スマホに通信を提供する試験衛星「BlueWalker 3」--天体観測への影響に懸念も

Eric Mack (CNET News) 翻訳校正: 湯本牧子 高森郁哉 (ガリレオ)2022年11月16日 14時45分

 試験衛星「BlueWalker 3」のアンテナ展開が成功した。地球低軌道(LEO)上でこれまでに類を見ない約64平方メートルのアレイを展開したこの衛星は、地上のモバイルデバイスに直接5G対応のブロードバンド接続を提供するよう設計されており、実質的に世界で最も背の高い携帯電話電波塔のようなはたらきをする。

アンテナを展開したBlueWalker 3
アンテナを展開したBlueWalker 3
提供:AST SpaceMobile

 BlueWalker 3はアレイの片側に多くの太陽電池が搭載されており、エネルギーを集めて反対側のアンテナに電力を供給する。

 BlueWalker 3は、テキサス州に本拠を置く衛星通信会社AST SpaceMobileが運用する試験衛星で、9月にSpaceXのロケット「Falcon 9」で打ち上げられた。すべてが計画通りに進めば、ASTはさらに大型の衛星「BlueBird」を100基以上打ち上げることになる。

 ASTの最高経営責任者(CEO)を務めるAbel Avellan氏は、プレスリリースで次のように述べている。「居住地や勤務地に関係なく、すべての人がセルラーブロードバンドを利用する権利を持つべきだ。われわれの目標は、世界中で数十億人の暮らしにマイナスの影響を及ぼしている接続性の格差を是正することだ」

 ASTは、Vodafone、楽天モバイル、AT&T、Bell Canada、Telefonica、Telstraなど、世界各国の移動体通信事業者との間で「合意と理解」を得たとしている。同社が宇宙で設備を展開するサービスは、セルラーブロードバンドの提供範囲を拡大し、ゆくゆくは携帯電話の圏外をなくすことを目指す。

 Vodafoneの研究開発(R&D)担当責任者でASTの取締役を務めるLuke Ibbetson氏は、「特に、地形的に従来の地上ネットワークでは通信が極めて困難な地域」の格差を是正したいと述べている。

 BlueWalker 3は、宇宙ベースの5Gという新たな可能性に関心を寄せる人々だけでなく、天文学者らからも注目されている。

 この衛星は夜空でひときわ輝く星のように明るく光るため、科学者らは、暗い空を保つ上でBlueBirdのコンステレーション(衛星群)が全体としてどのような影響を与え得るのかや、天体観測にどのような干渉を及ぼし得るのかを懸念している。また天文学者らは、特にSpaceXのブロードバンド衛星「Starlink」など地球低軌道上を周回する衛星が急増していることに警鐘を鳴らしており、深宇宙の科学的観測にとって障害になりかねないと訴えている。

 天文学者のCees Bassa氏はBlueWalker 3について、地球上空を通過する際に、当然ながら夜空で最も明るい光点の1つになると指摘している

 米航空宇宙局(NASA)に勤務していた天文学者Tony Phillips氏は、宇宙天気関連情報サイト「Spaceweather.com」で、BlueWalker 3の明るさは国際宇宙ステーション(ISS)と同程度と思われるので、当初心配されていたほど大きな問題にはならない可能性があると述べている

 一方、同氏は「ただ、安心するのはまだ早いかもしれない」として、ASTがBlueBirdを100基以上打ち上げる予定であることに触れ、「BlueBirdの衛星群は多くの天体観測を台無しにしてしまうおそれがある」とした。

 BlueWalker 3を自分の目で見たいという人は、Heavens Aboveなどの衛星追跡サイトで自分の位置情報を入力すると、この試験衛星が上空を通過するタイミングを確認できる。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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