最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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薄型テレビ(FPD)を巡る家電業界再編の行方

公開日時:
2007/12/29 09:07
著者:
earlybird

 ここ何年かの間、水面下で進行していた家電業界再編の動きはこの一週間で一挙に表面化したようだ。再編の核となったのは薄型テレビ(以下FPD)の開発及び設備投資を巡る提携だ。まずは先週末(12月21日)、シャープと東芝が液晶、半導体分野での提携を発表、それに続いて、今週火曜日(12月25日)には日立、キヤノン、松下が液晶ディスプレイ事業での基本合意を発表した。

さらに上記2つの提携に加えて、ソニーが来年2月にリアプロジェクションテレビ(以下リアプロ)の生産を終了し、リアプロ事業から撤退する旨の発表行なうというおまけまで付いた。(12月27日)

筆者の認識では、国内の薄型テレビ市場に関しては、かねてから「一強二弱、その他問題外」という図式である。

「一強」とは今や「液晶テレビの王者」となったシャープ

「二弱とはシャープに遅れをとったものの、ブランド力と販売力で取りあえず凌いでいるソニーと、落ち目のプラズマテレビ(PDP)に未練タラタラのパナソニック

・それ以外のメーかーはほとんど横一線(ドングリの背比べ)の「その他問題外」

 というわけだ。

今回の派手な提携劇でこの図式が一変する可能性はあるのかと問われたら、それは限りなくゼロに近いだろうと答えたい。

以下にその辺の事情をもう少し詳述しておきたい。

 

■「液晶テレビの王者」シャープと、「選択と集中の鬼」東芝は最強のコンビ 

筆者が社会人となった70年代前半の「技術もマーケティングも三流」だったあの頃のシャープを知る人間で、あの会社がここまで到達すると想像しえた人間がいるだろうか。栄華の絶頂期を迎えようとしているシャープを見るにつけ、まさに隔世の感を禁じ得ない。

特に今年の春から発売されたアクオスのRシリーズは液晶テレビの芸術品といっても過言ではないほどの出来映えで、これを見た瞬間に筆者はもはやPDPに未来はないと確信したほどだ。これはあくまでも個人的見解だが、PDPは微妙な黒の諧調表現ではほんの少しLCDよりは優っているようなので、往年の名画を観るにはいいかもしれないが、LCDのようなビビッド感に乏しいので、ハイビジョン映像には向いていない気がしてならない。

その「王者」シャープと、今やエネルギーと半導体に異常なまでの集中投資を行ないつつある東芝の組み合わせは最強のコンビといってもいいだろう。

今回の提携でシャープは東芝から液晶テレビ用システムLSIを、東芝はシャープからテレビ用液晶モジュールを調達することにより、お互いの得意なデバイス開発&製造に注力できる条件が整うわけで、当分シャープの優位は揺るぎそうもない。

 

■「過去と訣別する決断」ができない日立、キャノン、松下の提携は同床異夢の「負け犬連合」?

唐突な引用になってしまうが、今回の日立、キヤノン、松下3社の提携のニュースを目にしたとき、なぜか今から30年近い昔流行ったさだまさし氏の歌の一節が思い浮かんだ。

幸福(しあわせ)は二人で育てるものでどちらかが苦労してつくろうものではないはず 

〜「関白宣言」(さだまさし作詞作曲)より〜

筆者の印象では、どう観てもこの3社はお互いに提携相手には自分を幸せにしてくれることだけを期待するばかりで、お互いに幸せを育てようという前向きな気概が感じられないのである。

もっとはっきりいわせてもらうと、今回の提携の「キモ」はシャープ/東芝の勝ち組最有力タッグの出現に慌てた日立、キヤノン、松下の3社が焦った挙げ句に、当面の危機打開策として「群れた」としか見えないのである。

今回の合意によって当面の急場は凌げるが、長い目で見るとこの提携により3社はお互いに「自縄自縛(じじょうじばく)状態」あるいは「三すくみ状態」となり、自社の運命を自社でコントロールできなくなるリスクを抱え込むことになった。

来るべき大激変の時代に重要なのは「汝自身に運命を委ねよ」(Control your own destiny) なのにもかかわらず、この3社はそれとは逆行する道を選んでしまった。

ところで、自縄自縛といえば、ここ数年これでミソをつけた例が結構多い。

・古くはソニーの旧経営陣が掲げた「営業利益率5%」の自縄自縛、

・最近では自民党安倍政権の「インド洋への海上自衛隊艦隊派遣」と「国民年金をめぐる空手形」、

・ボクシング亀田一家の「チャンピオンタイトル必奪 and それができなければ切腹宣言」など。

いずれも達成見込みのないまま、空回りの「思い込み」と「気合い」と「口先」だけで乗り切ろうとする絶望的なジリ貧状態で有りがちなパターンである。

ところで3社にとって「訣別すべき過去」とは何を意味するかというと、

・日立は「デイスプレイビジネスからの撤退」

・松下は「PDPからの撤退」

・キャノンは「SEDからの撤退」

である。

今回の3社の提携は各々が上記の「捨てる決断」を行ない、世間に公表するラストチャンスだったはずなのに、みすみすそのチャンスを逃してしまった。

男女関係に例えていえば、それぞれが未練タラタラの「モトカレ」と付き合いながら、二股三股交際をしている図(しかも三角関係)とでもいおうか、一歩間違えばドロドロの修羅場になりかねないスリリングな状況は続きそうだ。

