最近コンサルタントの働き方について周りから話を聞くことが増えたので、就職活動の時期も近づいてきたということもあり、コンサルティング業界に興味のある方向けにちょっとした小話を紹介しましょう。
コンサルティング企業が全体を仕切っているプロジェクトは多いが、破綻しているプロジェクトが多いのも事実であり、成功したプロジェクトは、ほんの一握り。
- 労働時間が長く、終電がなくなっても残るコンサルタントが多い。労働時間の長さでアピールするのはナンセンス。
- 報酬が異常に高い。月額200万〜400万ぐらい請求される。その割りに大した仕事もしないコンサルタントが多い。彼らを一人切れば、他の優秀なSEが2、3名雇える。
- 主に顧客への提案資料をパワーポイントで必要以上に作りこんでいるコンサルが多い。もっとシンプルで十分。
- システムを知らない人間が語る机上の空論が多い。
例)10万件の顧客データを手入力しろ、などゆえに、コンサルはIT業界の労働環境を悪化させてる元凶である。
これはコンサルティング業界について2ちゃんねる等で言われていることです。話の通りであれば、コンサルなんてIT業界には入らない気がしますよね。しかし、世の中はコンサルティングの仕事は拡大の一途を辿っています。この矛盾はどこからくるのでしょうか?
一般に、コンサル(ここでは外資系コンサルを指す)は長時間労働であることは間違いありません。
理由は色々あるでしょう。自分の一生懸命さをアピールしたい、本人が優秀過ぎて仕事が集まってしまう、逆に無能のせいで仕事が溜まっている。しかし、そもそもクライアントが求める要件が厳しくなっていることを見逃してはなりません。
2000年頃、1日10万アクセスの販売サイトを構築するのに求められる期間は、要件定義からシステムリリースまで、だいたい8ヶ月〜1年で作っていたと記憶しています。
ところが、今は同規模の販売システムを構築に求められるのは4ヶ月から半年です。
なんと、IT業界はたった数年で生産性が倍になってしまったようです。でも私の周りの人は、前と変わらないスピードで動いていますよ。おかしいですね、別に人員が倍投入されているわけでもありません。
そうです、働く時間がさらに長くなったから、システムリリース時期を早めることができるようになっただけなのです。
本当は、プライムコントラクター(コンサルや大手SIベンダー)が、クライアントの無茶なスケジュールに「NO!」と言わなければなりませんし、事実、プロジェクトを受注した人もそう考えています。クライアントも、言ってることが無茶だと分かれば矛を収めてくれることが少なくないです。
では、なぜ長時間労働を強いられるのか?
ここに来て、もうひとつ大きな事実が判明します。それはプライムコントラクターの見積り能力です。
昨今叫ばれているのですが、正確な工数見積りができる人材が本当に少なくなっています。どんな能力も鍛えなければ成長しません。プログラミングにしろ業務設計にしろ、それを経験するごとに人は成長していきます。これは、プロジェクトの工数見積りにも言えることなのです。
熟練のプロジェクトマネージャが手がけるプロジェクトはなぜ成功するのかといえば、不確定要素も含めて、大まかなスケジュールを予想して必要な工数を算出することができるからです。
ITバブルという言葉が登場する前は、プロジェクトマネージャとして振舞えるポジションの人間は、今よりも圧倒的に少なかったのです。ですから、一人当たりがマネジメントするプロジェクト数も多かった。
ところが今はどうでしょう。90年代後半からプライムコントラクターにおけるIT要員は増加の一途を辿っていたのですから、今のプロジェクトマネージャは管理経験のあるプロジェクト数が絶対的に少ないです。
本来なら、すでに上のポジションにいる人間が、プロジェクトマネジメントの妙技を部下に伝える必要があったのですが、社内的にそのような教育制度が未整備な企業は多く、結果として、プロジェクトマネージャとして合格レベルの力を持っている人間の数が足りていません。
現場のコンサルタント・エンジニアとして優秀でも、プロジェクト管理が優秀である保証はどこにもありません。野球の言葉で言えば、優れた選手が優れた監督というわけではないのです。
他に、要件定義が曖昧なままスケジュールを進めてしまう、仕様凍結の徹底がなされていない、など理由は色々ありますが、ほとんどのことはプロジェクトマネージャの経験が足りないことに帰結すると思います。
コンサルティングファームや他の大手SIerと比較して、IBMの信頼が高く思えるのは、企業内部のトレーニングがしっかりしているからです。現在は、各企業とも社内の教育制度を充実させようと試行錯誤しています。
あともうひとつ忘れていたことがありました。それは労働組合(ユニオン)の存在です。コンサルティングファームにはユニオンが存在しないケースがほとんどです。ですから、労働時間に関する内部圧力が発生しづらいので、ワーカホリックになってしまう人は、他社に比べて多いです。
最近は労働基準局の指導が厳しくなっていることに加え、従業員のモチベーションを高めるために、労働環境を改善しようという動きはコンサル業界では一般的になってきています。
長時間労働の原因は何かという点を考えましたが、コンサルだけでなく、全ての企業に共通して言えることが見えたと思います。
資系コンサルティングファームが請求する金額は、一般的なSIerと比較すると結構な差があります。
まず、一般的なSIer。IBM、CTCなどが請求してくる金額は、およそ150万円程度が相場です。安ければ100万円以下でもお願いすることができ、能力を考えると、価格競争力は強いですね。
では、コンサルティングファームはどうでしょう。
私はコンサルファームについては3社の情報しか知りませんが、一番高いところだと、一人当たり最低200万円/月を請求します。最も高額を請求するパートナーやディレクタークラスだと、500万円/月というケースもありますね。
