「TikTok」という誤情報の地雷原--偽動画を見抜くポイントは

Queenie Wong (CNET News) 翻訳校正: 編集部2022年10月18日 07時30分

 こんな30秒の「TikTok」動画がある。場所は米ワシントン州の投票所。投票用紙を集めようと袋を差し出す選挙スタッフに、1人の女性が質問をしている。

Fake Newsと表示されたスマートフォンとTikTokのロゴ
提供:Rafael Henrique/Getty Images

 「どうして投票箱に入れさせてくれないの」。女性が車で投票箱に近づきながら尋ねる。やり取りの様子をスマートフォンで撮影しながら。

 8月2日はワシントン州クラーク郡の予備選挙の日だ。午後8時きっかりに投票は締め切られるため、投票用紙を集めているのだとスタッフが答える。不満そうな女性に、票は投票箱に入れてもいいとスタッフが伝える――。

 このTikTok動画は「Twitter」や「Facebook」でも拡散された。多くの人がこの動画をシェアし、不正投票の証拠だと言い立てた。このスタッフは法律を守らず、投票箱を所定の時間より早く閉めたのだと主張した人もいた。しかしファクトチェッカーらはこうした主張を否定し、このスタッフの行動は職務を逸脱したものではないというクラーク群当局のコメントを紹介した。このスタッフは、投票所で列を作っている有権者らが時間内に投票を済ませられるよう手助けしていただけだった。

 広く拡散されたこの動画は、11月の中間選挙を前に米国の有権者らが遭遇しうる、誤解を招く動画の一例にすぎない。ソーシャルメディア各社は、投稿の取り締まりを強化しているが、ショート動画にはまだ十分に手が回っていない。例えば、このTikTok動画にはアプリの「Elections Center」(選挙センター)へのリンクが貼られていたが、動画が誤解を招くものであることを注意喚起するメッセージは表示されていなかった。

 急成長するTikTokに対抗しようと、Metaが運営するFacebookと「Instagram」、Googleの「YouTube」など、ソーシャルメディアの巨人が軒並みショート動画を採り入れたことを考えると、これは厄介な脆弱性だ。大手プラットフォームに投稿されるショート動画が増えるにつれて、誤解を招く動画や虚偽の主張を展開する動画が蔓延(まんえん)するリスクも高まるからだ。

 ソーシャルメディア各社も、誤情報の削除やラベル付けには励むだろうが、ネットには日々、大量のコンテンツが投稿されており、虚偽の主張をすべて排除することはできない。

 「人を誤解させる方法はたくさんあり、必ずしも複雑な手口が用いられるとは限らない」と指摘するのは、情報源の信頼性を評価するNewsGuardのシニアアナリストJack Brewster氏だ。

 NewsGuardのアナリストらは、TikTokの検索結果に表示される動画の20%近くに誤情報が含まれていることを明らかにした。

 TikTokの広報担当者は声明を出し、「TikTokのコミュニティガイドラインは、有害な誤情報を許容しないこと、こうした情報は削除すること、を明確に定めている」と述べた。「当社は外部の独立したファクトチェッカーと提携し、コンテンツの正確性を評価している」

 ソーシャルメディア各社は、人間によるレビューと人工知能(AI)システムを使って、問題のあるコンテンツに目を光らせている。例えばMetaは、ファクトチェッカーが発見した問題のある動画にラベルを付けている。Twitterは、ファクトチェックのためのプロジェクト「Birdwatch」を立ち上げ、誤解を招くようなツイートや虚偽のツイートに他のユーザーがメモを残せるようにしている。しかし文字や音声、画像を含む動画は、文章だけの投稿よりもチェックが難しい。

 このため、この種の誤解を招くコンテンツにだまされないよう、各自が注意することがかつてないほど重要になっている。虚偽のショート動画を見破るためのポイントを紹介しよう。

文脈を変える編集

「ファクトチェッキング」というワードとキーボード
提供:Jakub Porzycki/Getty Image

 動画は物語の一部を切り取ったもので、重要な文脈を意図的に失わせるような編集も可能だ。特に30秒CMより短いショート動画は、こうした改ざんを行いやすい。

 ポインター学院でMediaWiseプロジェクトを率いるAlex Mahadevan氏は、ソーシャルメディアを利用する際は自分の感情を意識することが重要だと述べる。MediaWiseは、オンラインで目にするコンテンツに批判的な視点を持つ方法を発信している。

 「ネット上で驚くようなコンテンツを見た時は、嘘が含まれている可能性を疑うべきだ」とMahadevan氏は言う。

 8月、ファクトチェッカーらはBarack Obama元米大統領が虚偽の情報を拡散させようとしていると主張する40秒のTikTok動画の嘘を見破った。このモノクロ動画を見ると、Obama元大統領が虚偽情報の拡散方法を伝授しているように見えるが、実際の動画はObama大統領が偽情報を批判するものだった。

 この動画は、誤解を招くように意図的に編集されており、加工後のObama元大統領は次のように語っているように見える。「疑問を投げかけ、デマをまき散らし、陰謀論を植えつければ、市民は何を信じていいのか分からなくなる。人々がリーダーや主流メディア、政治組織、お互いへの信頼を失い、真実を疑うようになれば、作戦は成功だ」

 これはObama元大統領が4月にスタンフォード大学の講演で語った言葉だが、実際にはロシアなどの独裁政権が虚偽の情報を広めるために用いる方法について述べたものだった。このように、発言をまったく反対の意味に仕立て上げるのはそれほど難しいことではない。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]