 

■有機ELに的を絞りこんだ「我が道を行く」ソニー

 一方、リアプロ事業からの撤退を発表したソニーは、今後はLCD及び有機ELディスプレイに(以下OELD)リソースを集中することになる。

撤退といえば、ソニーはPDPからの撤退はとうの昔に決めており、シャープなどはここ数年の「LCD vs PDPバトル」での店頭セールストークとして、「ソニーのPDP撤退とLCDの選択」こそLCDの優位性の証(あかし)として利用していた。

ただし、ソニーのLCDに対する見方はかなり覚めているようだ。

3年前にサムスンと結んだS-LCD株式会社でのアモルファスTFT液晶パネル製造事業も、テレビ市場における「強者」の立場を利用したミート戦略(商品の差別化ではなく、ブランド力や販売力などを含めた総力戦で2位以下の競合相手を屈服させる戦略)そのもので、ことLCDに関する限り、かつての「技術のソニー」の面影はない。

因みに、ソニーはだいぶ前からOELDを次世代FPDの最有力候補とみており、PDPからは早々に撤退、LCDに関しても過渡的な技術として軽視し、早い時期からOELDに開発リソースを集中していたようだ。

確かに長い目で見ると、自発光(LCDのようなバックライトは不要)で低消費電力、色再現性とコントラスト比に抜群の性能を誇るOELDが次世代表示デバイスの最有力候補であることは間違いない。しかも構造がシンプルで、折り畳んで持ち運ぶこともできるので、モバイル機器用モニターとして理想的なデバイスになることだろう。ただし、まだローコスト化、大画面化、長寿命化という課題が残っているので、まだまだ本格的に普及するまでには紆余曲折が予想されるが、構造がシンプルでも難題が山積しているということは、目に見えない「製造上のノウハウの塊(かたまり)」でもあるわけで、日本のお家芸が最も生きる可能性大、先行きが楽しみでもある。


■今後予想される展開

 FPDを巡る家電業界の再編は始まったばかりだが、今後の展開を大胆に予想し、締めくくりたい。

(1)PDPはジリ貧になるにもかかわらず、パナソニックはPDPとLCDの二兎を追うことにより、極めて苦しい立場に自らを追い込む可能性大。

(2)SEDは幻のディスプレイと化し、これに深くコミットしたキャノンはその後遺症に悩まされることになる。

(3)LCDとOELDが次世代FPDの2大コアデバイスになるが、OELDが普及するのにはまだまだ時間がかかる。特にOELDの大型化は難航しそうなので、用途やサイズでの「棲み分け」の時代が相当長く続く。

(4)業界の再編は日本のみならず、世界的な規模に発展し、日本のメーカーで生き残るのはせいぜい2〜3社止まり。

(5)テレビの視聴時間は年々減少するため、2mの距離で観る大型テレビに代わり、20センチ先で観る中小型FPDの普及台数が家庭内では圧倒的に多くなる。OELDが普及するかどうかはこのモニター市場を攻略できるかどうかにかかっている。

(6)今回の提携劇から外れたその他問題外メーカー(三菱、ビクター、パイオニアなど)は限りなく存在感を喪失していき、やがては市場からフェードアウトする。唯一の延命策はかつての三洋が普及型デジカメのOEM(相手先ブランドでの生産)で生き延びたような「名を捨てて実を取る」戦略くらいかもしれない。







※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

1

こんばんは。はじめまして。
と言いつつ、お会いしたことがありますが(笑)

さて、ちょっと瑣末な部分に反応させていただきますけど。

>特に今年の春から発売されたアクオスのRシリーズは液晶テレビの芸術品といっても過言ではないほどの出来映えで、これを見た瞬間に筆者はもはやPDPに未来はないと確信したほどだ。これはあくまでも個人的見解だが、PDPは微妙な黒の諧調表現ではほんの少しLCDよりは優っているようなので、往年の名画を観るにはいいかもしれないが、LCDのようなビビッド感に乏しいので、ハイビジョン映像には向いていない気がしてならない。


失礼ですけど、本当の高画質をご存知ないように思います。
パイオニアの“KURO"をちゃんとした環境でご覧になったことがありますか?
液晶と並べて見ると、違いに(液晶のひどさに)唖然としますよ。

Rシリーズをご覧になったのが、明るい(明る過ぎる)店頭であるならまあ仕方ありませんが、あの画質を見て僕は逆に、シャープが最高の画質と謳うディスプレイがこの程度なのかと本気でガッカリしました。
ただ、店頭ですばらしく見映えのする“ギラギラしたいかにもハイビジョン的な高精細感のある”画質であることは確かだと思います。

ただし、悪貨は良貨を駆逐する、とまでは申しませんが(笑)、上にも書かせていただいたように、一般受けする液晶がこれからも主流であり続けるのは間違いないところでしょう。
画質だけならSED、あるいはOED、って話になるわけですから。
また、バックライトの『局所輝度制御技術』のように、液晶絡みのブレークスルーみたいなのもあり得ますから、液晶の画質だってまだまだ進歩すると思いますし。

でもいいんじゃないかと思います。
クルマの世界でも、ポルシェやメルセデス・ベンツだけじゃ困るわけで、いつの世にも、カローラは必要ですから(笑)。いや、カローラは必要十分の素晴らしいクルマであると思って書いています。

  Shin_s on 2007/12/30

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