■はじめに
相変わらずGoogle (グーグル)の YouTube(ユーチューブ)買収はあちこちでセンセーショナルに取り上げられている。
もう10年以上前になると思うが、一時「複雑系」の話題がいろいろなところで取りあげられたことがあった。そのなかでも「バタフライ効果」という説があり、最も有名な例え話として「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」というのがあった。
たしかにこれからの我々の生活を考えると、今回の買収は「北京の蝶」のような地味な発端どころか、「ニューヨークの嵐」をも凌ぐ、「カリフォルニアの巨大地震 + ツウィスター(映画にもなった巨大竜巻)」級のド派手な出来事なので、感じたままを記しておきたい。
■訴訟リスクへの恐怖心より、抗えなかった「挑戦するDNA」
GoogleのYouTube買収は、後年メディアと知識社会を大きく変えた歴史的な出来事として語り継がれていくことになるだろうと思う。
確かにGoogleは買収により、大きな訴訟リスクを抱え込むことになったが、多分それは織り込み済みで、それ以上に内部に巨大なニーズと挑戦的な技術目標を取り込んだことのほうが大きいと考えているのではないだろうか。例えば、タグ情報なしで膨大な動画や音声データの中から必要なデータを抽出する究極のデータマイニング技術だ。この挑戦的な課題ひとつをクリアするだけでも、時代遅れの著作権をたてに言いがかりをつけてくる「セコくて、薄汚い」連中から逆に収益のピンハネすらできるからである。
■Linuxサーバーが全世界に45万台!?
何のことかというと、Googleが保有しているサーバーの台数なのだそうだ。10月18日の日経の朝刊に載っていたので、根も葉もないホラ話ではないと思うが、一度にそんなに多くのコンピュータを動かして、発生する熱はどうやって回収して処理(あるいは再利用)しているのだろう?・・・などと貧乏臭い心配をしてしまうほど、呆れるほどスケールの大きい話ではある。
それから、この前の日曜日(10月15日)のTBSの朝番にGoogleの日本支社長が登場して、なぜこれほどまでに急成長してきたかの謎解きをしてみせていた。(皮肉にも、この番組のスポンサーがマイクロソフトだったのが可笑しかったが)
Googleの社員が、他の企業では考えられないほどの行動の自由度と意思決定の権限を与えられているのは有名な話だが、社員はいわゆるサラリーマンなどではなく、とびきり優秀な「技術者や起業家」なのだ。そう考えれば、Googleにとって今回のYouTube買収はとびきり優秀な社員たちを会社ごと雇っただけの話で、それほど特別な話ではないとさえ思えてくる。
■歴史の教訓に沿ったGoogleの行動
45万台のサーバーで思い出すのは、今を去ること約35年前(?)、無敵だった巨人IBMが「FS(Future System) 」という、当時としては考えられないような巨大なメモリー容量をもつデバイス(ハードディスクあるいはフラッシュメモリーのようなものか?)を使って、全く新しいアーキテクチャーのコンピュータハードとソフトウェア環境を構築しようという大風呂敷をぶち上げたことがあった。これを真に受けた日本政府と情報産業の関係者たちはそのためには半導体のメモリー(DRAM)が不可欠になると先読みし、官民一体のプロジェクトを立ち上げ、やがてこれが日本の半導体産業を大きく成長させることになったそうだ。いわば、勘違い(思い込み?)と恐怖心が結果的に日本の半導体産業を大きく育てることになったわけである。(たしか、日本の半導体の父とも云われる菊池誠博士がその著書でそのようなことを書いていたように記憶している)
しかし、その当時そのメモリーのユーザーになるはずの某コンピュータメーカー(仮にF社としておく)のトップですら懐疑的で、そんなにふんだんにメモリーが必要な時代がくるとは思えないといっていたのを懐かしく思い出す。そのトップがまだご存命でこの45万台のサーバーの話を聞いたら何とおっしゃるのだろうか?
