J-CAST ニュースの記事を引いてくる。
「完璧な職質に大変なモノが…」 福岡でもミクシィに警官書き込み?
ミクシィ日記の安易な書き込みを発端にしたトラブルが相次ぐなか、奈良県警の巡査が捜査を日記で「実況中継」したことが問題になっている。ところが、警察官による安易な書き込みはこれにとどまらないようで、福岡県警でも似たようなケースがあるのではないか、と指摘されているのだ。
おそらく、奈良県警の件については強い違和感を持った人も多いと思われる。私もその一人だ。
機密情報を扱うことも多々ある警察官という職務に就く者が、千万のオーダーに上る参加者を擁する mixi の場で「王様の耳はロバの耳」をやってもいいものなのかどうか、そしてそれに対する処分が口頭注意という軽微なもので果たして良いのかどうか、どうにも首を傾げざるを得ない。
千万もの会員数にもなれば、とうぜんそこには反社会的な分子が紛れ込むことを考えるのが自然な感覚だろう。人口一千万の都市を想像してみると良い。そこでは家庭の営みから経済・商業活動、あるいは友人間の交流や恋愛などが行われている反面、事故や暴力、詐欺、あるいは極端なところでは殺人が行われていると想像するに十分な規模のはずだ。
しかしながら、そんなところでリアル社会の治安に関する情報、それも公知になっていない情報を嬉々として書き込むこと、これが安全保障という観点でいかに危険かを、警察当局は未だ理解していないのではないだろうか。
もしそうならば、非常におめでたい、いや残念である。警察庁、ならびに各都道府県の警察当局は、情報漏えいにつきもっとセンシティブにならねばならない。さもなくば、先進国の中では飛び抜けて治安がいいとされてきた日本の立ち位置が根元から覆され、諸外国からの信頼を失う事態にもつながりかねない。
ネットで「王様の耳はロバの耳」をやっている事例については、過去には匿名・顕名(実名)に関する議論が主たるものであったことは確かだ。実名支持者いわく、匿名発言者は罵詈雑言を吐いても身元を脅かされることがないから好き勝手ができるんだ、逆に我々(実名論者)は、脅迫などにさらされるリスクを覚悟でやっているんだ、と。
しかしながら、上で述べた警察による情報漏えいの件は、これとはかなり性格を異にするとしなければならない。いやむしろ、聞くところによると、奈良県警の警察官は mixi のプロフィールでかなり詳細に自らの身分を記していたと言うではないか。
匿名発言者は、無力なサイレント・マジョリティと呼ばれる人たちが自らのせめてもの意見の発現の場としてネットという「約束の地」を見つけたと考えるならば、いち小市民の私は個人的に十分な納得感を得ることができる。
逆に、実名論者は大学教授や弁護士など相応の社会的地位を持つ者が主で、そうした意味ではサイレント・マジョリティと対等に立っているとは言えず、むしろ「上から目線」で彼ら/彼女らサイレント・マジョリティを見下しているとさえ思えることがある。
こうしたすれ違いは、けして合意形成に至ることはないだろう。
では、奈良県警の警察官は「上から目線」だったろうか。私は、おそらくそれは違うと思う。
ただ、警察官という職務が機密情報を扱える特権的な立場であるのは間違いない。得られる情報の差異は、そのまま社会的立場の差異に反映されるというのが常識的な考え方とするならば、くだんの警察官は、その気になれば特権的な立場を用い他への差別化を行うこともできたはずだ。
とはいうものの、かなり穿った見方をすれば、そうした特権的な人たちはときに下野したいという欲求に駆られることがあるのではないか、という仮定をここでしてみたい。
そうすれば、奈良県警の警察官が取った態度も理解できなくはない。平たく言えば、彼は良き理解者・友人に飢えていたのではないか、ということだ。
そういう意味では、警察という組織のメンタルケアも重要であるとすることができる。
反面、大学教授や弁護士という下手に高度な自己解決能力を持ってしまっている人は、下野した際に必要以上に自論を振りかざすためにサイレント・マジョリティによる「炎上」の憂き目に遭い、よりいっそうネット社会への敵愾心を増幅させるという悪循環を招いているようにも見受けられる。
梅田望夫氏が、ベストセラー『ウェブ進化論』の中で、ネットに無邪気に飛び込むことの必要性を説いていた。私もそれを正面切って否定するつもりはない。
しかしながら、無邪気に飛び込む以上はそれなりのプラクティスを経た上でないとダメというのがもはや厳然たる事実だ。酸素ボンベなしに深海ダイビングを行うような行為は、たとえプロであろうとも危険極まりないということである。
ネットにおける教育制度の必要性が叫ばれてもはや久しくなる。そして、それに適した教員を揃えられないという状況も未だ解決されてない。とはいえ、生まれたときに既にネットのある生活をしてきたこれからの世代に対しては、そうした言い訳は通用しない。そして彼ら/彼女らが大人になったときにネットが地獄絵になってしまっているようではいけない。
そうならないためにも、今まさにネットの利益に浴している我々がネットの適切な利用法を下の世代たちに伝えていくことは、もはや逃れられない社会的責務なのである。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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