてビルを建て、そこで新製品の発売キャンペーンや実際の販売などを行えば、その土地には高い付加価値がつくので、税金も増大する。土地が高値で取引されれば、やはりそこで手数料が課税されるので、リンデンラボが利益を得るという仕組みだ。従来の多くのインターネット上のビジネスに支配的な、「広告モデル」によって利益を得る発想とは全く違うのである。

セカンドライフの世界においては、企業があるスペースに広告を出したいと思っても、まずその土地の所有者の許諾を得なくてはいけないため、広告の概念そのものが存在しません。
セカンドライフの世界では、広告主はユーザーが自由に出入りすることのできる島々を所有することになります。ですから道を行き交う人々に強制的に広告を見せる必要はありません。もちろん、今後、このモデルが変化する可能性はあります。
セカンドライフの土地所有者に対し、広告料を支払うという申し出があった場合、それを喜んで受け入れるか、毛嫌いして拒否するかについては、個人レベルで意思決定すればいいんです。(同上)

ここで注目すべきことがある。リアルワールドと違って、デジタルの世界では土地の広さに「限界」はない。したがって、そのデジタル世界の土地で収益があげられる見通しがあれば、土地は無限に増殖していく。
Second Life上では、土地は「シム(Sim)」(Simulatorの略)と呼ばれるユニットの上に存在する。各シムは、実際はサーバの1CPUが処理する領域で、1辺の長さは256メートル(65536平方メートル)である。

Second Life Wiki JPによれば、以前は1シム1サーバーだったが、現在はマルチCPUのサーバになったため、最大4シムで共有しているところもあるという。

CPUとリンデンラボが許す限りユーザーは望めば、土地を無限に手に入れて、膨大な事業を行うことが出来、しかも土地の生んだ収益は、リアルの通貨と交換できるのである。現実の地球上の土地には限りがあるが、CPUの作り出すデジタルの土地には限界がない。

これを突き進め、Second Lifeが大成功を収めてユーザーとリンデンラボ社による拡張が続いた場合、Second Lifeのバーチャル空間には、全地球を上回る膨大な土地が出現したとしても不思議は無い。まさにデジタル世界にビットで構成された、「もう一つの地球」が存在するようになるかもしれない。

そして、これらの土地からあがる収益のほうが、リアルの限りある土地からあがる収益を凌ぐ規模にまでなれば、現実の土地に投資するよりも、CPU上の土地に投資したほうが、経済的であるということになる。もしもそうなれば、現実の土地は価値を失い暴落するだろう。

そんな馬鹿な?

確かに、これは夢物語のようにも聞こえるが、言いたいことは、バーチャル空間の経済とリアルの経済が融合するというのは、極端に言えばこういうことなのであり、広告モデルなどという牧歌的な、草食動物的な旧ネットモデルなど、根本から崩れる「可能性もある」ビジネスモデルだということである。そしてそれは我々にとって確実に未知の領域である。
となれば、CPU上の土地には現実世界と同等の、あるいはより厳しい法治が要求されることにもなるだろう。今回の2つの事件--「セクハラを受けた不動産王」と、「バーチャル世界の銃撃戦」を見れば、この「御伽噺」は、「御伽噺」で終わらない可能性もあるということだ。

もちろん、現実の土地ではないのだから、できないこともある。生身の人間が生活すること、居住することは当然できない。レストランで実際に美味い料理を食べることもできないだろう。だが自分の分身であるアバターがそこで生活し、金を稼ぎ、商品を購入したり、デートやSEXを行うことも可能だ。それに引き換え、実社会はデジタル社会の好景気に遠く意及ばず、雨漏りのする古い建物を放置する、惨めで暗い「ブレードランナー」のような世界になるかもしれない。

さあ、そういう未来において、あなたの「リアル」はどちらにあるのか、迷わずに明言できるだろうか。私は自信がない。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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