JR西、鉄道の安全を守る「人型」の重機ロボ--9月19日から京都鉄道博物館に展示

 JR西日本は、先端ロボット工学の社会実装を行う人機一体と、信号機や自動改札機などの製造メーカーである日本信号と共同で開発を進める多機能鉄道重機「零式人機 ver.2.0」の特別展示を9月19日から京都鉄道博物館で実施する。期間は10月2日まで。

キャプション
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 多機能鉄道重機は、汎用人型重機ロボットの零式人機と鉄道工事用車両を融合させた新しい重機で、主に鉄道の電気設備作業など作業員の負荷が高い高所のインフラメンテナンスを機械化し、生産性と安全性を向上することを目的に開発が進められている。

 トラックと一体化した重機はクレーンの先に搭載された人型ロボット(上半身)を操縦席からハンドルで直感的に操作できるのが特徴だ。汎用性を高めることで通常の作業に加えて災害時の保守での活用も視野に入れている。

高所作業モード
高所作業モード
ロボット本体
ロボット本体

 2本のアームは大出力の電動アクチュエータを緻密にコントロールする独自技術により、つかむ、回す、ひねるといった動作がスムーズにでき、人の何十倍もの力を出せる。一方で、タマゴをそっとつまむことも可能だ。アームにかかる重さや反動を操縦者にフィードバックするバイラテラル制御技術によって、まるでロボットとつながっているような感覚になり、簡単な操作であれば初めてから15分ほどで誰でもできるようになるという。

操縦者は自分の手の動きをそのままロボットに伝えられ、アームからの感覚もフィードバックされる
操縦者は自分の手の動きをそのままロボットに伝えられ、アームからの感覚もフィードバックされる
操縦席内で操作する様子も披露された
操縦席内で操作する様子も披露された

 操縦者はロボット頭部のカメラからVRゴーグル越しに周囲の映像を見ることでXYZ方向が把握しやすく、ガイド表示機能も用意されている。

ロボットのカメラからの映像
ロボットのカメラからの映像

 デモンストレーションでは多機能鉄道重機の動作を間近で見られ、観客が細長いスポンジ状のものを零式人機に手渡し、受け取った後に左右で持ち替えたりする動きが披露された。

やわらかいものや薄いものなど形状が異なっても問題なく掴める
やわらかいものや薄いものなど形状が異なっても問題なく掴める

 見学者からの「なぜ人型にしたのか?」という質問に対し、「作業を機械化、自動化するだけなら人型でなくてもいいが、できるだけさまざまな作業ができるよう汎用性を高めるには、人間と同じ2本のアームがあるのが最も操作しやすいとわかった。カメラも全体が見やすい位置を考えると結果的に人型になった」と回答する。

司会担当者に参加者から多くの質問が寄せられていた
司会担当者に参加者から多くの質問が寄せられていた

 ロボットを開発する人機一体の企画部広報部の待鳥奨太氏も「前回から今回のバージョンに開発を進めるにあたり、最も苦労したのはダウンサイズすることだった」と言う。「素早く現場へ移動して作業するにはトラックに載せられる重さにする必要があり、機能とのバランスを取りながらここまでコンパクトにした。とはいえ、現在はまだ試作段階で、屋外作業での耐久性や耐水性、安全性についてはこれから試験を行いながら調整する。デザインもかなりインパクトのあるものにしているが、実際に現場で導入する場合にどうするかは検討中だ」(待鳥氏)

トラックに載せられるサイズにすることに苦労したという
トラックに載せられるサイズにすることに苦労したという

 製品化に不可欠な安全性や運用性は日本信号がノウハウを提供しており、JR西日本では2024年春の現場導入を目指している。社会課題である労働力不足に関しては、作業員が約3割できるというが、あくまで目的は作業の安全と質を高めることで、新しい重機の導入で新たな人材を呼び込むことも期待しているようだ。

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多機能鉄道重機「零式人機 ver.2.0」


 特別展示では、実際の動作を間近で閲覧できるデモンストレーションを、9月23〜25日、10月1、2日に開催予定。9月24日には開発の経緯、多機能鉄道重機に実装している技術などを説明する講演会も開催予定だ。時間や参加方法については京都鉄道博物館の公式サイトで要事前確認。

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