最終更新時刻:2009年1月9日(金) 21時09分

-

パソコンの歴史を作った2人のノスタルジックな競演

公開日時:
2007/06/05 01:28
著者:
earlybird

先週アメリカのカリフォルニア州カールスバッドで開催されたハイテク企業幹部会議「D:オール・シングズ・デジタル」(ウォール・ストリート・ジャーナル主催)の最大の呼び物はスティーブ・ジョブズとビル・ゲーツが揃って公開のインタビューに応じたイベントだった。

インタビューの詳しい内容は英文ならWSJサイトのここで見れるので、興味のある方はご参照いただきたい。(映像もそれぞれきりのいいところで分割されて適宜アップされているので、併せてご覧あれ)

個人的な感想としては、もうただただ懐かしいの一言に尽きるものだった。(実際は結構2人とも今後のテクノロジーの方向など将来についてもコメントしていたが、ほとんど印象に残っていないのは、それほど突飛なことは言っていなかったせいかもしれない)

この2人はともすると長いこと対立反目しあってきた面に脚光があてられてきたが、本当に対立し険悪になったのはマイクロソフトがマックのユーザーインターフェースを真似た初期のWindowsをリリースした時期くらいだったというのが事実に近いのではあるまいか。(マイクロソフトのOSを搭載した PC が次第に勢力を増していく80年代後半から90年代半ばまでの約10年はジョブズはアップル社を追われていたので、対立しようにもできなかったという事情も手伝っているが)

むしろ今回浮き彫りになったのは、Apple II の「浮動小数点 Basic」やマッキントッシュの「エクセル」(マイクロソフトにとっては最初のアプリケーションソフト)など画期的な初期のアップル製品誕生に際しては、キーとなる重要なソフトウェアはマイクロソフト社が提供しており、両者は極めて緊密に協力しあってきた古い戦友のような関係だったことだ。

筆者個人のテイストとしては、スティーブ・ジョブズの波乱に富んだ人生とシンプルで洗練されたデザインと設計思想を体現しているアップル製品により魅力を感じるが、ソフトウェア産業を今日のような巨大産業に導いたビル・ゲーツの功績やその先見の明は素直に認めたいと思う。何故なら、彼らがビジネスを始めた30年前にはパソコンが今日のような巨大産業に発展するなどとはほとんどの人間は想像だにしなかったからである。

筆者が最初にパソコン(Apple II)に出会った頃(70年代末)の日本のエレクトロニクス業界はホーム VTR の全盛期で、パソコンはごく一部のホビイストの高価な玩具(オモチャ)でしかなかったし、ましてやその後20年を待たずしてそのパソコンが VTR にとって代わる主役になろだろうなどと予想する人間はその当時はほとんどいなかった。なにしろ90年代の前半になってからですら、やがて半数以上の家庭にパソコンが普及するなどとは思われていなかったのだから。(一般家庭にパソコンが認知され普及していくのはインターネットが爆発的に普及する95年以降になってからのことだ)

2人のインタビューで一番受けたのは意外にもビル・ゲーツの開口一番の次の言葉だったのではあるまいか。

「まず最初にはっきりしておきたいんだけど、僕はニセ・スティーブ・ジョブズじゃないよ」(Well,first,I want to clarify:I'm not Fake Steve Jobs.)

「Fake Steve Jobs」は目下その著者が誰なのかを巡って様々な憶測が飛び交っている超人気ブログ「The Secret Diary of Steve Jobs」の著者のことで、ビル・ゲーツはその著者ではないよといいながら、言外に「俺はスティーブ・ジョブズの真似をしてきたのではないよ・・・」というメッセージを冗談めかしていったものであろう。でもこのビル・ゲーツの開口一番のジョークはよかった。これで一挙に場が和んで、その後の話題が弾んだような気がする。

それ以外に印象的だったことは2人が昔の話を本当に楽しそうにしていたことだ。
確かに30年前のパソコン創世記の頃は、単なるユーザーに過ぎなかった筆者ですら、毎日が新しい発見と驚きの連続だったのだから、それを生み出す側の面白さはいかほどばかりだったことだろうか。

ジョブズ曰く、
「我々2人はこの惑星で一番幸運な奴(the luckiest guys on the planet)だ。何故なら好きなことを見つけ、正しい時に正しい場所に居合わせることができたし、30年間毎日超優秀な人々と働き、好きな仕事に打ち込めた。 ?中略? これ以上何を望むというんだ?・・・」

「本当に幸せな人生の定義は何か?」と問われたら、このジョブズの答えは核心を突いていると思う。最近の日本の若い起業家たちの参考になるかどうかは疑問だが。

今回のこのイベントが2人にとって長い物語のエピローグ(終章)なのか、はたまた新たな物語の序章なのかはまだ分からないが、2人とも IT を取り巻く現在のダイナミックな状況を「超健全」だという現状認識では一致しているので、活躍の場は違うにせよ、まだまだ活躍してくれることを期待したい。なにしろ、この浮き沈みの激しい業界を30年間にもわたってリードしてきたのだから。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

2

朝之丞さん、早速のコメントありがとうございます。
Apple IIc からフロッピーディスク(5インチ)が本体内蔵になったんですね、思い出しました。それにしても、ボディーの色も全然クスんでいないようですし、まだ動くとは凄い。このままきちんとメンテナンスしているとやがて「ビンテージパソコン」としてコレクターズアイテムになるかもしれませんよ(笑い)。私のApple II J Plus は物置でホコリをかぶっています。(いつかまだ動くかどうか試してみたいと思いつつ今日に至っています)
今後もアップル製品のTry and Tested 期待してます。

  earlybird on 2007/06/05

1

earlybirdさん、こんにちわ。
私自身も投稿しようかと考えていたお題でした。何故ならば、この世紀の競演(と言っても過言ではない)にしては、日経新聞の取り上げ方が寂しかったので...
>筆者が最初にパソコン(Apple II)に出会った頃(70年代末)
おおっ、是非拙稿の「Apple IIc 19840424」
http://rblog-tech.japan.cnet.com/tomono10/2007/05/apple_iic_19840.html
のご感想をお願い申し上げます。(売り込み済みません)
以上、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

  朝之丞 on 2007/06/05

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。