これくらいの額を請求するクラスの人間は、他のプロジェクトもいくつか掛け持ちしています。彼らはプロジェクトを獲得してくる人間ですから、プロジェクトが動き始めた後は、現場の人間に全てを任せ、自分は次の提案活動に勤しむわけですが、その活動期間中は、これまで獲得したプロジェクトの人件費に計上するんですよ。ですから、プロジェクト開始後に彼らがプロジェクトで直接作業する時間は週2時間がいいところ。
また、月500万いうのは日給に換算するといくらになるでしょう。
答え、20万円/日 ※労働20日計算
どうですか、笑いが止まりませんよね。こんなに高額ならよほど優れたコンサルタントに違いないんでしょうね。
ええ、もちろん皮肉です。いくらなんでも、こんな高額の価値を発揮できる人間なんて、実際にモノを売り歩いている企業の社長か、毎日錬金術に勤しむ金融トレーダーくらいのもの。ちょっと貰いすぎですよ。※実際に懐に入るのはその半分くらいになりますが、それでも高額です。
しかし、これら金額を含めた上でプロジェクトは成り立っている訳ですから、どこかでこの超過分を相殺する要素があるはずです。事実あります。
それは末端コンサルタントの請求額。彼らが身を粉にして働くほど、実際に生じている価値に比べ、クライアントに請求する価値の方が高くなり、その差が上記の損失補填に当てられるというわけです。
これなら、高給取りにクビを言い渡して、その分優秀なコンサルやSEに来てもらう方が、プロジェクトにとっても数倍有益に思えますよね。ですが、そう簡単にいかないのがこの業界なのです。
往々にしてこの高給取りのコンサルタントはプロジェクトの責任者という立場も兼ねます。これはプロジェクト遂行の責任者ということではなく、プロジェクトそのものの成否について責任を持つ人間ということです。
ですから、彼を外してしまうと、コンサル会社側としては責任をとる人間がいなくなります。ですからどうしても外せない。しかし、これはコンサル会社側の一方的な道理であり、クライアントに受け入れてもらえるわけはありません。
ではどうするか?
答えは簡単、誤魔化して計上するだけです。見かけ上、2人のコンサルタントが働いていることにして、実際には高給取り一人分の金額を計上するというわけです。事実に反する報告ですが、その分、報われない残業をするヒトが増えるので、成果量自体は予定通りだったりするのが恐いですね。
彼への報酬がプロジェクトの予算を削っているという事実は、会社の構造的な問題もあり、現場ではどうにも変えようがないのです。ですから、早く他の案件を獲得して、自分たちの予算から奪い取っていく金額を減らしてくれないかな、という願いをどのプロジェクト管理者も持っています。
コンサルの負の側面で最も強調されやすいのが、必要以上に資料作りに時間をかけることと、現場のオペレーションを理解していないシステムの提案です。
まず、必要以上に資料内のグラフや図の作成に時間をかける点について。本来なら、グラフの類は相手の理解を助ける程度であれば十分であり、できるだけコンテンツロジックを充実させた方がいい、というのは正論であると思います。
難しいのは程度の問題。不必要なアニメーションやグラデーションの使用は論外ですが、整理されたグラフや業務イメージ図は、得てしてキレイなものになります。サーバやストレージの構成情報も、ある程度グラフィカルであった方が理解しやすいことは、アットマークIT(www.atmarkit.co.jp)の記事を斜め読みしてもらえば実感してもらえるはず。
ただし、全ての資料が「美しくあるべき」とは決して思いません。何度も検討重ねる資料なら、最初はラフスケッチのような形でまったく問題はないですし、そういったものは見た目よりもタイムリーさが要求されるものです。
しかし、なぜかくも見た目に固執するコンサルタントが多いのか?
それは、コンサルティングファームがもともとはマネジメント層を相手に商売してきたということに尽きると思います。内容は充実しているのに見た目が悪い、それだけの理由で提案内容の中身を疑う経営層がいることをご存知ですか?
「見た目が悪い(インデントや色などが統一されてない)」
→「物事をキッチリとやり遂げる能力が伴っていない」
→「そんな会社に任せたらプロジェクトは頓挫するに違いない」
→「あなたの提案は受け入れられない!」
こんなロジックが彼らの中にはあり、提案をマイナス評価するのです。
また、単にキレイな資料の方が見映えするので、そういったものを求める経営層もいるんですよ。以前にお付き合いした方は、資料の厚さも評価に含めていました。厚さが2センチ(100ページ以上)に達しないとダメなのです。
これらは全て実話です。聞くだけなら笑えますが、その現場にいる人間には笑える内容じゃないですね。思い出したくない(苦笑
こういった経験を積んだ人間は、何かに付けてキレイな資料を作ります。そしてそれを部下に教え込んでいくのです。そのサイクルが何世代も繰り返されて、いつしか、理由もないのにキレイな資料を時間をかけて作る行為が生まれるのです。
コンサル業界に優れた能力を持つ人材が多いことは事実です。そういった人材と一緒に仕事をしていると自分の意識も高いところに引き上げられて成長が早まります。
しかし、どんなに優れた人材が多いとしても、業界の慣習に流されて継続的な改善を怠っているとすぐに冒頭で述べたダークサイドに陥ってしまうことでしょう。
現状に胡坐をかかずに常に環境を良くする視点を持つこと、これが重要です。2011年度にコンサル業界へ入ることを考えている皆さんは是非最初からこういった話を理解して就職活動に望んで下さい。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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