最終更新時刻:2008年10月7日(火) 8時00分

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[みんなの回答]IT業界進化論: 絶望する前に”SIer 2.0”を目指せ

公開日時:
2007/11/12 08:51
著者:
吉澤準特

kennより:
日本のIT業界は救いようがない。絶望的としか言いようがない。 IT業界不人気なんて、この業界に重くのしかかる決して晴れることのない暗雲の氷山の一角に過ぎない。はてなの匿名ダイアリーにも[続きを読む]

CNET japanブログで江島さんが「ニッポンIT業界絶望論」という過激なタイトルで興味深いエントリーを書いています。

出だしでバッサリと「日本のIT業界は救いようがない。絶望的としか言いようがない 」と切り捨てており、その後はSIerが本業としている受託開発の将来性の無さを率直に訴えかけ、「受託開発の世界にはエキサイティングな革命の歴史とは無縁である」と述べてます。

しかしながら、正直、私は同意できません。
むしろ、私の答えはこうです。

 「日本のIT業界はもっとエキサイティングになれる!」

 

江島さんの話をざっくり要約すると次の通りです。

  • IT業界(SIer)は受託開発がメイン
  • 受託開発にはイノベーション&エキサイティングがない
  • 低い生産性の死に体企業の延命を国策でやっている
  • 市場メカニズムを働かせるため、受託開発会社から逃げろ

これだけ読むと正しい気がします。確かに部分的には私も同じ考えを持っており、今のIT業界はレベルが低いと感じています。しかし、「受託開発にはエキサイティングがない」、「受託開発会社から逃げろ」という部分にはちょっと疑問を抱かざるを得ません。

受託開発に対して江島さんがイノベーションやエキサイティングを感じられないのは、顧客の業務課題をヒアリングしてシステムに落とし込むことで解決するいうアプローチが全てだと考えている点に起因するように私は理解しましたが、それは本当に正しいのでしょうか?

 

前回のエントリー「IT業界人は自分のドッグフードを食べよ」で私が述べていることの繰り返しになりますが、クライアントとSIerは戦略的なパートナーシップを結ぶ段階にきています。

【参考:IT業界人は自分のドッグフードを食べよ】
http://it-ura.seesaa.net/article/65194532.html

実際にそのようなアクションを起こしているSIerは、受託開発を切り口として、そこからクライアントの問題点を分析し、追加提案を行っており、時としてイノベーションを起こすこともあります。

例えば、物流効率化システムの受託開発を請け負う場合、クライアントのRFPには単なる業務効率の観点しか盛り込まれていないとしても、そこからリアルタイムに在庫を確認できる仕組みを発展させ、店舗や事務所に出荷可能在庫情報をタイムリーに提供するということもできると思います。

また、大規模量販店などに設置されている情報端末やポイントサービス端末に係る受託開発をしているなら、エンドユーザ(コンシューマ)に対する新サービスの提案も可能でしょう。

具体的なベンダー名を挙げることは控えますが、このように受託開発を取っ掛かりとして案件を拡張したり、自らニーズを作り出す、場合によっては新サービスにまで結びつけるということをしています。

 

ここまで読んで、「それはクライアントの企画部が行う仕事だろう」と考える方がいるでしょう。そのとおり、それは正しいです。しかし、戦略的パートナーになろうとするなら、情報システム部門だけを相手にするのではなく、経営やITの企画を行っている部門とも太いパイプを築かねばなりません。

だからこそ、昨今では、大手SIerが次々に大小様々なコンサルティングファームを買収もしくは資本提携しているのです。

  • IBM :プライスウォーターハウスクーパースを買収(2002年)
  • NEC :アビームコンサルティングと戦略的資本提携(2004年)
  • 日立:エクサージュ(後の日立コンサルティング)を買収(2006年)
  • 富士通:プロメインテック ノバクサを買収(2007年)

【参考:SIerが買収or提携するコンサル一覧】
 → http://it-ura.seesaa.net/article/65679596.html

 

コンサル部門を自社に取り込むことで、SIerにはどのようなメリットが生まれるでしょうか。

コンサルは要件定義よりも前の段階からクライアントに食い込んでいることが多く、その相手は企画部であることがよくあります。SIerがクライアントにとって企業戦略を支えるITを提案できる戦略的パートナーとなるために必要な相手と既に関係を持っているのですから、SIerがコンサル会社に手を伸ばしているのもお分かりでしょう。

