最終更新時刻:2009年11月26日(木) 20時40分
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「初音ミク」騒動に見るメディアの傲慢

公開日時:
2007/10/15 23:28
著者:
McDMaster

 マスコミが、例えば一般人(そもそも「一般人」って何だ?)を取材した際、その内容がマスコミの側の都合の良いように切り貼りされた上でオンエアされる、あるいは新聞記事に掲載されることはよくある話だ。実際、私もこれまで何度か「取材」なるものを受けたことがある。そして、取材の後にできた番組や記事の内容を見る度に失望させられた。
 そういうときに、取材する側は抗議の声を聞く耳をいっさい持たない。「もう世に出てしまったものだから」というのが彼らの常套句である。
 今回の、TBS「アッコにおかませ!」の「初音ミク」騒動は、マスコミが相変わらず、いやそれ以下だという印象を私に抱かせるに十分過ぎるものだった。
 「初音ミク」騒動については、各所で報じられているため詳細は割愛する。ここではあえて J-CAST ニュースの記事を引いてきてみる。

TBS また「印象操作報道」疑惑 「事前の打ち合わせと全然違う」

TBS 系バラエティ番組「アッコにおまかせ!」の 2007 年 10 月 14 日放送で、歌うバーチャルアイドル「初音ミク」が紹介される代わりに、「ミク」を愛好する「オタク」の「キモイ」映像ばかりが流され、「ミクのイメージが壊れた」など、ネットが騒然となっている。TBS の取材を受けた人達は「内容が事前の打ち合わせと全然違う」として憤慨し、「ミクのファンや関係者に申し訳ない」と謝罪。ネット上には「また TBS によるヲタの印象操作」などのカキコミも出ている。

 そもそも、なぜ TBS の「不正」(と、あえて言ってしまおう)を、取材を受けた側が謝罪せねばならないのか?これは明らかな「不経済」である。そう、ケーザイ学で言う、例えば川の上流に悪性の排水を垂れ流す工場があるために下流域の住民が被害を被るというアレである。
 TBS が「印象操作」を行ったという J-CAST の仮説は、おそらく正しいだろう。おたく、またはヲタと称される人物をどのように取り上げれば強い印象を視聴者に与えられるか、それをあくまで TBS 主体の、供給者都合の論理で放映したに相違ない。
 しかしながら、ちょっと考えればこれが重大な誤びゅうであることがすぐにわかるはずだ。
 今の社会においては、コンシューマ(消費者)がプロデューサ(生産者)になるという「プロシューマ」化が起きつつあるのは紛れもない事実である。今の季節なら、ちょうど子どもの運動会の画像や動画を嬉々としつつ PC で編集している両親の姿を想像するとよい。
 私が「初音ミク」のことを知ったときにはじめに感じたのは、これは Windows 版の「ガレバン」だ、ということだった。ガレバン、そう、Apple の GarageBand である。ガレバンが Macintosh ユーザたちのクリエイティビティをどれだけ刺激したか、私があえてここで書くまでもない。
 「初音ミク」が Win ユーザに与えたインパクトは、まさしくガレバンのそれに等しいと言える。そして絶対数の多い Win ユーザにガレバンと同等の機能がもたらされたということは、ことネットワーク外部性においてはガレバンのそれを超える機会すらあったはずだ。
 にもかかわらず、それを曲解した上に軽蔑の眼差しが向けられるべく仕向けた TBS は、プロシューマの表現の機会を損ねたという意味で非常に罪深いとせざるを得ない。未だ TBS から謝罪の言葉がリリースされたとは聞かない。いや、それどころか、先の J-CAST ニュースの記事にもあるように、インタビュイーのみならず「初音ミク」のメーカが謝罪するという異常事態を招いている。
 TBS は何様のつもりなのか。個人的に、経済と経営をいつくしむ者の一人としての立場で、TBS の態度には強い憤りを覚える。前のエントリのトヨタの件も含め、最近は消費者を小馬鹿にしてはばからない大企業の態度が腐臭を伴い鼻につく。こういう企業群が CSR だの環境保護だのを訴えるとしたら実に片腹痛い。そういう化けの皮はいずれ剥がれ、その企業が利益を得る機会は損なわれることだろう。
 そうなってしまう前に、トップによる、消費者と相対する際のポリシーについての明白な説明を聞きたい。プロシューマ時代の今、誰もが情報発信者となる機会がある。そんなときこそ、既存メディアは彼ら/彼女らの表現機会の保護に努めるべきだ。
 それが、「表現の自由の保障」ということに他ならないのだから。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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