最終更新時刻:2009年11月24日(火) 22時17分
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著作権保護を無視して乱立する動画共有サービス、その行き着く先は?

公開日時:
2006/07/24 10:55
著者:
桜谷慎一

オトナ?が楽しむ動画共有サービス
先月、多摩美術大学の総合デザイン論で、1年生を中心に約600名を相手に講義をしてきました。
インターネットの出現がデザイン、あるいはクリエイティビティに与えた影響を、ネット上で起こっている様々な事例を元に話をしてきたのですが、時折学生に質問を投げたりしてました。

これだけ話題になっているし、学生なら実際試しているだろうと思って「YouTube知っている人?」と手を挙げさせたら、5人程度という意外な反応。照れくさいから挙げないという学生がいるにしても、5月の日本からのYouTubeの視聴者数が410万人と、USENの無料ネット放送「GyaO」の約380万人を越えていることを考えると、この少なさはどうでしょう。
デモグラフィックとして、若年層よりも「オトナ」が利用していると考えた方が妥当でしょうか。

YouTubeの台頭に便乗して、世界中で動画共有サービスが立ち上げっています。YouTubeは大手ベンチャーキャピタルであるあのSequoia Capitalが出資している一方、アナリストはYouTubeの成功は一時的であり、収益を生むビジネスモデルとしては難しいという見方がされています。

もっとも懸念されるのは、著作権侵害の問題で、テレビ局/映画会社/アニメ制作会社などが日々血眼になって違法な映像を探し出し、せっせと削除依頼のメールをYouTubeに送っている状況なのです。
「これがWeb2.0だ!」という思い込みで、誰も明確な収益モデルを打ち出せないまま、著作権侵害を増長させるサービスを仕掛けているのはちょっとしたITバブルの臭いがしてなりません。

動画データは、HTMLページやFLASHコンテンツと比べても、データサイズが大きく、トラフィックも大きくなり、通常のウェブサイトの運営よりもサーバのハードディスク容量、CPU、メモリ、ネットワーク帯域で多大なリソースが必要となるため、そのコストは相当なものです。
それでも動画共有サービスをするとしたら、単純な広告ビジネスモデル以外の収益構造を確立する必要があります。

なかには、集客のために、動画を投稿したらキックバックがあるというサイトも現れました。
これはどう考えても著作権侵害を加速させてしまうでしょう。

こう考えていくと、インターネット上で違法行為を行っているのは「オトナ」ということになってしまいそうです。

動画共有サービスを”引用”というには無理がある
YouTubeが現行の著作権法に一石を投じるという見方もあるようです。

YouTubeを使ったテレビ番組の『引用』の合法性に関する一考察:中島聡・ネット時代のデジタルライフスタイル
いずれにしろ、法律というものは人々のためにあるものなのだから、それが社会の常識に合わなくなってきた時には法律の方を変えるべきである。

YouTubeのコンテンツを眺めて、それがテレビ番組の引用であり、『個人的体験の共有』を可能にするものであるから、著作権法を変えるべきという意見はあまりに乱暴で、実情を把握していない。

著作権に関して、アメリカでは米国著作権法107条に規定されている「フェアユース」というものがあります。利用の目的や性格、著作物の質、著作物全体との関連において、利用された部分の量および実質性、著作物の潜在的な市場または価値に対する利用の影響の四つの要素から判断されるものです。
日本においては、「フェアユース」とイコールな規定はありませんが、著作権法第2章第3節第5款(30条〜50条)は、個々の条文に該当する特定の場合にのみ自由利用を認めたもので、一般的な自由利用を規定したものではありません。

これらの著作権についての考え方は”社会の常識”と言われるほど、一般的に浸透しておらず、だからこそ個人のブログやSNSなどでありとあらゆる著作物が勝手にデジタル化され、コピーされて使用されるという未曾有の『著作権侵害』がインターネット上で蔓延しているのです。

ただ、著作権保護の名の下に『複製禁止』という措置をとるのは、短期的には致し方がないとしても、この時代に相応しい措置ではないと考えています。
アメリカにしろ日本にしろ、世界中の著作権法は著作者の権利を確実に守るため非常に厳しい規定を定めたものであり、それに従う限りは他人の著作物を利用できる範囲はかなり限定的なものとなります。

