新型コロナウイルス関連

ソニー、通期見通しは上方修正--新型コロナウイルス影響で打ち消す可能性も

 ソニーは、2020年3月期第3四半期(2019年10~12月)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比3%増の2兆4632億円、営業利益は同20%減の3001億円、税引前利益は同9%減の3103億円、四半期純利益は46%減の2295億円となった。

 金融とイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野で大幅増収があったものの、営業利益は前年同期比にEMI連結子会社化に伴う再評価益を計上していたこと、音楽分野、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野で大幅減益があったことなどから、増収減益となった。

 なお、2020年3月期第3四半期累計(2019年4~12月)の連結業績は、売上高が6兆5111億円、営業利益は8100億円と前年とほぼ横ばい。税引前利益は同11%減の8034億円、四半期純利益は同31%減の5695億円になっている。

2019年度3Q連結業績
2019年度3Q連結業績
2019年度1~3Q連結業績
2019年度1~3Q連結業績

 大幅減益となったG&NS分野は、「PS4」のハードウェアの販売数量減、サードパーティ製のソフトウェアの減収、為替の悪影響などにより、売上高は前年同期比で1585億円減の6321億円、営業利益は196億円減の535億円となった。

 ソニー 専務CFOの十時裕樹氏は「発売から7年目となるPS4は、次世代機PS5の発表もあり、販売台数が減少している。2020年度にかけて移行期に入ると思うが、過去の世代交代とは異なるスムーズな移行になるよう考えている。過去の移行期に比べ、パッケージからネットワークにビジネスモデルが変化しており、そちらで安定的な収益が見込める。それは大きな違い。また独自仕様のコンソールを提供していたが、PS4からは汎用的なアーキテクチャーで、アフォーダブルな価格で提供することを努力している。このあたりも円滑な移行に貢献してくれると思っている」とコメントした。

ソニー 専務CFOの十時裕樹氏
ソニー 専務CFOの十時裕樹氏

 同様に大幅減益となった音楽分野は、2019年3月期にEMIの連結子会社化による再評価益1169億円計上していたことが大きく影響。加えて、モバイルゲームアプリ「Fate/Grand Order」が日本において減収となった。売上高は76億円増の2169億円となったが、営業利益は同1108億円減の363億円。ただし「音楽事業はストリーミング市場が安定して成長している」(十時氏)とした。

 映画事業は、売上高が同407億円減の2360億円、営業利益が同62億円減の54億円となり、減収減益。前年同期は映画「ヴェノム」により、劇場興行収入が好調だったが、今期は期待作「ジュマンジ/ネクスト・レベル」の貢献が第4四半期以降になるとのこと。「そのほか公開作品も一部期待に届かないものがあった」(十時氏)と言う。

 減収増益となった、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野は、スマートフォン、テレビの販売台数減が響き、売上高は同627億円減の6504億円、しかし、モバイル・コミュニケーションにおけるオペレーション費用の削減により、営業利益は同141億円増の803億円となった。

 十時氏は「年末商戦は、主力のテレビ、ミラーレスカメラを中心に厳しい戦いになったが、価格や在庫のコントロールはできた。デジタルカメラ全体でも前年同期を上回る実績を残し、テレビは高付加価値、大画面モデルに集中することで平均単価を維持できた」と総括する。

 一方で、放送業務用機器事業は米中貿易摩擦などの影響を受け、重要な市場である中国で減速しているとのこと。モバイル・コミュニケーションは、構造改革の成果により、第3四半期でも黒字を継続。「第4四半期も固定費削減施策を実行する。一時的な費用計上は見込むが2020年度の黒字化に向け、事業構造改革は進捗している」(十時氏)と黒字化を見込む。

 イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野は、売上高は同677億円増の2980億円、営業利益は同287億円増の752億円となり、大幅な増収増益を達成。モバイル機器向けイメージセンサーが大幅な増収増益に結びついたほか、販売数量も増加した。しかし「新型コロナウイルスの影響もあり、楽観はできないと見ている。外部の環境をきめ細かく見極めながら事業を運営したい」(十時氏)と慎重な見方を示した。

 大幅増収となった金融分野は、ソニー生命の大幅増収が大きく寄与し、売上高は同2436億円増の4072億円となったが、営業利益は変額保険の市場変動などにともなう損益の悪化により、53億円減の326億円となった。

2019年度3Qセグメント別業績
2019年度3Qセグメント別業績

 ソニーでは、2020年3月期連結業績見通しを、売上高8兆5000億円(前回発表時より1000億円増)、営業利益8800億円(同400億円増)、税引前利益8600億円(同600億円増)、当期純利益5900億円(同500億円増)と、10月発表時から上方修正した。

 会見の冒頭に十時氏は新型コロナウイルスの影響について「感染拡大について憂慮している。現時点で十分な状況把握は困難だが、全力を努め、着手している。通期連結業績見通しは、上方修正したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響は含んでいない。現時点で、業績への影響を把握するのは困難で、事態の進展により、上方修正を打ち消す規模の大きな影響がでることは否定できない」と言及。

 ソニーでは、中国国内に4カ所の生産拠点を持つが、現在は春節により休業中。稼働は2月10日を予定しているが、中国国内の動向により、対応を調整していく方針だ。

 製品出荷への影響については「再稼働の状況によって影響が出るが、現在、春節に入っており、その後も延長されているため、情報収集は難しい。また部品や製品に限らず、映画や音楽分野では、映画館やコンサートが予定通り開催されないリスクもある」(十時氏)と影響の範囲について話した。

2019年度連結業績見通し
2019年度連結業績見通し

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