付け加えると、買収したコンサル部門とSIerの既存部門間での人事交流も発生しますから、今現在を受託開発エンジニアとして活躍している方でも、彼らと共同でクライアントに提案する機会は増えるでしょう。

 

かつての姿を”SIer1.0”と呼ぶならば、受託開発という枠から飛び出そうと積極的なアプローチを展開しているSIerは、”SIer2.0”とでも呼ぶべきまったく異なるステージに駆け上っています。

このような流れをみると、IT業界が迎えている変化は確実に良い方向に向かっているのだと私は感じるのです。

きっと、日本のIT業界はもっとエキサイティングになれます。

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

10

吉澤様

SIer2.0の記事を拝見させて頂きました。
私の意見ですが、SI業界の人気が低迷しているのは、中堅以下のSIer、ソフトウェアハウスの多くがリスクの高い受託開発ではなくリスクの少ない常駐派遣で技術者の正社員を働かせるというビジネスが横行しているのが原因ではないかと思います。
常駐派遣で正社員を客先に放り込んでしまえば、社員教育を客先の企業が行ってくれるので教育費が削減できる、勤務時間の長さで契約金が支払われること、受託開発のように開発に失敗したときの請負報酬が0になることのリスク回避などによって、技術者の企業への帰属意識が薄れ、正社員なのに技術者は短期間で次のプロジェクトに移り、結果として大量の退職者が出てしまうというスパイラルが繰り返されるのは当然だと思います。
SIer1.0からSIer2.0への変革と内容はユーザー企業にとってもSIerにとっても非常に意義があることだと思いますし、上手に改革していってほしいと思いますが、果たしてSIer1.0からSIer2.0へ変革できる資格のあるSIerが皆さんが思っているほど少ないのではないかと思います。

  Sword200801 on 2008/01/08

9

いちのせさん、コメントありがとうございます。

SIで行われる内容を考えれば、イノベーション云々という要素がそもそも少ないというご指摘はもっともだと私も思います。ビジネスを実現するために必要なITという観点でのアプローチがほとんどですからね。テクノロジードリブンな話をしたいなら、きっとSIとは違う話になります。

いずれはどのSIerも本格的なコンサルティング能力を有することになると思いますが、その際にポイントになるのは、知の集積になるのではないかと考えています。

SIに絡むコンサルティングに重要なのはゼロベースで考える力ではなくて、システムに落とし込むことを意識した要件定義やグランドデザインを行う力でしょう。これらは経験が何よりもモノをいう領域の話であり、地頭が良ければなんとかなるという類の話ではありませんから。

そうなると、アクセンチュアやEDSのような超巨大コンサルは規模の優位性を発揮できるわけで、むしろ他の大規模SIerと手を組むことができない中堅どころのコンサルがしんどくなるのだと思います。

  吉澤準特 on 2007/11/29

8

SIer2.0を行うには,顧客側の意識改革も必要です。提案型,業務改革型,新サービス創出型ビジネスはこれまでもずっとやってきていましたが,顧客側がついて来れていなかったと思います。ですから,いくら革新的な提案をしても受け入れられなかった。安全な提案に終始してしまう。また,顧客側から出てくるRFP自体もシステムリプレースがメインであり,新サービスの創出まではいたっていない。大概,そういったイノベーションを起こすところは自社開発がメインですしね。
これまでのSIerだって十分エキサイティングでしたよ。大きな組織の構造改革をする時の受託開発は時間との戦いなのか中で生き物の様に仕様が変わり,顧客とベンダーの喧嘩と和解の繰り返しの中,最後は握手をして終わるという,プロジェクトXの世界をリアルに体感してきたものとしては十分エキサイティングでしょうね。

但し,外から見る方々からいわせれば,知の創出が出来ていないからエキサイティングではないと語られるのも理解できますが,SIerってなに?っていう事を考えると,十分な仕事をしていると思います。
むしろ,SIer2.0になってコンサルティング能力も吸収し始めると,大変になるのはアクセンチュアみたいな企業体でしょうね。

