自律飛行型ドローンSkydioの「3D Scan」の実力--人の手を介さず、自動撮影

 Skydioとセンシンロボティクスは9月6日、自律飛行型ドローン「Skydio」のオプションである「3D Scan」の飛行デモを実施した。場所は、神奈川県川崎市にある実証フィールド「ENEOS カワサキラボ」。

 ENEOS カワサキラボは、2000年まで稼働していた石油プラントの跡地で、ドローンやローバーなどの実証実験や異業種間協業などを目的に、センシンロボティクスとENEOSホールディングスが2021年に共同開設した。

 Skydioは、障害物を回避して自律的に飛ぶ機体として知られるが、今回のデモではこれに加えて、3Dデジタルモデルの生成に適した静止画も、人の手を介さず自動で撮影できることを披露した。

 
 

 3Dデジタルモデルは、デジタルツインの世界でシミュレーションを行うためなど、需要が高まっている。しかし、自律飛行ができないドローンでは、パイロットの操縦スキルに精度が依存し、ハードルは高い。

 マニュアル操縦で、対象物との離隔を保ったまま一定間隔に大量撮影するには、非常に高いスキルが要求され、かつ作業時間も長くかかる。また、3Dモデル生成中に発覚した撮り損ねの再撮影も、ネックになっているという。

自律飛行型ドローン「Skydio 2」
自律飛行型ドローン「Skydio 2」

 このようななか、Skydioは自律飛行という性能をベースに、対象物を自動撮影できるソフトウェアとなる3D Scanをオプションとして用意。3Dデジタルモデルの生成に役立つと注目されている。

 フライトデモでは、ENEOS カワサキラボ内にある石油タンクを撮影した。機体は、3D Scanで予め定義された通り、石油タンクの周りを自律的に飛行し、石油タンクの外観画像約375枚を、飛行ルート設定も含めて約40分間で取得することに成功した。

 
 

 取得データから3Dデジタルモデルを生成するのにかかった時間は、マシンスペックなどによって変動するものの、今回は約6時間とのこと。終業後、寝ている間にできあがる。仕上がりも、サビなど劣化状況を経年比較するには、十分耐えうる精度だったという。

自律飛行型ドローン導入の効果

 自律飛行型ドローンSkydioの開発、製造を手がける米国のユニコーン企業Skydioは、2020年11月に日本法人を設立して、B2B向けに事業を展開してきた。現在、 NTT コミュニケーションズ、ジャパン・インフラ・ウェイマーク、FLIGHTS、センシンロボティクス、KDDI smart droneとのパートナーシップを発表しているが、センシンロボティクスとは2022年4月に業務提携を開始。同年7月にセンシンロボティクスが製品販売を開始した。

 Skydioの最大の特徴は、「AIによる自律飛行」だ。機体のアーム先端にある6つのカメラで、機体の周囲を360度全方位的に認識して、障害物を回避しながら自律的に飛行できる。対象物との最小離隔は、運用環境に合わせて、飛行前に予め設定しておく。

(Skydio合同会社説明資料)
(Skydio合同会社説明資料)
6本アームの先端に上下3つずつカメラがある
6本アームの先端に上下3つずつカメラがある

 Skydioは熟練パイロットではなくても運用しやすく、操縦トレーニングコストや、運用中のクラッシュリスクの低減を見込める。日本ではすでに1000台ほど出荷したという。主な用途は、建設現場の進捗管理や、老朽化したインフラの点検などだ。

 米国のシアトルにあるドローンサービスプロバイダ企業では、建設現場の管理にドローンを使用してきたが、使用機体をDJIの「Phantom 4 Pro」からSkydioに切り替えて、明らかに効率が上がった事例もある。

(Skydio合同会社説明資料)
(Skydio合同会社説明資料)

次に注目される「3D Scan」とは

 橋や屋内などの非GPS環境下や、強い電磁波を発する鉄塔などでも、障害物を回避しながら自律飛行できるというSkydioの特長は話題になって久しいが、次に注目されつつあるのがオプションのソフトウェアとなる3D Scanだ。

 例えば、建設現場における進捗管理はもちろん測量や、点検での3次元での劣化状況の比較、災害時の全体状況の把握など、幅広く活用が期待されているという。センシンロボティクスは、すでに共同で実証実験を開始した顧客もあると明かす。

(センシンロボティクス説明資料)
(センシンロボティクス説明資料)

 フライトデモでは、石油タンクの周りを機体が自律的に飛行して、3Dデジタルモデルを生成するための静止画撮影を、自動で行う様子が披露された。

 
 

 最初にパイロットが、キャプチャの仕方を2Dか3Dの2択から選び、マニュアル操縦で機体を飛ばして、飛行範囲を決める。続いて、対象物との離隔やラップ率などの撮影に関する定義を行う。

 
 

 機体は、パイロットが定義した内容に従って飛行し撮影する。下の画像の白い線は、機体が自律的に経路を計算して飛行しながら、静止画を撮影していった軌跡だ。

 
 

 撮影中にパイロットがすることは、SkydioアプリのAR表示で、進捗を確認するだけだ。立体構造物の場合は、対象物の周りを螺旋状に繰り返して飛行することが多いという。しっかり撮影できたエリアから、対象物はAR上で紫色に塗られていく。撮影したデータはSDカードに保存される。

 
 

 撮影が完了すると離陸地点に戻ってくるが、途中でバッテリー残量が不足すると機体は離陸地点に自動帰還して、バッテリーを交換すればミッションの途中から撮影を再開するという。バッテリーは手軽なマグネット着脱式だ。

 
 

Skydioの撮影データをもとに生成された石油タンクの3Dデジタルモデル


 3D Scanを利用するためには、機体の購入と自律飛行ソフトウェア「Skydio Autonomy Enterprise Foundation」のライセンス契約に加えて、オプションのソフトウェアである「Skydio 3D Scan」のライセンス契約が必要だ。提供形態や価格は、Skydioの5社のパートナーで異なるという。

 ちなみにセンシンロボティクスは、機体とライセンス(Skydio Autonomy Enterprise Foundation、Skydio 3D Scan 1年分の年額費用)、研修(エントリー、アドバンス計2日間)をセットで販売する。Skydio 2+の場合、価格(税別)は218.8万円で、昨今の円安の影響で今後変動する可能性もあるという。また取得データから3Dデジタルモデルを生成するには、任意のフォトグラメトリのソフトウェアを使うため、このコストも見込む必要がある。

 なお、両社の連携については、現時点では センシンロボティクスが提供する業務自動化クラウドソリューション「SENSYN CORE」のデータ管理機能「Datastore」とは連携が完了しており、Skydioの取得データを管理できるという。例えば、Skydioで撮影したデータを位置情報をもとに自動仕分けするなどだ。

 今後、データの解析やレポート化まで含めた業務フローの一元化を目指すセンシンロボティクスと、SDK未公開のSkydioがいかに連携を深化させるのかは気になるところだ。

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