NikkeiBP IT Pro の記事によると、企業会計審議会によって作成された、内部統制報告制度の「基準」「実施基準」が金融庁に承認され、金融担当大臣に提出されたとのことである。
記事では、「基準」「実施基準」は、企業に過度の負担を強いない内容であるということが、審議会のメンバーによって強調されたと伝えられている。おそらく、米 SOx 法の実際の運用事例なども参考にされたのだろう。
我々のように、実際に業務の現場に携わる者としては、このニュースをどのように捉えれば良いだろう。
制度が「骨抜き」にされる例は、過去に何度も問題視されたことがある。典型例としては、「ゆとり教育」の害悪を生んだと巷間でもっぱら悪評を呼んでいる教育基本法改正があるだろうか。
だが、これの本来の趣旨は、教育現場の自主性を高めることにあったのは意外と知られていない。
旧文部省の下に施行されていたそれまでの画一的な教育制度への反省に立ち、現場、とくに各自治体の教育委員会(教委)に裁量の多くを委ねようというのが本旨であった。
しかしながら、各教委は自主性を発揮する能力、あるいはスキルを著しく欠いていたというのが実情だった。というのも、それまで文部省に頼りっきりだった教育行政をいきなり自分たちに移管されても処しようがないという現実的な問題が存在していたのだ。
若干話がそれてしまった。冒頭の内部統制の件も、教育基本法の件と同様と取れなくもない。
しかしながら、制度の骨子が固まる前に、監査法人や IT ベンダ、あるいはコンサルティングファームの「勇み足」があったのもまた事実だ。
とはいえ、その勇み足を責めるのは誤りである。彼らとて、先行している米 SOx 法を参考に、文書テンプレート、いわゆる「3点セット」の研究と準備にいそしんだのである。その方針を誤りとするのは酷というものだ。
対する企業の現場、すなわち内部統制報告の義務を負う側としては、特定の文書様式を新たに準備しなくてもよくなるとすれば、これはこれで福音となるであろう。
先に挙げたような監査法人や IT ベンダ、コンサルファームからの「3点セット」の押し売りをされることはもうないとほっと胸をなで下ろしているかもしれない。
だがしかし、事態はそんなに甘くはない。
せっかく作った「3点セット」が簡単に捨てられるはずがないことくらい、一秒たりとも考えずにわかることだ。
とくに監査法人にとっては、昨年の「ライブドア事件」以降、監査の対応いかんでは自分たちの存亡にかかわる問題とされている中で、監査業務をより的確かつスムーズに、あえて悪く言い直せば自分たちの都合の良いように実施したいと考えるに相違ない。
となれば、たとえ文書化の義務が厳密なものでないとしても、予め準備しておいた「3点セット」を監査先の企業に適用することを躊躇する理由はいっさいない。さらに、もし監査先がそれに難色を示すようなことがあれば、監査業務におけるガバナンスを担保できないという「盾」を向けることもできる。
今回の「基準」「実施基準」の提出の遅れは、監査法人をはじめとする「会計サービス/プロダクト・ベンダ」たちに、顧客「囲い込み」のための時間を与えたということだったのだ。
教育基本法の改正は、学習塾や家庭教師派遣といった特定のサービス産業を「焼け太り」させた。むろん、あらゆる業務が民間に移管されることじたいは悪い話ではない。
しかしながら、制度の最終的な受益者が、例えば教育基本法の場合は教育を受ける子どもたちでなかったりだとか、あるいは内部統制についても、各上場企業じしんもしくはステークホルダーが受益者となれないのであれば、制度の本旨からは逸脱することになると思うのだが、いかがだろうか。
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