前回のエントリー「Vista の失敗はWindows 終焉の序曲?」では、Vistaの失敗が招きつつあるマイクロソフト社自身によるWindows離れの可能性についてコメントしたが、今回はWindowsと並んでドル箱のOffice Suite(Word,Excelなど)にも実は危機的な状況が醸成されつつあるのでは・・・という話題を取り上げたい。
まず個人的な話題から始めたい。
筆者は80年代半ばのマッキントッシュ512Kの時代からのエクセルユーザーだ。あの当時はまだ日本語のマニュアルがない時代で、英文のマニュアルと格闘しながら、英文のメニュー指示に従ってそれほど多くないデータをグラフ化したり、ソーティングしたりしていたことを懐かしく思い出す。
ワードはエクセルに比べるとそれほどお世話になった記憶がない。いまでもそうだが、まとまった文章はテキストエディターのほうが使い勝手がいいので、ワードを立ち上げて新規に文章を作成することはまずない。せいぜい必要に迫られて(原稿として出版社に送るなど)エディターで作成した文章をワードにコピー&ペーストして、字体を変える(太字にしたり、字色を変えたり、字の大きさを変えたり)程度に使うだけである。
ワードで最近困るのは、以前にこのブログでも取り上げたことがあるが、Office2007のワードで作成したファイルをデフォルトの保存形式のままメール添付で送られてくると、「.doc」ではなくて「.docx」即ちOOMXL形式(マイクロソフトが目下ISO承認申請中の独自のXML規格)拡張子のファイルで送られてきてしまうため、Office2000を仕方なく使っている筆者のパソコンでは読めないのである。
ところがつい最近、この不都合を回避できる「裏技」を習得した。筆者が使っているウィルコムの携帯端末「アドエス」に搭載されているワードがOOXML対応なのをたまたま知ったので、パソコンからアドエス用のメルアドに転送して、アドエスで開いたところ見事読めたのである。さらに進んで、このファイルをパソコンで再加工するにはどうするのだろうか? 面倒だがやってできないことはない。アドエスのワードで開いた文章のテキストデータをアドエスのメール上にコピー&ペーストしてから、再度パソコン用のメルアドにアドエスのメールで送り返すのである。つまりアドエスをOOXML形式のワードファイルのトランスレーターマシンとして使うわけだ。
パソコンでできないこと(しかも最も仕事で多用されるオフィスソフトに関すること)が携帯端末でできる時代になったのである。うそのようだが、本当の話だ。
この裏技を知って以来、筆者はアドエスからiPhoneへの買い替えは、当分ないだろうと覚悟した。アップルが本気でiPhoneを企業ユーザーに普及させようとするなら、このようなマイクロソフトが確信犯的にやっている「ナンチャッテXMLによる旧ユーザーへの嫌がらせ攻撃(そうととしか筆者には思えない)」対応まで考えなくてはならないだろう。
こんな不便をユーザーに押し付けてまでも自社の権益(しかも独占的な)を保持し続けようというあの会社の身勝手さと傲慢さには呆れるばかりだが、対抗手段はある。
一例だが、オフィス互換のオープンソースソフトを利用すればいいのだ。筆者はワードのこの一件で嫌気がさしたので、マイクロソフトのOfficeは封印し、「オープンオフィス」(OpenOffice.org)に切り替えたばかりである。もとよりそれほど凝った形式の文章やデータ加工はしないため、機能的には全く問題なく「オープンオフィス」を使っている。
筆者のような個人に止まらず、国や地方自治体のような公的機関でも「オープンオフィス」を導入するところが増えつつあるようだ。会津若松市もそのひとつで、つい先日の8月22日、「オープンオフィス導入に関する情報公開」を行い、導入までの経緯,経費や職員の反応などの情報を公開している。
「オープンオフィス」のいいところは、すでに2年以上まえにISO承認済みのXMLファイル形式であるODF形式で保存されるため、互換性に関しては折り紙つきという点だ。
これに対して、マイクロソフトのOOXMLのISO承認はようやく最終段階にたどり着いたようであるが、承認の過程で問題視される出来事が起こったらしく、承認への異議申し立てが起きたりそれをISOが(かなり強引に)却下したりするなど、まだ火種が燻ぶっているようだ。さらに呆れるのはISO承認されたOOXMLはOffice2007の次のバージョン(コードネーム:Office 14)から実装されるのだそうだ。(これについては 8月15日のGroklaw のブログ記事「OOXML Appeals Rejected」の情報を元にしています。筆者が誤解している可能性があるので、より正確な情報をお持ちの読者の方がいたら、訂正のコメントをいただければ幸いです)
ともあれ、現時点では公式に承認されたXML形式はODFしかないため、結果的に政府や地方自治体の調達基準(昨年の7月から実施された)をクリアーしていないワードやエクセルは実質的に官公庁から締め出される形になっているといってよい。(そういう事情もあって、マイクロソフト社は強引にOOXMLのISO承認をゴリ押しせざるをえない苦しい立場に追い込まれているようである・・・あくまで筆者の邪推であるが)
因みに、XML(eXtensible Markup Language) は今から10年前の1998年に実用化がスタートしたウェブ用データ記述言語で、ドキュメントでありながら、データとして処理可能な形式を兼ね備えており、コンピュータで処理可能(ニュースやブログの見出しや要約を一覧表示してくれるRSS はその利用例)なため、ネットワークでのデータ処理用としてバックエンドでは至るところで使われるようになってきた。
*XMLの国内での利用実態についてはXMLコンソーシアムが先月「XML利用実態俯瞰図−第1版」を公開しているのでそちらを参照されたい。
