最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

88

日米欧にみるメディア利用特性の差

公開日時:
2008/05/13 12:01
著者:
福徳俊弘

 少し前になりますが、英国では2009年にもネット広告がテレビ広告を抜くという報道がありました。日本からすれば驚くばかりですが、欧米と日本のメディア利用にはそれほどの違いがあります。いくつか、気がついた点を挙げてみましょう。

 まず、メディアのそもそもの誕生について触れておきます。メディアはもともと紙媒体から生まれました。テキスト情報を載せた「紙」である新聞や雑誌は古くからありますが、物理的に配ったり届ける必要がありました。そこに音を「電波」で運ぶ手段が生まれラジオが始まり、やがて動画も送れるようになってテレビの登場となりました。

 あれだけの情報やエンターテイメントが一気に茶の間で楽しめるようになった影響は大きく、その後はTVを中心とした4マスの時代が長い間続きました。私が電通にいた頃は、「これから先そんなに大きく変わらないだろうな」という感じを持っていたのですが、今はデジタルテクノロジーによるインターネットの出現やPC、モバイル、ゲーム機といったデバイスが進化してきて、これは根底から変わってしまうかなという感じがします。

さて、米国ではもうテレビが相当衰退しているようですが、テレビが大好きな日本ではそれほどすぐには衰退しないのかなと思います。日本と米国との違いの1つは、ケーブルの普及です。米国ではケーブルTVが普及したので、チャネルが一気に増えていきました。日本だと各地域に民放は最大5局しかないのですが、米国では選択肢が広がって、100チャンネルを超えます。

 また米国ではネットワーク局がコンテンツを作ってはいけないというルールがあったので、大抵はハリウッドの制作スタジオなどが作っています。それをネットワークやケーブル局に提供している構造なので、それほど放送ネットワーク自体がコンテンツに対して強い訳ではありません。一方、日本では、放送局に制作が許されていたせいで、コンテンツ制作における強みもあり、後発のBS、CSも含めてケーブルは、米国ほど浸透していないようです。

 それから米国にはいろいろな人種や価値観、貧富の差がありますから、メディアへの接触に関しても多様性が出てきます。特に最近は若い層がテレビを見なくなって、パソコンでいろいろな情報を得るようになってきています。その結果、米国だと「若年層にリーチするためにはネットかゲームを使わなきゃならない」、というのが当たり前になっています。日本でも少しそういう兆しが出始めていますが、まだ、米国ほどではないようです。

 あと、日米を比べて面白いのが新聞です。日本のように1000万部を超えるような新聞は世界中見てもありません。米国最大でもUSAトゥデイで 200数十万部、その他はニューヨークタイムズ、ワシントンポストだって、ほとんど地域の新聞です。日本では何がそれを支えたかというと、宅配システムだと思います。宅配システムがこれまでの成長を支え、現在の危機も支えているように思いますが、これから先は変わらざるを得ないでしょうね。

 興味深いことに雑誌は逆なのです。米国は年間で購読契約することが多いので、テレビガイドとか、ナショナルジオグラフィックなんて1000万部を超えています。日本は逆にお金を出してその都度、駅の売店や本屋で買うメディアなので、100万部を超える雑誌なんてほとんどないですよね。20〜50万部ぐらいの雑誌、要はターゲットがかなりセグメントされて、ライフスタイルに拠ったメディアとして成長しているので、その辺もちょっと違います。

 でも一番違うのは、ラジオだったりします。向こうではラジオがいまだに一定の強さを持っているのですが、それは通勤、通学などの主な移動手段が車なので、必ずそこでラジオに接触するタイミングがあるからです。日本は電車主体なので、その隙間時間に登場したのが携帯電話です。新しいメディアとサービスですが、他にすることがない時間が朝晩に1時間ずつあったために、他のメディアと競合することなく一気に普及したような状況です。そういったライフスタイルの違いが、日本と欧米のメディア利用状況の違いとして現れているのでしょう。

一般的に欧米の方が選択肢は多く、人々はそれを積極的に使い分けています。日本人はもともと情報も含め、すべてに対して受け身的だということもあるように思います。ただ、生まれた時から、あるいは、情報のやり取りを始める十代にデジタルメディアで育った世代は、これまでとは全く違うメディア接触や活用パターンになってくると思います。

