IT 業界では、何年かに一度時代を変えるような製品やサービスが出現する。今年発売されたiPhone がそれだと思っていたが、それだけではなかった。どうやら2007年はこの業界にとって「当たり年」のようだ。
まずは出来事(未確認情報も含む)を列挙しておきたい。
(1) Google が2002年の3000万ドルで買収しようとしたが、断られたそうな。(もし、このとき Google の株式との交換なら10億ドル以上の価値があったことになる)
(2) Yahoo! が10億ドルで買収を持ちかけたが、断られたそうな。(2006年)
(3) ブロガーの元祖 Dave Winer がこの会社のサービスが一般公開された(2006年9月26日)後間もなく加入し、Group for Scripting News を立ち上げた。
(4) SNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム) の王者 MySpace がこの会社に対抗して、プラットフォームのオープン化を発表した。(2007年10月17日)
(5) マイクロソフトが2億4千万ドルでこの会社の1.6%の株式を取得した。これは時価総額で150億ドル(日本円換算で1兆6500億円以上!?)に相当すると評価したことを意味する。(2007年10月24日)
(6) あの Google が大慌てで SNS 向け API「Open Social」を発表した(2007年11月1日)のも、この会社に先を越された焦りからと言われている。(筆者注:Google が他社の後追いで何かするのは多分これが始めてだろう)
(7) Web 2.0 の言葉の生みの親であるTim O'Reillyが、Web 2.0 Summit の舞台裏でその青年との何気ない会話で垣間見た志の高さに感銘した(I am really impressed.)とブログで告白している。(2007年11月4日)
(8) Web 2.0 SummitにTシャツ、スウェット、ジーンズにサンダルといういでたちで登場したこの青年は、司会者や業界幹部から質問攻めにあったが、若さに似合わず冷静かつ巧みに捌(さば)いた(ようだ)。
(9) 日ごろは Google と Youtube に容赦ない批判を浴びせている Mark Cuban が ブログ「Blog Maverick」でその会社のサービスを絶賛した。(2007年11月4日)
(10)その著書「IT doesn't matter」でIT 業界関係者に大論争を巻き起こした Nic Carr がそのブログ「Rough Type」で11月6日に発表したこの 会社の Social Adds に関して、最大級の賛辞を送った。(2007年11月6日)
以上いずれも話題は、1984年生まれの若干23歳の青年 マーク・ザッカーバーグ と、彼が率いる Facebook(フェイスブック:以降 FB と略記 )という会社に関するものである。
FB は2004年2月4日、まだザッカーバーグが二十歳前にハーバード大学の学生が交流するための SNS として創立したのち、その年の5月までには全米の 30 大学に普及、その後 2006年に一般公開すると加入者は急拡大し、今や SNS 業界のみならず、IT 業界全体に激震を起こし、新たなコミュニケーション革命を担う時代の寵児として持てはやされる存在になった。
それにしても、昨年のいまごろはGoogle、Youtube、そして Apple がネットの話題を独占していたが、このところネットで「Facebook」の文字を見かけない日はないほどだ。実は筆者も昨年の秋に FB にサインアップしたが、そのまま「幽霊会員」となり、つい最近までその名前すら忘れていた。
生来、社交的な部類の人間ではないので、筆者は友達は多くない。だからその昔バブル華やかなりしころ、異業種交流会というのが流行り、夜毎名刺交換を重ね、「人脈作り」にいそしんでいた人種がいたが、「バッカじゃないか」と心底から軽蔑していた。だいたいそんな集まりにやってくる人種にろくな奴はいないし、時間の浪費もいいところだと思ったからだ。
従って本当に仕事上の必要からコンタクトした人々以外の人脈はほとんどなかったが、それでも人並み以上に社内外にネットワークは持っていた方だと思う。そういうこともあって、今でもネット上の「お友達の輪」作りなどしたいと思わないため、ミクシィなんか全く興味がないし、最近は少し下火になった感のある Second Life なども仕事上の必要に迫られない限り覗いたことはない。
