少し前になりますが、英国では2009年にもネット広告がテレビ広告を抜くという報道がありました。日本からすれば驚くばかりですが、欧米と日本のメディア利用にはそれほどの違いがあります。いくつか、気がついた点を挙げてみましょう。
まず、メディアのそもそもの誕生について触れておきます。メディアはもともと紙媒体から生まれました。テキスト情報を載せた「紙」である新聞や雑誌は古くからありますが、物理的に配ったり届ける必要がありました。そこに音を「電波」で運ぶ手段が生まれラジオが始まり、やがて動画も送れるようになってテレビの登場となりました。
あれだけの情報やエンターテイメントが一気に茶の間で楽しめるようになった影響は大きく、その後はTVを中心とした4マスの時代が長い間続きました。私が電通にいた頃は、「これから先そんなに大きく変わらないだろうな」という感じを持っていたのですが、今はデジタルテクノロジーによるインターネットの出現やPC、モバイル、ゲーム機といったデバイスが進化してきて、これは根底から変わってしまうかなという感じがします。
さて、米国ではもうテレビが相当衰退しているようですが、テレビが大好きな日本ではそれほどすぐには衰退しないのかなと思います。日本と米国との違いの1つは、ケーブルの普及です。米国ではケーブルTVが普及したので、チャネルが一気に増えていきました。日本だと各地域に民放は最大5局しかないのですが、米国では選択肢が広がって、100チャンネルを超えます。
また米国ではネットワーク局がコンテンツを作ってはいけないというルールがあったので、大抵はハリウッドの制作スタジオなどが作っています。それをネットワークやケーブル局に提供している構造なので、それほど放送ネットワーク自体がコンテンツに対して強い訳ではありません。一方、日本では、放送局に制作が許されていたせいで、コンテンツ制作における強みもあり、後発のBS、CSも含めてケーブルは、米国ほど浸透していないようです。
それから米国にはいろいろな人種や価値観、貧富の差がありますから、メディアへの接触に関しても多様性が出てきます。特に最近は若い層がテレビを見なくなって、パソコンでいろいろな情報を得るようになってきています。その結果、米国だと「若年層にリーチするためにはネットかゲームを使わなきゃならない」、というのが当たり前になっています。日本でも少しそういう兆しが出始めていますが、まだ、米国ほどではないようです。
あと、日米を比べて面白いのが新聞です。日本のように1000万部を超えるような新聞は世界中見てもありません。米国最大でもUSAトゥデイで 200数十万部、その他はニューヨークタイムズ、ワシントンポストだって、ほとんど地域の新聞です。日本では何がそれを支えたかというと、宅配システムだと思います。宅配システムがこれまでの成長を支え、現在の危機も支えているように思いますが、これから先は変わらざるを得ないでしょうね。
興味深いことに雑誌は逆なのです。米国は年間で購読契約することが多いので、テレビガイドとか、ナショナルジオグラフィックなんて1000万部を超えています。日本は逆にお金を出してその都度、駅の売店や本屋で買うメディアなので、100万部を超える雑誌なんてほとんどないですよね。20〜50万部ぐらいの雑誌、要はターゲットがかなりセグメントされて、ライフスタイルに拠ったメディアとして成長しているので、その辺もちょっと違います。
でも一番違うのは、ラジオだったりします。向こうではラジオがいまだに一定の強さを持っているのですが、それは通勤、通学などの主な移動手段が車なので、必ずそこでラジオに接触するタイミングがあるからです。日本は電車主体なので、その隙間時間に登場したのが携帯電話です。新しいメディアとサービスですが、他にすることがない時間が朝晩に1時間ずつあったために、他のメディアと競合することなく一気に普及したような状況です。そういったライフスタイルの違いが、日本と欧米のメディア利用状況の違いとして現れているのでしょう。
一般的に欧米の方が選択肢は多く、人々はそれを積極的に使い分けています。日本人はもともと情報も含め、すべてに対して受け身的だということもあるように思います。ただ、生まれた時から、あるいは、情報のやり取りを始める十代にデジタルメディアで育った世代は、これまでとは全く違うメディア接触や活用パターンになってくると思います。
ちなみに欧米では、伝統的なマスメディアも、もうオンラインに本格的に出始めています。その辺の進み方やスピード感も日本とは違いますね。やっぱり米国だと、コンテンツは実はハリウッドが持っているから、ネットワーク経由で出そうが、ケーブル経由で出そうが、DVDで出そうがなんでもいいよというところがあります。見る側もコンテンツを大画面やPC、モバイルデバイスなどで見たいだけで、その経路が電波なのか、衛星経由なのか、ネットなのかはどうでもいい、ということになります。
日本はまだ辛抱できる間は地上波中心でということでしょうか。いずれ日本もどこかのタイミングで本格的にオンラインにシフトすることになるでしょう。
技術やデバイスの進歩によって、人々の行動と情報摂取方法が大きく変わってきています。今までほとんどの情報は屋根の下で受け身的にしか楽しめなかったのですが、モバイルデバイスを利用すると場所を選ぶ必要がなくなってきて、情報摂取のパターンも変わりました。これにより、情報の送り手から受け手までのプロセスも様変わりし、結果的に広告を見てもらえるタッチポイントが大きく変化してきます。送り手から受け手という捉え方自体も違うのかな、と。インターネットは、ブロードバンドによって、テキストからリッチな画像、動画まで4マスの要素をすべて備えた感がします。そこに、「いつでも」、「どこでも」、「いくらでも」、そして「インタラクティブ」という使い勝手が加わっています。また、個人や企業など「誰でも」メディアの時代にもしてくれました。
こういった変化やネット文化の成熟を背景に、MSNも次世代ポータルに向けて、ホームページを始め、全体を大きくリニューアルしました。新しいデジタル技術を活用した使い勝手の良さ、情報の集約、リッチメディアやビデオなどの積極的な活用で、より使いやすく視認性のいいメディアになっています。また、同時に、ユーザーの声を反映したメディアづくりも進めています。
メディアが変わってくると、広告コミュニケーションも同様に変わってきます。その辺のお話は次回にとっておきます。
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