時代の最先端あるいは最前線の当事者が、必ずしも将来を見抜けるとは限らない、というのは古今東西よくある話だ。しかし、この話の本当の教訓は、勘違いや思い込みであるかどうかを問わず、与えられた挑戦的な課題にレスポンスすれば、応分以上の成果の分け前を手にすることができるということなのだ。そして、時代は最もラジカルに発想し、それをシンプルかつ愚直に実現しようとするものに味方するようである。その意味で、Googleの今回の行動は歴史の教訓にも沿っているように思う。
■転換の年となった1998年
今にして思うと、グーグルが産声を上げた1998年は 大きな転換の年だったような気がする。マイクロソフトはWindows95の後継OSであるWindows98をリリースし、相変わらず時代の流れに抗してOSを「宇宙の中心」に据え置くべく画策していたが、サーバー分野ではLinuxによるチープ革命が深く静かに侵攻し始めていた。革新的なグーグルのビジネスを支えるハードのインフラはLinuxサーバーの存在なくしては語れない。
同じ年の暮れにポータブルMP3プレーヤー「Rio PMP300」がダイヤモンドマルチメディア社から発売された。これが3年後アップルのiPodに結びつき、やがては20年以上続いたソニーのウォークマンを駆逐し、低迷していた音楽業界に巨大な旋風を巻き起こすようになる。すなわち、音楽のダウンロード販売という流通革命やポッドキャスティングという新しいダウンロード型のメディア&コンテンツを普及させ、ついには動画までダウンロード販売するようになる。チープなLinuxサーバーによるインターネットでのコンテンツのストリーミング(またはダウンロード)という、今日の情報とコンテンツのディストリビューション革命のルーツは1998年に起こった。
■今後予想される動向 〜総論〜
以下に極私的な今後の予想を列挙しておきたい。
折にふれて、その根拠や歴史的背景を記す機会があると思うので、今回は思いつくままを記しておくのみに止めておく。
(1)全く別な明日がやってくる。
GoogleのYouTube買収の衝撃は世界のメディアやIT関連企業を揺さぶる。これらの業界にいるトップの信認が厚いスタッフで、トップから従来の戦略を大幅に見直すように指示されなかったら、その会社にはさっさと見切りをつけて転職した方がいい。
(2)避けられないインターネットシフト
インターネットでのストリーミングもしくはダウンロードによる動画コンテンツのボーダーレス流通革命がかつてないスピードで進展し、放送からインターネットへのシフトが急速に進む。
これについては別な機会に詳しく述べたい。
(3)著作権に関する大幅な見直しが起きる。
明らかに現在の著作権は権利者側に手厚すぎる。権利者側が膨大な流通経費を負担していた時代ならいざしらず、その名残りでしかない既得権までをこれまでと同様に権利者側に認めるのはやり過ぎだ。
それにスポンサー付きで放映したチープなドラマやバラエティ番組(お金をもらっても、観るだけ時間の浪費なのでごめんこうむりたいような内容のものが多い)が著作権を主張するなどは文化に対する冒涜も甚だしい。
■今後予想される動向 〜おまけ〜
(4)地デジは第2の「ISDN」になる。
あのルパート・マードックが衛星放送の将来に見切りをつけて、インターネットにシフトしようとしているそうだ。さすがは「メディア王」といわれるだけあって、先見の明がある。政府や業界関係者にその能力の一部でもいいから分けてやってほしいものだ。
もっとも総務省(むかしの郵政省)やNTTトップたちの技術オンチぶりはいまに始まったことではない。インターネットがここまで高速化されることはとっくの昔から分っていながら、なぜ巨額の投資を国民にまで強いて「地デジ」などという時代遅れの通信インフラ作りに邁進するのか、全く理解に苦しむ。
しかもこの地デジたるやデジタルにいったんエンコードするため、アナログのように即時には信号を送れず、数秒のタイムラグが生じてしまうそうな。これでは一刻一秒を争う地震警報には使えないので、非常用のアナログ放送局を残しておくことが検討されているとの噂話を聞いた。ことの真偽は不明だが、もし本当なら笑い話では済まされない。
女子アナも「デジアナ」になることなど考えずに、せっせと気前よく貢いでくれる「青年実業家」を捕まえて、玉の輿にのることを考えた方がいい。
(5)放送はインターネットに呑み込まれる。
放送とインターネットの融合など起こらない。インターネットが放送を呑み込み、放送は死に絶える。
放送だけでなく、巧みに世論を操作し、国民の「低脳化」に寄与してきたマスコミ全体もいずれ崩壊し、生まれ変わらざるをえないだろう。細木数子先生はテレビなどなくても、内容のない割には高い本の印税で「左うちわ」の暮らしができるだろうが、毎日バカ笑いと嬌声を日本中にまき散らしているお笑い芸人やアイドル、それにバラエティで稼いでいるタレントたちはテレビ局に代わる次の営業先を考えておいた方がいい。
(6)次世代DVDはフロッピーディスクやMDと同じ運命をたどる。
次世代DVDフォーマット競争は不毛の争いだ。10年前に起こったことを思い出してほしい。ハードディスクの容量が増し、インターネットがキロバイト級のデータを細々ではあるが送れるようになってからは、フロッピーディスクやMDは無用の長物化した。
今脚光を浴びている次世代DVDも、そのパフォーマンスは10年前のネットワークとハード環境におけるフロッピーディスクやMDの存在に似ている。要は中途半端な存在なのである。
DVDがテラバイト級のストレージ能力を備えたバックアップメディアとして利用できるようにでもなれば、存在価値は認めてもらえるだろうが、もはや数10ギガバイト程度の「お皿」でいちいち別個に映画など保存しておく意味はほとんどない。フォーマット競争は多分ブルーレイ陣営が勝利を収めるだろうが、得るものはほとんどないだろう。最後には、戦争終結のイメージを早く固めてドライに行動した会社が生き延びる。
(7)マイクロソフトのWindows Vistaは時代遅れの産物と化す。
もはや新しいOSをありがたがって、金を払ってまでベータテスターのようにRC(Release Candidate ; 正式リリース前のテストバージョン)もどきのOSをいじり回して喜んでいる人種は「縁なき衆生」であり、救いようがない。時代は遥か先に進んでしまったのだ。
マイクロソフトの社員たちにはいい加減もうこれ以上悪あがきは止めて、ビル・ゲーツを見習って自分自信の人生を反省し、もっと有意義な人生を送れといいたい。
話は少々脱線してしまった感があるが、ことほどさように今回の買収のインパクトは大きいということだ。とにかく面白すぎる時代になったことだけは間違いない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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