年明け早々物議を呼んでいる話題と言えば「Culture First」である。詳細は ITmedia の記事などを参考にしてほしい。
上記記事によれば、「Culture First」とは「『文化が経済至上主義の犠牲になっている』とし、経済性にとらわれない文化の重要性をアピールしながら、補償金の『適正な見直し』で、文化の担い手に対する経済的な見返りを要求」する団体らしい。
この趣旨が、どうにも自家撞着に見えて仕方がないと思っているのは私だけではないと察する。現に辛らつな批判も既に出ている(「風のはて」より)。
「風のはて」オーナーは、「文化を利権団体から私達の手に取り戻す為の戦い」をしたいと主張している。お気づきだろうか。この文言の「利権団体」という部分を「企業」に換えれば、「Culture First」の主張と大差なくなってしまう。
これこそが、まさに悶着の発端である「Culture First」の主張の自家撞着ぶりを端的に表していると言える。
文化が経済に支えられて成長してきたというのは、ルネサンスにおけるメディチ家などの資産家が果たした役割といった歴史的事実にはかるまでもなく、明らかである。多かれ少なかれ文化にかかわる人たちは経済を無視できない。
ところが、この「経済」という側面につき、カネが絡むだけにいろいろな思惑が周囲にうごめいた歴史があったのもまた事実だ。
ここ 20 年前後の動きでは、バブル期に旧・大昭和製紙の斎藤了英会長(当時)(故人)がフランスの有名な画家の絵を高額で買い、「私が死んだときは一緒に絵を棺に入れ燃やしてほしい」と発言したこと、そしてそれがフランス当局からの猛烈な抗議を受けたにもかかわらず斎藤氏がその主張を曲げなかったことなどが懐かしく思い出される。
とはいえ、「Culture First」が主張する「経済至上主義」とは、こうしたバブル期の拝金主義とは趣を異にするようだ。
「Culture First」が言いたいのは、音楽を聴くための「デバイス」、具体的には Apple iPod などで商業的利潤を上げることはまかりならん、なぜならその売上はクリエイターに還元されないから、ということだ。
ここには、失礼を承知で言うならば、「Culture First」に参加する、あるいは賛同するクリエイターたちのひがみ根性を見て取る。Apple は iPod をたくさん売って儲けやがってけしからん、と言いたいのだろう。
とはいえ、そこまで利潤追求が「悪」と主張するのであれば、その利潤を得ている企業等の主体に向け文化貢献を要求する、例えばその企業の株主になった上で「ステークホルダー」の一人として総会で提案するなどの方法があるはずだ。
そういう手段を取らずにことさら自己の利益を主張するだけでは、なかなか賛同は得られないのではないか。
しかしながら、「Culture First」もさるものである。クリエイターの側にいる人たちには言うまでもなく有名人が多い。そういう人たちが「Culture First」の支持を表明するという、実に消費者へのアピール度の高い戦略を早速実施している。
依存効果の導出という点では、悔しいかな、MIAU などではとても敵わない。
とはいえ、クリエイターが本当に求めているのは、この blog の過去エントリでも少し触れたように、流通・販売、およびその売上の回収(収益の獲得)の手段を自らの自由で選べることのはずだ。
過去においては、流通・販売・売上回収といったプロセスには企業組織にあるプロフェッショナルな手続きが必要だったため、クリエイターはその傘の下に入らざるを得なかった。
しかしながら、現在はインターネットのおかげでそのハードルの高さは劇的に低められつつある。よく知られているところでは、Radiohead の試み(「R25」の記事を参照してほしい)などが挙げられる。
こうした(比較的)若いクリエイターの意欲と知識とを無視しつつ、「利潤追求は悪」という感情的(共産主義的?)メッセージで既得権益の保護を目指す「Culture First」の行動に対しては、どうにも疑問を抱かざるを得ない。
日本のクリエイターの前途は依然厳しいと言えるだろう。そうこうしている間にも、著作者・著作物の国際競争力がどんどん削がれていくことが懸念されてならない。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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