最終更新時刻:2009年11月26日(木) 20時40分
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日本のイノベーションをツブしているのは誰だ?

公開日時:
2007/02/28 13:15
著者:
McDMaster

 きょう 2/28 の日本経済新聞一面コラム「成長を考える」で、まさしく考えさせられる内容の記述があった。冒頭部分から少し引用してみることとする。

幻の「iPod」

 米アップルが開発し、世界で大ヒットした携帯音楽プレーヤーの「iPod」。実は全く同じアイデアを iPod に先駆けて考案した日本人がいる。
 三洋電機のオーディオ部門のトップだった黒崎正彦(65)がシリコンバレーを訪ねたのは 1997 年秋のことだ。アップル再建のために復帰したばかりのスティーブ・ジョブスに面会し、記憶媒体を内蔵する携帯音楽プレーヤーを使って、音楽コンテンツを配信するビジネス案を披露した。
 黒崎の狙いはブランド力に優れるアップルとの提携だった。ハリウッドに強いジョブスを巻き込めば楽曲を提供する大手音楽会社への影響力も期待できた。
 だが、構想はあっけなく頓挫する。「音楽?コンテンツ?あきまへん」「これからは情報システムでっせ」。黒崎は会長だった井植敏(75)からこう言われた。「なにわ版 iPod」構想はお蔵入りし、その後、復活したアップルと今も再建のメドが立たない三洋との差は余りにも激しい。

 黒崎氏の技術・経営の両面における慧眼ぶりには驚かされると共に、おそらく今抱いているであろう悔しさは想像して余りある。
 ちなみに、Google で黒崎氏の名前を検索してみたところ、残念ながら現在の動静を掴むことができなかった。

 対する井植氏の無能ぶりを批判するのは簡単だ。'90 年代当時のレガシーな企業経営者は、三洋電機のような大手のみならず中小・零細もおおよそ似たようなかんじだったのではないか。
 「インターネット?何だそれ」「これからはオープンシステムの時代だよ」と、まさに井植氏の発言をなぞったかのようなコトバ(おそらく IT ベンダあたりにでも吹き込まれたのだろう)を当時の経営者層から何度も聞かされた記憶が私にもある。
 そうなのだ。井植氏だけでなくとも、当時の経営者層は、そのときまさに到来していたイノベーションの波についぞ乗ることが叶わなかったのだ。そしてその原因を、経営者たちにあった無知・無関心といったものに求めるべきだ。

 だが、少なくとも井植氏をはじめとする経営者層がまったく無知・無関心だったかと言えば、それは誤りである。
 井植氏の当時の戦略じたいの是非はともかく、「情報システム」なる(おおよそそのくくりがロジカルでない)ものに対する少なからざる興味、あるいは脅威を感じていたことは想像に難くない。
 ただし、それ以降の勝敗は、そうしたロジカルでないものをいかにロジカルなものへと昇華させ、そしてそれに併せて現場からボトムアップで上がってくる有益なイノベーションを受容できたかどうかによって決まったと言える。

 今までのレガシー企業でそれができなかったことの反省は、2007 年年頭の経団連ビジョン(PDF)、いわゆる「御手洗ビジョン」に見て取れる。そこでは、「イノベーション」というコトバがこれでもかと言わんばかりに強調されている。
 しかしながら、三洋電機の井植氏が犯したような過ちが繰り返されないだろうという気分には、産業人の端くれとしては、とても「御手洗ビジョン」を読んだ限りではなれそうにないのだ。
 「御手洗ビジョン」に対する批判は既に各所でなされているため、ここでは割愛する。

 そう言えば、先日アルファブロガーの渡辺千賀氏が、日本人の現場技術者は英語が苦手なことが問題だという趣旨のことを書いていた。 私は、これは誤りであると強調したい。いかにも現場を知らない人の言いそうなことだなあと、妙なところで感心してしまった。

 冒頭の黒崎氏のようにスティーブ・ジョブスに会いに行くバイタリティを持つ人は言うまでもなく、現場の技術者、とくに IT 技術者の場合でも、卑近な例を挙げれば英文ドキュメントやエラーメッセージを読んでその意味を理解できなければシゴトにならないというのが現実だ。
 また、技術文献を検索するにあたっても、英文ドキュメントの方が充実度が高いという認識は広く持たれている。

 いくら現場スタッフが「英語に堪能」でも、結局マネジメントが愚鈍なら、イノベーションはシーズ(種)の時点から枯らされてしまうというものだ。
 では、経営者層が英語にフレンドリーであればいいのか。否、それくらいなら「ちょっとは役に立つ」程度のレベルでしかない。
 少なくとも、産業と経営に関する優良な文献は日本語(日本人の著者、あるいは訳書を問わず)でいとも簡単に手に入る。
 そういったあたりからの知識獲得を怠るのみならず、抽象的・非論理的な表現を振り回して現場を困らせる経営者や管理職こそ、英語どうこう以前に産業界から早々に退場して欲しいと切に願うのだ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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