ちなみに欧米では、伝統的なマスメディアも、もうオンラインに本格的に出始めています。その辺の進み方やスピード感も日本とは違いますね。やっぱり米国だと、コンテンツは実はハリウッドが持っているから、ネットワーク経由で出そうが、ケーブル経由で出そうが、DVDで出そうがなんでもいいよというところがあります。見る側もコンテンツを大画面やPC、モバイルデバイスなどで見たいだけで、その経路が電波なのか、衛星経由なのか、ネットなのかはどうでもいい、ということになります。

 日本はまだ辛抱できる間は地上波中心でということでしょうか。いずれ日本もどこかのタイミングで本格的にオンラインにシフトすることになるでしょう。

 技術やデバイスの進歩によって、人々の行動と情報摂取方法が大きく変わってきています。今までほとんどの情報は屋根の下で受け身的にしか楽しめなかったのですが、モバイルデバイスを利用すると場所を選ぶ必要がなくなってきて、情報摂取のパターンも変わりました。これにより、情報の送り手から受け手までのプロセスも様変わりし、結果的に広告を見てもらえるタッチポイントが大きく変化してきます。送り手から受け手という捉え方自体も違うのかな、と。インターネットは、ブロードバンドによって、テキストからリッチな画像、動画まで4マスの要素をすべて備えた感がします。そこに、「いつでも」、「どこでも」、「いくらでも」、そして「インタラクティブ」という使い勝手が加わっています。また、個人や企業など「誰でも」メディアの時代にもしてくれました。

こういった変化やネット文化の成熟を背景に、MSNも次世代ポータルに向けて、ホームページを始め、全体を大きくリニューアルしました。新しいデジタル技術を活用した使い勝手の良さ、情報の集約、リッチメディアやビデオなどの積極的な活用で、より使いやすく視認性のいいメディアになっています。また、同時に、ユーザーの声を反映したメディアづくりも進めています。

 メディアが変わってくると、広告コミュニケーションも同様に変わってきます。その辺のお話は次回にとっておきます。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

2008年8月
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

佐々木俊尚 ジャーナリストの視点グーグルはストビューで「よそ者」化する
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点
クロサカタツヤの情報通信インサイト北京オリンピック
クロサカタツヤの情報通信インサイト
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
村上敬亮 情報産業の未来図コンテンツ市場14兆円の中身と行方
村上敬亮 情報産業の未来図
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」場所・空間を増幅!?「ロケーション・アンプ」
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

なにわのITベンチャー社長BlogWEB2.0 じゃなくって PC0.5
なにわのITベンチャー社長Blog
インターネットの裏側を探しましょtaspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
インターネットの裏側を探しましょ
電子政府パブリックコメントの抜粋できるだけ検索せずに情報を集める(試してみます)
電子政府パブリックコメントの抜粋
木田わをんのパソコン武士道@Tovas for AppExchangeのセットアップを30分で完了
木田わをんのパソコン武士道
夢幻∞大のドリーミングメディア夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
夢幻∞大のドリーミングメディア
ネットのニュース.logMacBook touchは、登場するのか?
ネットのニュース.log

企画特集

仮想化環境で求められるストレージの要件仮想化環境で求められるストレージの要件
それに応えるNetAppの実力とは?
DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

たばこによる経済効果よりも関連の損失額の方が何倍も大きいという試算があり......
taspoの必要性とタバコ屋でのコミュニケーション
投稿者:PowerYOGA
こういうのいいですね!ちなみにCNETブログのシステムは全然進化しないですね......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:尊仁
櫻吉さん、いつもお世話になっています。アクセス順に並んでくれるとありがた......
夢幻∞大のエントリーアクセスランキング(8/29編)
投稿者:mugendai
「アダムとイブが楽園を追放されたのは、神様の言いつけを破って禁断の実を食......
毎日新聞社内で何が起きているのか(下)
投稿者:keijizyou
きむこうさん、コメントありがとうございました。 > 「お客さんが絶対必要......
新しい開発手法:初期にユーザインターフェースを完璧に作れば、最高の要件定義になる 2
投稿者:生島勘富

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
今週の新製品総チェック:ノート、デスクトップ、UMPCまでPC秋モデルが続々
富士通、NEC、東芝などのPCメーカーから続々と新製品が登場した。ノートPC、デスクトップPCに加え、注目の
今週の新製品総チェック:薄さ13.9mmのサイバーショット登場!NEC「LaVie」はデザインモデルが
最薄部13.9mmのソニー「サイバーショット」、ニコンのGPS内蔵デジカメ「COOLPIX」など、機能性、デザイン性