参院選も幕を閉じた。今回の選挙の大きな焦点のひとつは「消費税増税」だったが、蓋を開けてみれば与党は過半数を獲得。10月に10%への税率引き上げが信任を得たことになる。今回はこの消費税にまつわるPRの、海外最新成功例を紹介しよう。
実にクリエイティブな方法でロビイングの成果をあげたのは、ドイツの若き女性起業家ふたり。『THE TAMPON BOOK』と名付けられたキャンペーンは、先般開催された、世界最大の広告祭カンヌライオンズで、PR部門のグランプリに輝いた。
ドイツでは、どうしたわけか生理用品のタンポンが「贅沢品」と見なされたままで、その消費税率はなんと19%。
油絵やキャビアやトリュフでさえが「日用品」とみなされ現在の税率は7%だと言うのに、だ。その昔、ドイツの税制を創案したのは男性ばかり。またいまだに政治の舞台には男性が多いことから、時代遅れな認識になっているのがその一因だ。
これを問題視したのが、オンラインで生理用品を販売するスタートアップ企業「The Female Company」。
ぶっ飛んだアイデアだが、15個のタンポンを「付録」にした本――「The Tampon Book(タンポンブック)」を売り出したのだ。
ドイツにおける書籍の税率は7%(贅沢品とはみなされない)なので、消費者は実質7%の消費税でタンポンが購入できるというわけだ。
40ページ以上からなる書籍本体では、生理やセックスにまつわる、面白くためになる情報を読むことができる。
「The Tampon Book」は、発売されるや即日完売。1週間足らずで増刷がかかり、瞬く間にドイツの「ベストセラー」となった。
当然ながら大きな話題にもなる。メディアはこぞって取り上げ、SNS上のインフルエンサーも次々と支持を表明。それがまた販売を後押しするという好循環が生まれる。
そうこうしているうちに、女性政治家も次々とこの話題を自身のSNSで発信し始めた。結果、生理用品の税率検討を求める署名に15万以上が集まり、ドイツ議会としても放置できない状況に追い込まれた。
カンヌライオンズでは、「The Tampon Book」が大きな話題になったことのみならず、税制を逆手にとるクリエイティブなアイデアと、全体がPR発想でデザインされていることが評価された。
また、ビジネスの側面からも、スタートアップ企業として実に大きな成果を上げている。
「マジメなモノづくり」が得意という点で、共通に語られることも多いドイツと日本。しかしこのケースを見る限り、クリエイティブ発想のロビイングでは大きく水を開けられているようだ。
日本にも、時代遅れで不平等な規制やグレーゾーンの類はたくさんある。永田町への日参や国会議事堂前のデモも良いが、生活者のためになるクリエイティブでクールなロビイングがもっと企画されてよい。
そんな示唆がこのドイツの事例にはある。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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