このXMLはティム・バーナーズ=リー が次世代ウェブとして提唱したセマンティック・ウェブ (人間が手間暇かけてデータを処理しないでも、コンピュータ同士が会話&連携してデータ処理ができるような、よりインテリジェントなウェブとでもいうのだろうか)の中核を担う記述言語であり、あらゆるデータがタグ付きで処理されるため、XMLで記述されたドキュメントはウェブ上で汎用的に処理可能な「構造化データ」になるという利点がある。これに対してワードやエクセルは独自のバイナリーコードで処理されているため、ファイル名以外の内容はブラックボックス(=非構造化データ)で、肝心のデータそのものにはウェブ経由ではアクセスできない。
時代はますます業務プロセス管理や経営上の意思決定に関して、透明性やトレーサビリティに厳しくなっており、そのためのエビデンス(証拠書類)として、ドキュメント管理(作成・承認・内容のメンテナンスなど)がますます重要視されつつある。そのため、プライベートなものは別として、個人持ちの業務ファイルは廃止され、ネットワーク経由で共有化される方向にある。そうした流れの中では、今後ワードとエクセルで作成された(非構造化データの塊のような)業務ファイルはドキュメント管理上の最大の障害(マイクロソフトの「負の遺産」とでもいおうか)になるのでは・・・と筆者は観ている。
次世代フォーマットを巡って、相容れないふたつの規格が「ガチンコ勝負」する戦いは、DVDの世界で今年の年明け早々にブルーレイ陣営とHD-DVD陣営の戦いに終止符がうたれたばかりだが、これから先はオフィススィートの標準化を巡るODF陣営(盟主はIBM?)とOOXML陣営(盟主はもちろんマイクロソフト)の戦いが脚光を浴びることであろう。
DVDフォーマットを巡る戦いでは、東芝率いるHD-DVD陣営に肩入れして「負け組」となったマイクロソフトだが、オフィス用XMLドキュメントのISO標準化を巡るフォーマット戦争でも出遅れた感のある同社は苦戦を強いられている。なりふりかまわない同社の逆襲が奏功するかどうかは全く予断を許さない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
2008/08/25 11:52
mkny on 2008/10/10
今駒哲子 on 2008/09/26
Jacquesさん、コメントありがとう御座います。
>for Mac ファミリーは異様に安いですよね。
全く同感です。
ご存じの通り、ヨドバシカメラでは、iMacやMacBookと同時購入で、
>【MacBookと同時購入でお得なセット】
「Office 2008 for Mac ファミリー&アカデミック」は、セットならMac本体の価格にプラス500円。
http://www.yodobashi.com/enjoy/more/setcoupon/coid_0000004725/index.html
8月31日までです。
ちょっと安すぎなのですが...
朝之丞 on 2008/08/27
for Mac ファミリーは異様に安いですよね。
社会人になる前はWindows上ではWorks利用してました。当時はそれで十分でしたので。今ならGoogle Docs&SpreadsheetやOpenOffice.orgにLotus Symphonyと選択肢が充実してきたため、MS Officeの優位性は以前ほどではないでしょうね。
Jacques on 2008/08/26
朝之丞さん
返信ブログ、どうもありがとうございます。
それに耳寄りな「Microsoft Office Personal 2007 アップグレード 特別優待パッケージ」バーゲン情報も。
でも私は買いませんね。私のブログでもコメントしたように、ワードはほとんど使わずテキストエディターで済ませていますし、使うにしてもただで使える同等品が他に一杯あるのですから。
振り返ってみれば、ここ何年かは何かにつけてフリーソフトのお世話になることが多くなりました。
earlybird on 2008/08/25
YOSHIさん、NOJIRIさん
早速のコメントありがとうございます。
<YOSHIさんへ>
はいご指摘の通り、ocx形式のファイルを、旧Officeで開くアドオンが公開されていることは知っていますが、敢えて無視しています。「抱き合わせ販売」の塊のようなOffice Suiteにさらにアドオンソフトをインストールして、マイクロソフトの肥大化したソフトに貴重なパソコンのリソースをこれ以上占有させるる積もりはありませんし、まだ(名実共に)正式にISO標準フォーマットとして認知されていないOOMXLに手間ヒマかけて対応するのもアホらしいからです。
<NOJIRIさんへ>
iPhoneがOOXML形式に対応しているとは知りませんでした、これは朗報ですね。(そういえば、アップル社はOOMXL陣営の一員でしたね、忘れていました)
earlybird on 2008/08/25
>アップルが本気でiPhoneを企業ユーザーに普及させようとするなら
iPhoneはOOXML形式に対応しています。つまり.docx拡張子のファイルを開くことができます。ご存じなかったのでしょうか?
nojiri on 2008/08/25
MS、「Office 2007」の新ファイル形式を旧バージョンで開くアドインを正式公開
http://www.forest.impress.co.jp/article/2006/11/09/office2007converter.html
docx形式のファイルを、旧Officeで開くアドオンが公開されているんですが、
あえて無視されてるんでしょうか?
YOSHI on 2008/08/25
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> XMLは(中略)ウェブ用データ記述言語
というよりも"汎用"データ記述言語だからこそ、相互利用を考えると、ウェブにもワードのような文書にもスプレッドシートデータにも(B2Bや様々なデータの受け渡しにも)適していて「〜バックエンドでは至るところで使われるようになってきた。」
という気がいたします。