そんな筆者(家人からは偏屈者扱いされている)であるから、昨年の9月に一般開放されたとき入会したのは、ほんの「はずみ」でとしかいいようがない。あのときは筆者がこのブログの冒頭部分でも触れている、ブログと RSS の生みの親ともいうべき Dave Winer が Scripting News で FB についてコメントし、その会員になったというのを目にしたのがキッカケだった(と思う・・・多分)。
その後もマイクロソフトのトップたちが会員になって使っているという話題を目にしたときも、全く気にもとめなかった。
しかし、目下真剣に FB デビューを考慮中である。
あくまで筆者の印象だが、FB が今までの SNS と違う大きな特徴は、筆者の嫌いな「異業種交流パーティーでの名刺交換による人脈作り」のようなわざとらしい「出会いの場を求める」ことが目的ではなく、リアルで自然な個人のコミュニケーションを重視していることではないだろうか。
FB とマーク・ザッカーバーグ には、創立間もなかったアップル・コンピュータ社(当時の社名)やマイクロソフト社、そして若き日のスティーブ・ジョブズ や ビル・ゲーツを髣髴とさせるものがあるようだ。そしてFB に対抗してプラットフォームのオープン化で FB 包囲網を築こうとしている Google は、今やあの当時にアップルが創造しつつあったパソコン市場に、アーキテクチャーのオープン化で参入した巨人 IBM とイメージがダブるまでに巨大帝国化した感がある。
日本でFB のような SNS が普通の人が普通に使いこなせるツールとして定着するかどうかはまだ分からない。しかし、団塊の世代である筆者にとっては今までの人生のキャリアパスで出会ったひとたちや、昔の高校や大学時代の友人(それほど多くはないが)たちと旧交を暖めるツールとしてはいいものが出てきたという気がしている。
筆者のパソコンとアドエスのウェブブラウザのデフォルトページ(ブラウザを起動したとき最初に表示される画面)は今は Google だが、ひょっとすると、来年の今頃は FB に変わっているかもしれない。
Google の最大の弱点は「限りある生のなかで、限りない知への欲求に身を委ねる」危うさに通ずるものがあると日ごろ感じているが、かなり限定された数の生身の個人同志がプライベートなコアネットワークを幾重にも紡ぐことによって、コミュニケーションの世界を根本から変えていこうとしている FB の斬新さと志の高さには好感が持てる。
FB の目指しているものは今のメディアが目指しているものとは対極のものだと思う。とりわけ、今や一部の巨大メディアは「棺桶に片足を突っ込んだような」年老いたボスの情報操作によって、日本の政治を機能不全一歩手前までミスリードするほど堕落してしまった。こうした旧態依然たるマスメディアへのアンチテーゼとしては、FB の起こそうとしている革命はとても貴重で価値ある存在となりうると思う。その意味では FB は味方も多いが敵も多くなるだろうから、多難な前途を予感させる。
ザッカーバーグ は先日の「Facebook Ads」の発表で高らかに宣言した。
「100年に一度、メディアが変わります。この100年はマスメディアでした。広告といえば、マスメディアを使ってコンテンツを押しつけること。過ぎ去った100年がそうでした。次の100年、情報は人に押し付けるものではなく、みんなが持っている無数のコネクションの中で共有するものになります。広告は変わります。みなさんはこのコネクションに入っていかなければなりません」
<以上TechCrunch Japanese ライブブログ: Facebook広告についての発表(ソーシャル広告+Beacon+Insight)より引用>
何はともあれ、「Facebook をめぐる冒険物語」は始まり、冒頭の「ツカミ」の部分だけでもハラハラ・ドキドキ・ワクワクの連続で波乱万丈、当分の間はFacebookから目が離せそうにない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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細かいことですが。
> 筆者注:Google が他社の後追いで何かするのは多分これが始めてだろう
そんなことないですよ。そもそもAdwordsがOvertureのシステムのパクリです。これは訴訟になって和解金払っています。Googleドキュメントにしたって、Zohoの方が先行しています。