  いちのせかずま on 2007/11/25

7

 作る側としては、顧客志向で
お客さんに喜んで使ってもらえる物を作る
=>次も追加発注していただける
(両方ともWIN-WINの関係になる) のが理想だと思います。

 お客さんに喜んでもらえる物を
新しい技術を積極的に取り入れながら作る時点で
エキサイティングでないとは思いません。

 ただし発注金額やコストや納期の面で「絶望した」
という状況になってしまっている気がします。
(コスト重視すると手を抜かざるを得なく
lose-loseの関係になってしまう気が・・)

 上記の周辺状況をどうにかしない限り
「SIer2.0」というのは難しいのではないかと思います。
<パッケージメーカにしても良い物を作ったから売れる
 時代ではないわけですし

  きむこう on 2007/11/15

6

kennさんの元エントリーはSI絶望論ではなくIT絶望論なので、対象はSIの生産性のみに限らずWebの(相対的)後退も含まれていると思います。で、これは「マジ?」ってくらい深刻にマズイ状況だと思っています。ケータイとかゲームとか特異点はあるのですが世界規模に伸びるものはまだ見えていないですね。そういう意味では、Webも内需にとどまっているのが現状だと思います。潜在的にも外に出て行ける芽が無いという閉塞性は..って凄く長くなるのでこの辺で。。

  尊仁 on 2007/11/13

5

尊仁さん、コメントありがとうございます。

Webの世界の目線でSIを捉えるとおっしゃる通りの考えになると私も思います。国内SI産業の優位性がどこにあるか・・・正直に言うと、無いのかもしれません。IT業界では、米国に追い着け追い越せという状況が続いていますね。もっとも、本気で追い着こうと考えている人は案外少ないかも。欧米スタンダードの焼き直しでもいいや、と感じている人は結構多そうです。

  吉澤準特 on 2007/11/13

4

SI業界はサラリーマンになってしばらくしか経験していなかったうえに、現在ではWeb業界の仕事をしている訳ですから適正・妥当・公平なコメントをできる立場にはいないと思います(汗)。
ですので、偏った見解であることを自覚した上で、様々な情報サービスが「無償化・国際的な標準化」を遂げて行く中で、「日本語や日本的な商習慣」以上に差別化できる障壁もしくは差別的優位性を国内SI産業が有しているのか?という点には興味を感じますし基本的にはなんとかして欲しい(頑張って欲しい)という気分もあります。

  尊仁 on 2007/11/10

3

追加です。たしかに国内情報産業は、Webも含めて輸入超過(1兆円前後)ですね。製造業は組み込み系ソフトウェアも含めて輸出超過なのですけど、いったい日本の製品に何が足りないのか。

答えは明らかですね。最初から日本市場しか見ていないのですから、世界市場で売上を伸ばせるはずがありません。情報産業で輸出超過を狙うのであれば、アウトプットは全て英語の形でも残さないと、世界市場からそもそも注目してもらうこともできないでしょうね。

  吉澤準特 on 2007/11/10

2

尊仁さん、コメントありがとうございます。

ネット全体の生態系が引き起こす「情報経済変革」と情報産業が引き金となる「情報経済変革」が同じモノである必要性を私は感じないのですよね。例えば、google検索エンジン絡みの変革と、Suicaを代表とするICカード絡みの変革は同じ土壌からは出てこないと思いますけど、どちらも生活に変革をもたらしましたよね?

土俵が違うのですから、スピード感に違いがあっても当たり前だと私は考えています。

多くの人が勘違いをしていると思いますが、WebというのはSI領域の一面に過ぎません。もしもWebという土俵だけで変革を期待しているのであれば、それはSI業界から去った方がいいと思います。

  吉澤準特 on 2007/11/10

1

仮に国内の情報産業に於ける構造変革が実を結んだとしてもウェブを通じて起こっている“ネット全体の生態系”が情報経済を変革している事態には追いつけないのではないでしょうか?
パラダイス鎖国という呼称を濫用するのは安易かもしれませんが、ウェブサービスに於いても、開発のコアにある技術やコンセプトはほとんど日本以外の海外からもたらされたものですので、この落差は相当大きいと感じます。

  尊仁 on 2007/11/10

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