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    CNET Japan ブログ

    Blogは究極の知的生産の道具

    2004-05-21 09:11:20

    プロフィール

    umeda

    シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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    「知的生産の道具」と聞けば大抵のものは試してみるということを続けて、かれこれもう30年近くなる。スクラップブック、京大型カードから始まって、ハイパーカードを使うためにマックを買ったり、アウトラインプロセッサを試したり、ブラウザの出始めのときはその上手な活用法を考えたり・・・。新聞や雑誌から切り抜いた資料のスクラップには、大量のクリアファイルを使った時期もあった。日ごろ使うノートや手帳やメモ用紙やポストイットなども、それぞれ何十種類も試した結果、自分の好みを定め、現在に至っている。

    そんな試行錯誤の末、最近は、Blogツールこそが自分にとっての究極の「知的生産の道具」かもしれない、と感じ始めている。こんなことは当たり前の話かなと思ってGoogleでちょっと調べてみたが、Blogを「知的生産の道具」としてとらえるという話は、そんなにたくさんは書かれていないようなので、ちょっと試しに書いてみる。これまでのところ、BloggerとMTと「はてな」を試したが、どれも「知的生産の道具」としてはGood Enoughである。

    (1)時系列にカジュアルに記載でき容量に事実上限界がないこと、(2)キーワード検索ができること、(3)手ぶらで動いていても(自分のPCを持ち歩かなくとも)、インターネットへのアクセスさえあれば情報にたどりつけること。(4)他者とその内容をシェアするのが容易であること。

    当たり前のことの組み合わせなのではあるが、この4つのシンプルな効用の組み合わせが有難い。

    さまざまな「知的生産の道具」と長いこと格闘してきた結果、(a)道具はシンプルなのがいい、(b)「道具に対しては過度の期待をするのではなく、その道具の特徴を理解してこちらからうまく歩み寄り、道具と自分が互いに短所を補いあうようにしながら、一体になってしっくりとやっていけるかどうか」が重要だ、と考えるようになった。別々の道具には別々の歩み寄り方があるのだが、Blogツールに至るまで、なかなか「これだ」と思うほどしっくりいくものがなかった。

    Blogツールを使いこなすポイント

    では、Blogツールを「知的生産の道具」として使う場合の、僕のほうからの「歩み寄り方」とは何か。それは、

    (1) 対象となる情報源がネット上のものである場合は、リンクを張っておくだけでなく、できるだけ出典も転記し、最も重要な部分だけはカット&ペーストしてしまうことである。(情報源へのリンクはいつ切れるかわからないから)

    (2) 対象となる情報源がネット上のものでない場合(デジタル化されていない本や雑誌の場合)は、出典を転記し、手間は少しかかるが、最も重要な部分は、写経するように筆写してしまうことである。

    この(1)(2)の「歩み寄り方」をした上でBlogツールと付き合うと、これは僕にとっての限りなく理想に近い「知的生産の道具」になった。

    実は、(1)については、この連載で毎日やっていることである。重要な箇所は「引用」という形でこちら側に転写してしまうから、原本へのリンクが消えてしまっていても、後でそれほど困らない。その部分を引用してきちんとした本でも書こうと思うことが万一あるならば、そのときに出典や、正確な前後関係を再び調べればよいが、それ以外の場合はこれで事足りる。

    現に、この連載のアーカイブは、クライアントとのブレーンストーミング・ミーティングなどで、僕がPCもノートも何も持っていなくても、「ああその話だったら、参考になるXXXの見解を引用して紹介した記憶があるから、CNETのアーカイブに行って、XXXというキーワードで検索して、ああそれそれ」という具合に日々活用している。「ここをクリックすれば、YYYの論文にもたどりつけるから、ちょっと一緒に見てみよう」なんていうふうに。

    たまに友達に頼まれて日本の大学で授業をすることがあるが、あまり準備していかなくても、ネットにつながっているPCが教室にあって、それがプロジェクタにつながってさえいれば、学生からの質問に対して、個人サイトのアーカイブと、CNETのアーカイブと、プライベートの「はてなダイアリー」のアーカイブを外部記憶装置として使えば、衰え気味の記憶力を補ってなお余りある。

    文章を筆写することの効用

    さて、問題は(2)の「筆写」である。ほとんどの人がこんなことはしないと思うが、実は僕は「筆写」信奉者なのである。筆写はいいですよ、本当に。書き写すべき文章を選び、その文章を丁寧に「書き写す」という行為は、心が鎮まり、書いた人に近づいていける唯一の方法ではないか、と思うほどである。本を1冊読むとき、気になった箇所があるページには、その右上端に小さな折り目を入れながら読んでいく。1冊読み終わった後、折り目の入ったページだけをもう1回読み直す。そしてしばらく日にちを置く。それでも気にかかる部分は、「はてなダイアリー」に筆写してしまう(昔はそれ用のノートはどんなものがいいかとずいぶんたくさん試したが、結局は「はてなダイアリー」が今のところいちばんいい)。もちろん筆写するのは手間がかかる。でも、だからいいのだ。筆写すると、読んだときにはわからなかったことがわかったり、頭への入っていき方が違う。

    たとえば、僕はメジャーリーグ観戦が大好きで、あるとき「野球術」(原題「Men at Work」)という本に深く感銘を受け、以来、何度も再読している。それで今年の正月に作ったノートはこれである。これで、たとえば旅先などどんな場所にいても、ふと「野球術」の中身が別の刺激と結びついて何かが閃いたとしても、ネットへのアクセスさえあれば「野球術」のエッセンスをたどることができ、考えることができる。

    何はともあれ、Blogツールは素晴らしい「知的生産の道具」だと思う。

    さて、ある本の一部を、カット&ペーストで持ってくるのではなく、筆写してみる。好きな文章を筆写するのは至福の時間だ。

    「私は原著者であるオハイオ州立大学のジェイ・バーニー教授の下で5年間の博士課程を過ごし、1999年に経営学の博士号を取得した。その間ゼミナールや有力研究者による私的勉強会、学会におけるコンソーシアム(大学横断的な研究者会合)を含め、さまざまな場面で戦略理論家としてのバーニーから教えを受け、時に反駁して意見を戦わせ、研究者としての鍛錬を積んできた。そのような経緯から、同教授がその発展に影響を与えたリソース・ベースト・ビューを根幹とするテキストを日本へ紹介するに際し、私の経験を踏まえていかに血肉の通った翻訳文にするか、という点に真剣な思い入れをもって望んだ。すなわち翻訳にあたっては、同教授とのこれまでの緊密な知的議論を通じて理解した「彼の文章表現の背景にある文脈」を汲み取り、「英語の文章の機械的直訳ではなく、著者が真に意味するところを吟味して一言一句訳出する」ことを原則とした。それゆえ、予想以上に多くの時間がかかってしまった。」

    この文章は、現代経営学の名著として名高いジェイ・B. バーニー著「企業戦略論」(上)(中)(下)を翻訳した岡田正大氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授)が、同書の「訳者まえがき」に寄せた文章の一部である。

    大親友である彼から、3年という長い年月を費やして彼が完成させたこの大著3巻を送ってもらったとき、まず「訳者あとがき」のこの部分を読み、僕は、彼の真摯な人柄が、すべてこの文章に表れていると思った。

    来週はKBSの岡田先生によるゲストブログ

    僕が出張中の来週は、岡田正大氏にゲストブログをお願いし、ご快諾いただきました。ITの話よりは、彼の人生観や企業観、経営戦略論、ビジネススクールや留学、そういう話題が中心となる5日間になるかと思いますが、どうぞお楽しみに。

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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