大手IT企業がM&A真っ盛りですね。業界内でも生き残る為には規模の追求が必要、という常識論が幅を利かせています。確かに顧客企業からの要求が【短納期・高品質・低単価】となっているので、規模を追求しなければマーケットの要求に対応出来ないという事でしょう。しかしマーケティングの感覚から考えると、実は規模を求めても今後の日本国内のマーケットは人口減少から縮小する事は自明の理なので、規模には限界があります。世界を市場と考える発想を持たなければ、国内で規模を求めても破綻する危険が大きくなる可能性が強いと思います。
国内のIT産業で考えると、受託開発やパッケージモデルは成熟期から衰退期(安定期)に移行しています。こうなると、領域特化の専門家がポイントになります。大手SI企業が百貨店やGMSだとすれば、中小企業はカテゴリーキラーとして、専門分野と価格優位性を武器に対抗する必要があります。百貨店では何でも揃うが、高価格で提供しています。カテゴリーキラーはそのカテゴリーの商品しか持っていませんが、専門性と価格優位性に長けています。大手企業は間接費の増大から、どうしても低単価で勝負する事が困難です。そこで販促コストを投下して、認知度を高めてブランド力で勝負します。中小は彼らの提示価格の8掛けでも十分に利益を生み出せる財務体質を持っています。利益を生み出す構造に違いがあるのです。また、最近ではブランドの考え方が変わってきました。認知されている事よりも、お客様からの求心力があるか、つまり惹き付けるだけの魅力を持っているかという事に重点が移っています。単に知っているから、本当の意味でのファン客を増やすフェーズになってきたのです。
中小ITサービス業の中でも二極化が進んでいます。私はこれをお客様への意識の違いだと感じています。マーケティングの世界で【ターゲティング】という言葉があります。これは対象顧客を絞り込むという考え方です。ところが、中小ITサービス業界でこの絞込みを実践している会社は少ないのです。絞り込むと対象マーケットが減り、結果的に機会損失となってしまうと考える会社が多いのです。そんな経営者に『それではマーケットを絞り込む事で、どの程度の機会損失となるのか教えて下さい』とお聞きすると、答えられないのです。また、自社の売上を支える為の市場規模をお聞きしても、明快な回答は得られません。成熟化していく環境の中で、この発想では大手企業に対する規模の不利を補う事は出来ません。こういった企業は、規模追求論に飲み込まれてしまいます。
規模に差があるとは、もう一度まとめますと、間接コストが低く、大手よりも安い単価でも十分に利益を出すことができるというメリットがあるのです。ところが、多くの中小IT企業は必要以上に安く売ります。結果的に利益も出せずに苦しんでいる会社が多く、そのメリットを活かせていません。このメリットを十分に理解せずにこれまでの商習慣に流されてしまっているのが、苦しんでいる中小ITサービス業の姿です。
IT業界の流れは圧倒的に規模の論理です。今後もこの流行は続くと思います。だからこそ、中小は逆転の発想を持つことです。成熟した他業界において、大手が規模の論理で突き進んだ時にどんな業態が出現したのか。その歴史から学べる事はたくさんあります。船井総研では共生というキーワードが今後の時流と考えています。自立した個々が強みを活かし、弱みを補いながらマーケットに価値を提供していくビジネス。それも一つの成功法だと思います。今がIT業界規模追求の時代。中小はいつもその常識に疑いを持ち、次の展開を模索する事が大切な視点となってきます。
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吉澤準特 on 2007/12/03
吉澤さん
コメントありがとうございます。
私は現場支援の中で、自社の強みのある分野の特定とそれに対応するマーケットの選定をしています。テーマと価格帯によって、それを購入できる企業規模が想定できます。その企業数がその会社の商品やサービスを購入できるマーケットとなります。
その想定規模の企業が自社のサポート範囲内で何社存在しているかが、近隣マーケットとなります。
業種・業態やWebか基幹、言語の種類はその会社の特性によって異なります。製品はマーケットの特定が前提ですので、既に特定されています。ターゲティングとは制限ではなく特定だと考えています。いかに自社の商品を購入する可能性の高い顧客を特定していくのかがターゲティングの本意だと考えていますので、何かを制限するのではなく、お客様の特定していくと考えて頂くと良いかもしれません。例えば、年商100億円で特注の受注生産型の電子機械部品製造業で、創業者が決裁権限を持っており・・・。と言うように細かな特定をしていく事が大切だと考えています。お客様の特定が出来たら、それを製品軸から再度フォローしていきます。
回答になっていますでしょうか?
junagashima on 2007/12/03
素朴な疑問なのですが、中小ITサービス業界が犯しがちな過ちとして、ターゲティングによって顧客を絞ることは機会損失につながるという考え方を持っているという点について、nagashimaさんはターゲティングによって何を制限することを意図されていますか。
製品や言語の種類?
業界?
Webか基幹?
吉澤準特 on 2007/12/03
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ありがとうございます。nagashimaさんはまさにペルソナマーケティング(という表現をコンシューマ以外に使うか分かりませんが)を意図されているのですね。よく分かりました。