著作権法の改定という政治的な問題も絡む変革を気長に待っているのではなく、著作者の承諾を得て第三者の利用範囲を拡げようというワールドワイドな活動が、先日も紹介した『Creative Commons』です。

”引用”の範囲で自由利用を許諾しようというのなら、様々な解決方法を組み合わせる必要があります。
現在の投稿画像は、放送した局名や番組名、著作制作者などのクレジットが一切付帯していないですから、これを”引用”と見なすのは無理があります。

HTMLのタグの BLOCKQUOTE は元々他のページ(あるいは文献)からの引用を示すために用意されたものでした。

引用のもっと優れた技術的解決方法としては、ブログのトラックバックがあります。
ブログは日記作成ツールだという見方が一般化しているのは残念ですが、本来は意見の出所をはっきりさせながら相互引用によってより発展的な議論、批評を促すためのツールとして用意されたものです。元々の発想は、学術論文の最後に列記される参考文献のリストを発展させたものなのです(WorldWideWebも元は同じです。ただ、リンクという一方向のものでした)。

「個人的体験の共有のために引用する」というのなら、わざわざ編集権を侵害した映像を投稿する必要はなく、出所をはっきりさせてそれがオンデマンドで追体験できる仕組みがあればいいだけです。

新しいフレームワークが求められている
実際、イギリス国営放送のBBCは『Creative Future』という構想を2006年4月に打ち出し、放送番組をオンライン分野でどう展開していくか、明確なプランを提示しています。
その中でもっとも画期的なのは、『The Creative Archive Licence』というプロジェクトで、番組として放送したコンテンツをデジタルアーカイブ化し、いくつかの規定の範囲内であれば自由利用を認めるというものです。

Creative Commonsに準拠したThe Creative Archive Licenceのコンテンツなら、引用することは非常に簡単ですし、第三者の権利を侵害することもほとんどないでしょう。
これまで機能してきた著作権法の不備を糾弾するよりも、コンテンツホルダーの企業努力やトラックバックのような新しいテクノロジーでまだまだいくらでも著作権保護(つまりは著作者の利益の保護)ができるはずです。

YouTubeへの一日の投稿数は6万件を越えているようです。
フジテレビ版YouTubeといえる「ワッチミー!TV」では、30人のスタッフが24時間体制で著作権侵害がないかチェックしているようですが、もし本家のYouTube並にサービスが拡大した場合には、チェックするスタッフだけで最低200人いないと運営できないことになります。
どのような事業計画が立案され、承認されたのか、とても興味があります。

動画共有サービスの著作権侵害問題が解決されないまま、ナプスターのようにサービス停止に追い込まれてしまうのは、あまりにもったいないです。
人海戦術ではなく、やはり何かしらの技術革新によって動画共有サービスの著作権侵害問題はクリアさせたいところです。それが何かは、いままさに多くの人が知恵を絞っていることでしょう。

余談ですが、音楽データ配信に関して『Secure Digital Music Initiative(SDMI)』という、全米レコード協会(RIAA)とアメリカ音楽業界最大手の5社が共同で設立した、インターネットを通じて安全に音楽を配布・販売できるフォーマットの確立のためのプロジェクトがあります。
サイトをみるとすでに事実上活動休止状態にあることがわかります。音楽データフォーマットについてはDRM技術(著作権保護技術)含めてまだまだ検討の余地があるはずなのになぜ休止か?
それは、ナプスターを潰すための裁判をする際に、ナプスターによって損害を受けた金額を算定し訴状に明記する必要があったためなのです。SDMIという母体をもとにオフィシャルな音楽配信サービス”pressplay”を慌てて立ち上げ、利用者数と利用金額を定めることによって被害総額を算出し、これによってナプスターの違法性を立証し、被害総額を充当する賠償金を請求することで破産に追い込むことが出来ました。
本来の設立目的を果たしたので、現在は休止状態にあるのです。
そして、音楽配信サービスはアップルのiTunes Music Storeの一人勝ちとなりました。

YouTubeや他の動画共有サービスも同じ轍を踏まないように、早急にデジタルコンテンツの著作権に対する新しいフレームワークを打ち出す必要があるでしょう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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