最終更新時刻:2009年11月27日(金) 8時00分
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Zune は iPod キラーか、それとも the same old thing か

公開日時:
2006/07/31 11:21
著者:
McDMaster

 今、Dead or Alive "Brand New Lover (The Dust Monkey's Love Bubble Mix)" を聴きながらエントリを書いている。この曲は 1980 年代のブリティッシュ・ディスコ・ヒットなのだが、1990 年代に向けてテクノ(YMO やクラフトワークなどの「テクノポップ」ではない。そちら方面も好きではあるが)、ハウス、クラブといったカルチャーが萌芽しつつあった中らしいサウンドの作りになっているにもかかわらず、聴いていて実に心地が良い。

 して、Microsoft が iPod への対抗馬として Zune というデバイスをリリースするらしい。おそらく英語式の発音では「ズーン」なのだろうが、仮に先日終わったサッカーW杯の開催国であるドイツふうの読み方をすると「ツゥーネ」となり、「iTunes」をドイツ語式に呼んだ場合(イトゥーネス)とあまり変わらなくなってしまう。
 おそらくドイツ語圏のギークスたちは iTunes を「アイチューンズ」と英語風に発音するのだろうが、コンシューマ・エレクトロニクス(このあたりは本エントリのキーになってくる部分なので、ご留意いただきたい)を広く売りたい場合は各言語圏の読みや文法(ちなみに、ドイツ語の男性・中性名詞では、末尾の?[e]s はおおよそ所有格を表す)に照らし合わせた上で商標などが検討されるべきだったのではないかと要らぬ心配をしてしまう。

 とはいえ、ここではとりあえずそういうことはどうでもよい。

 前置きがたいへん長くなってしまったが、Zune に関する CNET Japan の記事を少し引用しておこう。

マイクロソフト:「Zune は長期的な計画」 - CNET Japan

 Microsoft は米国時間 7 月 27 日、音楽市場での Apple Computer に対する遅れを取り戻すため、同社は多額の資金を投入する計画だと述べた。しかし、この遅れを取り戻すには数年はかかるだろうという見解も示した。

(中略)

 Microsoft は先週、「Zune」ブランドの下、デジタル音楽プレーヤーとサービスを提供していく計画を正式に認めたが、ハードディスクを搭載し、Wi-Fi 機能を備えたデジタル音楽プレーヤーが 2006 年内に発売されるという内容以外、ほとんど詳細は明らかにしていない。

上の記事を読めば、おそらく現行の Windows Media Player(以下 WMP)がこんご Zune Player のように名前を変えて登場するであろうことも想像される。さらに当該記事を読み進めば、Microsoft がコンシューマ向けの自社製品である Xbox 360(Zune リリース時にはこれも名前や世代が変わっているかもしれない)などとの連携機能も視野に入れていることがわかる。

 だがしかし、私は WMP ないしは Zune で冒頭の Dead or Alive の曲を聴きたいと思うだろうか。いや、否である。少なくとも現状においては、WMP で音楽や動画などのリッチコンテンツを嬉々としてプレイバックしようという気にはとてもなれない。
 なぜだろう。

 まず一つ触れておくべきは、iPod という製品があくまで「iTunes to go」、つまり「『お持ち帰り』のできる iTunes」であるという点である。余談だが、日本のファーストフード店のカウンターで「お持ち帰り」を表すために用いられる「テイクアウト」という表現は立派な(?)和製英語で、正確には「To go」と呼ばれる。ちなみに店内で食べる場合は「For here」だ。
 iPod と iTunes の関係を簡単に書くと、iPod に音楽ファイルをアップロードしたり、あるいはそのプレイリストをランダムにシャッフルできるようにするかどうかの機能設定などはおおよそ iTunes の側に委ねられており、iPod はあくまで iTunes、あるいはそれを介して参照できる音楽ライブラリの一部または全部が提供し得る価値の表現手段を分け与えられるといった単純な役割しか持ち合わせていない。
 しかし、その単純さこそが逆に iPod に価値を付した理由でもあることを否定はできない。コンシューマ・デバイスたるもの、使い勝手がシンプルでなければ市場への訴求力は保有し得ないのだ。
 対して Zune は、冒頭の記事にもあるように Wi-Fi など豪華(?)なオプション機能を備えるだろうと言われている。さすが技術の Microsoft、と言いたいところだが、そのアドバンテージが果たして WMP との連携という部分もあわせてどれだけの魅力を消費者に対し訴求するかは未知数である。

 また、iTunes についてとくに触れれば、必ずしもその機能や UI に十分以上のブラッシュアップが施されていて「For here」に相応しい使い勝手かどうかは判断の難しいところだが、ローカル HDD 上の「ライブラリ」、インターネットの iTunes Music Store、あるいは CD バーニング・ファンクションなど、コンピュータを使用する上での「音楽ポータル」としての役割の網羅のされ方は十二分以上である。
 しかしながら、対して WMP の UI は、いろいろ考えて作られていることは理解できるのだが、ほとんど使われないような冗長な機能が一部にあったり、あるいはときにユーザから不満が呈される iTunes の UI よりもさらに(ソフトウェア的に)洗練されてない UI があったりと、PC ユーザとして WMP を使って音楽を楽しもうという積極的な動機付けを起こしにくいのではないかと考えられる。
 もっとわかりやすく表せば、「格好良くない」あるいは「クールでない」ということだ。

 ただし、Zune についても、過去において Microsoft Office が Lotus 1-2-3 や一太郎といった製品群を市場から漸次駆逐したように、気が付いてみたらいつの間にかポータブル・ミュージック・デバイスのスタンダードとなっているということはあり得なくもない。
 Office についてさらに触れておけば、当初その UI に接したときは、それ以前のコンソール・ベースのワープロや表計算ソフトウェアにあった UI との差異を消化することに苦労したものである。やがて 1995 年頃を境に Windows OS がより広く普及したときも、人々のコンピュータ・リテラシが向上するにつれ、必ずしも Office アプリケーションに全幅の信頼を置くのが安全ではないという認識が広まったこともある。Office は、意外にキッチュなものだったのかもしれない。
 しかし、そうしたいくつかの危機を乗り越えて、今や Office はドキュメント作成ツールのデ・ファクト・スタンダードの地位を確立しているのは周知のとおりである。

 Zune についても、リリース当初はいろいろな不具合や洗練されない部分が表出することも多々あるだろう。それこそ「キッチュ」と呼ばれるかもしれない。だが、Office が普及した過程と同様に時間を掛けた試みがされるのは相違なく、それが冒頭の記事の「数年はかかるだろうという見解」に現れていると言える。場合によっては、Microsoft の試みがコンテンツ・ホルダーたちの合従連衡を促すこともあるかもしれないのだ。
 とくにコンシューマ AV 機器のデジタル化が進むことにより、Zune が市場において有利な立場を得ることも考えられなくはない。そういう中で「iTunes ありき」、つまりパソコンありきの iPod が王座を維持できるかどうかについては目が離せなくなってくる。
 既に、iPod と iTunes を切り離すべきという声も上がっているくらいなのだから。

 ビル・ゲイツが経営の一線から退くことを表明している Microsoft がこんごどのように変わっていくかともあわせて、Zune の行方に注目してみたい。Dead or Alive を聴きながら。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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