本日からCNET読者ブログに参加させていただくBigBangです。「ITビジネスの宇宙的観察誌」なんてぶちあげてしまいましたが、めまぐるしい技術の革新を、ちょっと遠くから俯瞰しながら書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。
開発の仕事は「人を殺す」産業だなあと思い続けてきました。多くの場合システムを導入する場合に、顧客への一番の説得材料になるのは、「省力化」。いかに当該業務の必要人員を減らし、人件費を浮かすかということでした。そこに、バブル崩壊後の沈滞した経済の中でIT産業が生存してきた、もうひとつのリアルがあると考えています。
IT産業が過去に跋扈しては衰退していった、他の多くの産業と違うのは、「容易なことでは雇用を生み出さない」ということだと思っています。もちろん波及効果で周辺に新しいビジネス機会を創出し、産業構造を変革した後には、新しい世界が開けるのかもしれない。
しかし、今生きている世界は、未だ黎明。変革の時代です。新しい価値の創出前夜の破壊がまだ続いているような気がしています。「Web2.0」も一時の流行語として泡と消えていくのか、このあたりで本物の「変革」につながるのか、私はまだ懐疑的です。
今日は、まだ年初め。そしてこのブログの初回と言う事もあるので、本年友人に出した、私の年賀メールから一部引用してご挨拶に代えさせていただきます。
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新年のご挨拶
現代の、もっとも成功した企業であると言われるGoogleは、「Google Earth」というサービスを昨年から提供しています。衛星写真によって、瞬く間に自分の住んでいる家、街、都市、国を宇宙からの視点で眺めることが、手元のパソコンひとつでできます。彼方の宇宙から、急降下して自分の国へ、そして街の上空に迫り、自分の家の屋根を確認し、その驚異的な精細度に驚いては、また宇宙の彼方へ。試したことがある方も多いと思います。バーチャルな空間の中で地球はまるでおもちゃの地球儀のように踊ります。
大都市や興味深い施設などでは、解像度1mの高解像度画像が使われていますが、この解像度では、航空機の機種もおおまかに判別できるそうです。また、極めて限られた地域では、解像度60cm、30cm、15cmの画像が使われていて、この場合は車の車種や、木々が落とす枝の影さえ判別できるほどであるといいます。(Wikipediaより)
Google Earthを使って私の母校である大学を見ると、めまぐるしい勢いで変わっていることがわかります。通い親しんだ古い校舎はいつか高層ビルに変わり、新しいロースクールの荘厳な建物はじめ、多くの建築物が増えました。
先日、その母校近くのバーガーショップで、友人と深刻に就職の相談をしている2人組の学生の会話を聞くことがありました。なかなか就職が決まらなくて、あせっているようでもありました。それだけでしたら、私たちの学生時代にもあった日常の風景ですが、そこから先が違います。2人はこのままでは、正社員になれない、アルバイトかフリーターにならざるを得ないことを、恐れているのでした。
こうした危機感は、私たちの学生時代には、現実にはなかったものでした。派遣企業に属さず、いわゆるフリーターになってアルバイトでつなぐ人たちの場合は、遥かに厳しい状況になっているようです。
「現住所ネットカフェ」という若年者が増えているといいます。といっても、インターネット中毒になり、ネットカフェに入り浸っているという意味ではありません。住んでいるアパートを追い出されて、文字通り24時間いることのできるネットカフェを、昔の「木賃宿」代わりに使っている若者が増えているという意味です。多くは「生活困窮フリーター」と呼ばれています。
2006年11月2日の朝日新聞は「東京・池袋、席数150の大型店店長は『一晩の泊り客は平均140。大きなかばんを持ち何度も見る常連さんはそのうち1割』と話す」と報じています。蒲田や日暮里などのネット喫茶も、およそ10%程度は、こうした「長期滞在者」だということです。
ここ数年、転職やアルバイト紹介のサイトなどが、フリーターやアルバイトは、自由で束縛されない新しい生き方であるかのように、派手なCMでプロモーションしてきました。事実、携帯サイトに登録さえすれば、翌日の1日労働であれば、見つけることはそれほど大変ではないようです。ですが、ことはそんな甘いものではないということに、多くの若者達が気がつき始めています。
郷里にいる、豊かな両親の援助を受けられる「恵まれたフリーター達」は別として、そうした恩恵に預かれない大都市の若者は、常にぎりぎりの生活を強いられているので、病気とか、勤務先の倒産、転職の失敗など、ちょっとした偶然のハプニングで、たちまち生活基盤を失うというのが、「生活困窮フリーター」を生み出す原因となっているようです。
長い間、貧困は遠い国の話、日本とは無縁の世界だと信じて、私たちは暮らしてきました。ところが、私たちの暮らすすぐ隣で、光ファイバーの張り巡らされた暗い空間の、固い椅子の上で、痛い背中に耐えながら何日間も眠る、新しい貧困層が生み出されています。国が最先端国家の証として推奨してきたIT産業の基盤を担うインターネットは、ネットバブル以降、メディアに跋扈する新富裕層を生み出した一方で、ネットの懐に、大量の「若年貧困層」を抱く暗い空間を、都市の各所に作り出したということになります。
この世界の「リアル」とは一体何でしょうか。
どんな出来事も、遠く対象を離れてしまえば、Google Earthが描く、パソコン上の、青く美しいバーチャルな地球に溶け込んでしまいます。全地球を見渡すほどの、とてつもない広大な視野と情報、その気になれば独裁国家の指導者すら追撃できる武器を手に入れた代わりに、私には、何が見えなくなっているのでしょうか。
Googleが数万台ものサーバーで全世界に提供している圧倒的な情報が、光速で駆けるその同じネットワークの下に、今夜も蜜蜂の巣のような狭く暗い空間に、手足を縮めて不安な夜を眠る人たちがいます。私達はコンピュータのキーボードの上では時空を超えた情報の世界を駆け巡ることができるのに、目の前の暗闇に横たわる友人の命に気がつかない。あるいは静かにこの世界を退場していく友人たちの、最後のひと呼吸に、最後のぎりぎりの懇願に気がつかない。
私達の社会の「リアル」が、そんな無残な形であってはならない。そんな場所が、私達の「辿り着いた未来」であってはならないと、世界の片隅の小さな場所から思います。
長文失礼いたしました。
本年もどうかよろしくお願いいたします。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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