Neuralink、脳埋め込みデバイスの最新状況をサルとブタの実験で披露

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年12月02日 09時53分

 人間の脳とコンピューターを直接つなぐことを目指す、Elon Musk氏の新興企業Neuralinkは米国時間11月30日、目の不自由な人の視覚支援と、脊髄損傷患者の歩行支援という、2つの医療分野における進捗を発表した。

 Musk氏が統括する5社の1つである同社は、髪の毛よりも細い数千本もの電極を人間の脳の外側表面に埋め込む技術を開発している。各電極は極細のワイヤーで、25セント硬貨サイズのチップ「N1」に接続されている。N1はリモート充電できるバッテリーを搭載し、頭蓋骨に開けられた穴に埋め込まれ、外界とワイヤレスで通信する。

 この技術はまだ、医療用途で使用を開始するには程遠く、ましてや、Musk氏の究極的なビジョンである、人間とAIをつなぐスーパーインテリジェンス層の構築ははるか先の話だ。しかし、同社は2時間以上にわたって開催した「Show and Tell」イベントで、人間の臨床試験の申請書類を米食品医薬品局(FDA)に提出済みで、6カ月以内の開始を目指すと述べるなど、目覚ましい進歩を遂げている。

 「われわれの目標は、何十年間も暗闇の中で生きてきた人のために光を灯すことだ」と、Neuralinkの研究者であるDan Adams氏は語った。同氏は、カメラデータを脳に対応する形式に再パッケージ化して、視覚野に直接供給する取り組みに携わっている。

四肢麻痺患者の歩行支援を目指すNeuralink の技術

 人材採用を目的とした同イベントでNeuralinkは新たな成果を披露した。Sakeと名付けられたサルが思考によって、仮想キーボード上のプロンプトに従い、文字を入力する。埋め込まれたデバイスはワイヤレスで充電される。サルをフルーツスムージーでおびき寄せて、充電器を埋め込んだ枝の真下に座らせることによって、充電が行われる。

 一方、この日に発表された最大の成果は、同じ電極を使って、脳と神経系を構成するニューロンに信号を送り返すというものだ。

 ある実験では、ブタの脊髄に埋め込まれた電極を使用して、さまざまな足の動きが制御されていた。この技術は最終的に、四肢麻痺患者による歩行や手の使用の支援につながる可能性がある。Neuralinkの手法は、脳の運動指令を傍受して足に伝達するだけでなく、四肢からの感覚信号を取得して脳に送り返すことにより、何が起きているかを脳が把握できるようにする。

脳の運動指令を傍受して伝達する図
提供:Stephen Shankland/CNET

思考で映像を見て文字を入力

 別の実験では、カメラで取得した視覚データをサルの視覚野に供給し、仮想映像を見せることによって、別の場所にいるかのような錯覚をサルに与えていた。Neuralinkはこの技術が、視覚障害者のための人工視覚につながることを期待している。

 Neuralinkの第1世代技術では、1024個の電極が使われているが、同社は今回、1万6000個を超える電極を使用する次世代モデルを披露した。それだけの詳細情報が得られれば、視覚障害者が目にする映像の忠実度が劇的に高まることになると、Adams氏は述べた。

 同社のもう1つの目標は、麻痺患者が埋め込みデバイスを使用して、脳で文字を入力できるようにすることだ。

思考によって文字を入力するサルのSake
思考によって文字を入力するサルのSake
提供:Stephen Shankland/CNET

 「基本的に外の世界とのインターフェースをこれ以外に持たない人が、手を動かせる人よりも器用にスマートフォンを操作できるようになると確信している」とMuskは語った。

Neuralinkだけではない

 ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)技術にしてもブレイン・コンピューター・インタフェース(BCI)技術にしても、Neuralinkだけが追求しているわけではない。学術研究者らが研究論文を安定して生み出しておりBlackRock NeurotechSynchronParadromicsといった新興企業も活発に活動している。NUROのように、手術が不要な非侵襲アプローチを採用しているところもある。

 Neuralinkがこうしたほかの取り組みと異なるのは、大量生産を目指しているという点だ。その実現のため、同社はこの技術をできる限り自動化することに取り組んでいる。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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