スペースデータ、衛星データからバーチャル空間に「もう1つの世界」を自動生成するAI開発

 メタップスの創業者である佐藤航陽氏が代表を務めるスペースデータは5月31日、衛星データと3DCGを活用してバーチャル空間に世界を自動生成するAIを実験的に開発したと発表した。

画像は東京都内の一部の地域をAIに再現させたもの
画像は東京都内の一部の地域をAIに再現させたもの

 同社によると、人工衛星から取得できる地上の静止画像と標高データ(DEM・DSM)に機械学習を行い、地上の構造物を自動で検出・分類・構造化。AIに地上の3Dモデルを自動生成させ、3DCG技術によって石・鉄・植物・ガラスなどの細かな材質も自動的に再現した。これらを、ひとつのシステムとして統合することで実現しているという。

 Google Earthに代表される従来の3D地球儀は、衛星写真や航空写真を3Dモデルに貼り付けた形で提供されることが一般的だが、俯瞰的な視点での地上を再現するには向く一方で、人間が歩く一人称視点では写真の解像度が足りず劣化すると同社では指摘。VR・ゲーム・映像制作・自動運転など、高度なビジュアルが求められる領域では活用が進んでいなかったと説明する。

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 今回開発したAIアルゴリズムは、従来の3D地球儀が苦手とする人間視点(一人称視点)での3Dモデルを自動生成を得意としているという。また、衛星データに機械学習をかけて地上の構造物の意味(物体の種類・形状・色・材質・高さ・広さ・役割など)をシステムに一度理解させた上で3Dモデルに再変換をかけているため、物体に近づいても景観を劣化させずに表現が可能。これにより、VRやゲームや映像制作といった、三次元空間を人間の視点で動き回るような用途にも活用しやすいとのこと。

 加えて、従来の3D地球儀の場合は、写り込んだ看板や広告などの肖像権や著作権を犯した状態で提供されることが大半であり、企業がそのまま活用するには法的にグレーな状態だった。同社のAIアルゴリズムでは、地上の構造物を学習させた上で、AIによって看板などを除いた確率的に最も近い3Dモデルを自動生成させる手法を用いているため、従来の3D地球儀にある問題も気にせずに利用が可能だという。

 昨今、現実世界と瓜二つの仮想世界を作ってさまざまなシミュレーションに役立てる「デジタルツイン」が世界中で注目を集めている。しかし、現実世界の精密な3Dモデルを作るのはコストが高く、各国でも首都圏の一部でようやく基礎的な情報の公開が始まった段階にある。

 そこで同社は、AIによって自動生成された地球のさまざまな地域の3Dモデルを公開し、誰でも無料で使えるように無償提供していく予定。2021年内には、先進国の主要都市の3Dモデルを生成できるように衛星データの学習量を増やし、AIアルゴリズムのブラッシュアップを続けていくとしている。

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