USB-C対応が迫る「iPhone」、それでも「Lightning」規格は当面存続か

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 湯本牧子 高森郁哉 (ガリレオ)2022年11月09日 15時06分

 Appleは、欧州連合(EU)が2024年までに域内で販売されるすべてのスマートフォンに共通の充電ポートとしてUSB Type-C(USB-C)に対応することを義務付ける指令に従う意向だと、同社の上級幹部らが認めた。つまり、「iPhone」は今後、2012年より採用されている「Lightning」コネクターから移行する必要があるということだ。

iPhoneのコネクター接続部分
提供:Sarah Tew/CNET

 ただし、これは必ずしもLightningケーブルがすぐに廃止されることを意味するわけではない。今なおLightningポートを搭載しているアクセサリーは多く、旧モデルのiPhoneも普及していることから、同ポートは同社の製品ラインアップの中で予想以上に大きな役割を担っている可能性がある。

 Apple製品でUSB-Cが採用される傾向が高まっているのは周知の事実だ。「iPad」に関しては、2021年に発売された第9世代を除き、現在販売中のモデルすべてに搭載されている。「MacBook Pro」と「MacBook Air」にもUSB-Cポートが搭載されている。

 しかし、消費者もテック分野の評論家も、iPhoneにUSB-Cが搭載されることを待ち望んできた。2021年には、改造によりUSB-Cポートを搭載した「iPhone X」が「eBay」で8万6001ドル(当時のレートで約980万円)で落札されたこともある。iPhone、iPad、「Mac」の充電には同じケーブルを使いたくないわけがない。EUの新たな指令は、長期的にはよりシンプルな充電体験に向けた一歩となる。しかし、消費者は旧型アクセサリーと新型iPhoneの間で充電ケーブルを使い分けることになりかねず、移行期間に不便が生じる可能性もある。

 iPhone以外の製品には、有線充電にLightningケーブルでの接続が必要なデバイスがいくつかある。具体的には、イヤホンの「AirPods」「AirPods Max」、スタイラスペン「Apple Pencil」の第1世代(奇妙なことに、USB-Cポートを搭載した新型iPadで動作する唯一のモデル)、「Magic Mouse」「Magic Trackpad」「Magic Keyboard」などだ。つまり、これらのデバイスのユーザーは、将来USB-Cを搭載したiPhoneを購入しても、ケーブルを交換する必要が生じるかもしれない。

 また、iPhoneユーザーの中には最新モデルを選ばない人がいるという点も重要だ。Appleは、新型のiPhoneを売り出す際に、よく旧モデルを値引きしてきた。例えば、現在のラインアップには、2021年の「iPhone 13」と2020年の「iPhone 12」がまだ残っている。また、2021年9月にiPhone 13を発表した後も、iPhone 11を499ドル(日本では当時6万1800円)の低価格でラインアップに残していた。同社がこの慣例を維持するなら、2023年のラインアップにもLightningポートを搭載したiPhoneが残っている可能性が高い。

 多くの買い物客が最新のiPhoneに殺到するとしても、旧型のiPhoneには相当規模の市場がある。Counterpoint Researchの調査によると、iPhone 11は2019年に発売されたにもかかわらず、2021年のスマートフォン世界販売台数で第5位だった。また、Consumer Intelligence Research Partnersによると、米国で2022年1~3月期のiPhone販売台数のうち、iPhone 11、「iPhone SE」、4年前に発売された「iPhone XR」の合計が15%を占めたという。

 Counterpoint Researchが行った別の調査によると、整備済みiPhoneも人気があり、2021年の整備済みスマートフォンの世界市場で40%以上を占めたという。2012年以降のiPhoneはすべてLightningで充電されることを考えると、今後整備済みモデルを購入する人がLightningケーブルを持ち続けたがるのは確実だ。これに関連する点として、Counterpoint Researchはさらに別の調査で、顧客が高価格を避け、より持続可能な購買決定を行った結果、整備済みスマートフォンの需要が2021年に15%増加したことを明らかにした。

 また、インフレによって他の日々の出費が抑制されているため、人々は現在持っているスマートフォンをもっと長く使い続けたがるかもしれない。調査会社International Data Corporation(IDC)によると、インフレによる需要減退を受けて、2022年の世界のスマートフォン出荷台数は前年比で6.5%減少する見込みだという。また、企業のデバイス下取りプログラムの開発支援も手掛ける保険会社Assurantによると、下取りされたスマートフォンの平均使用年数が初めて3年半に達したという。旧型iPhoneが使われ続けるほど、Lightningケーブルも流通し続けることになる。

 長期的に見れば、USB-Cへの移行はiPhone所有者にとって状況の改善となる。この変更により、最新のiPad、Mac、そしていずれはiPhoneを1本のケーブルで充電できるようになるのだ。EUがそもそもUSB-Cを義務化した理由もそこにある。ワイヤレス充電の改善、Bluetooth対応アクセサリーの普及、Appleの新しい接続システム「MagSafe」により、iPhoneが有線接続への依存を減らしつつあることを考えると、今回の変更は理想的なタイミングでもある。

 だが、こうした移行には時間がかかる。そして、同社がEUの決定にどのように従うかについては、まだ多くの疑問が残されている。例えば、USB-Cへの切り替えを2023年に行うのか、それとも2024年まで待つのかは不明だ。USB-Cを欧州で販売するiPhoneにのみ採用するのか、それとも世界標準にするのかも分かっていない。

 しかし、確実なのは、iPhoneのUSB-C対応が、すべてのデバイスで1種類の共通ケーブルを使う第一歩になり得るということだ。とはいえ、それは一夜にして実現するわけではない。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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