ソフトバンク宮内社長、アスクル問題で「ヤフーを支持」--3キャリアで唯一の“増収増益”

 ソフトバンクは8月5日、2020年3月期第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比5.8%増の1兆1648億円、営業利益は同3.7%増の2689億円と、増収増益の決算となった。

決算説明会に登壇するソフトバンク宮内氏
決算説明会に登壇するソフトバンク宮内社長

 ただし、この決算内容は、連結子会社化したヤフーの前年度の業績を遡及して比較したもの。ヤフーの業績を遡及せずに比較した場合、売上高は同32%増、営業利益は同22%増となり、ヤフーの連結化によって売り上げと利益を大幅に伸ばしたことになる。

 同日に実施された決算説明会で、ソフトバンク代表取締役社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は、ヤフーを連結化したことでソフトバンクの収益源が多様化したと説明。実際、従来売上げの多くを占めていた個人向けモバイル関連事業の売上高比率は36%まで下がっているそうで、「バランスよく収益源を多様化した」と話している。

ヤフーの連結化によって、ソフトバンクはモバイルへの依存度が低まり収益源の多様化が進んだという
ヤフーの連結化によって、ソフトバンクはモバイルへの依存度が低まり収益源の多様化が進んだという

 その通信事業に関して、コンシューマー事業向けの売上高は同4%増の6581億円と、好調に伸びているという。好調を支えているのはスマートフォンの契約数の伸びで、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルの3ブランドを合わせたスマートフォンの累計契約数は、前年同期比174万件増の2245万件に達しているとのことだ。

 また宮内氏は、6月12日に開始した、フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換えると1年間、月額980円から利用できる「スマホデビュープラン」が「想像よりも上振れしている」と、好調に推移していることを説明。このプランが番号ポータビリティで他社からもユーザーを獲得し、契約数の拡大にも貢献するなど好調な業績に繋がっているという。

「スマホデビュープラン」は、それ以前に展開していた同種の施策「スマホスタート割」の3倍以上の加入者数を獲得、好調を支える要因となっているという
「スマホデビュープラン」は、それ以前に展開していた同種の施策「スマホスタート割」の3倍以上の加入者数を獲得、好調を支える要因となっているという

 最近力を入れている法人事業も、スマートフォンの契約比率上昇や、ソリューション事業の拡大で売上高が前年同期比5%増の1545億円に達しているとのこと。今後もデータやAI、IoTなどを活用したソリューションビジネスに力を入れ、「数年以内に利益を倍増できる」と宮内氏は成長に自信を示す。

 また5Gの取り組みに関しては、7月26日から開催された「FUJI ROCK FESTIVAL '19」で5Gのプレサービスプレサービスを実施したことや、KDDIと地方における基地局資産の相互利用に向け、2019年秋より共同実証を開始することなど、最近の取り組みについて説明。同社代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏は、「2021年くらいが5Gの主要端末が出揃うタイミングなので、それまでに4Gのサービスを展開しているところの9割は5Gの圏内にしたい」と話し、3年以内に5Gのエリアカバーを全国に広げる考えを示した。

KDDIと地方での基地局資産の相互利用に向けた共同実験を2019年秋より実施、5Gの地方展開を加速していきたいとしている
KDDIと地方での基地局資産の相互利用に向けた共同実験を2019年秋より実施、5Gの地方展開を加速していきたいとしている

ソフトバンクだけが「増収増益」な理由

 NTTドコモやKDDIが減益となる中、ソフトバンクだけが増益となった理由について、宮内氏は「他社は値下げなどをしているが、我々はやっていない。元々ワイモバイルで安いプランをやっているし、(通信容量が50GBの)『ウルトラギガモンスター+』も使ってもらうと結構安い」と回答。競争力のあるプランを先んじて導入し、対抗値下げの必要がなかったことがその理由だとしている。また、楽天モバイルの新規参入に向けては、楽天モバイルの料金プランの内容を確認したうえで、ワイモバイルの分離プラン導入に合わせて対応を進める考えを示した。

 同じ10月には、電気通信事業法の改正によって、“2年縛り”の違約金上限が1000円になる、通信料に紐づかない端末値引きの上限が2万円になるなど、多くの規制が入る可能性が高まっている。実際法改正を見据え、KDDIが4年の割賦払いを前提とした端末購入プログラム「アップグレードプログラムEX」を、9月末で終了することを発表している。

 ソフトバンクも同様のプログラム「半額サポート」を提供しているが、宮内氏は「基本的には収束させると思う」と、やはり9月末で終了させる方針を示した。一方で、「分離型だが、半額サポートのような形で分離型でも端末をうまく買ってもらえるアイデアをいま検証中だ」と話し、何らかの形で端末割引サービスを提供することも示唆。規制によって流動性が高まると見られる今後についても、宮内氏は「全てがマイナスだとは思っていない」と話し、他社から積極的に顧客を獲得するよう攻めの姿勢を見せた。

孫氏は「反対」するも宮内氏は「ヤフー支持」

 ヤフーの事業に関しては、すでに公開されている通り売上高が前年同期比3%増の2386億円、営業利益が同24%減の361億円となっている。そのヤフーを巡ってはアスクルとの対立が深刻な状況となっており、アスクルの株主総会で、前社長の岩田彰一郎氏と独立社外取締役3人の再任が否決されたことに関して、ソフトバンクの親会社であるソフトバンクグループは、代表取締役会長兼社長の孫正義氏が「反対の意見を持っている」とのコメントを発表している。

ヤフーの事業に関しては、アスクルとの対立に関して記者から質問が集中。宮内氏は「苦しい判断だったと思う」としながら、ヤフーの方針を支持する考えを示した
ヤフーの事業に関しては、アスクルとの対立に関して記者から質問が集中。宮内氏は「苦しい判断だったと思う」としながら、ヤフーの方針を支持する考えを示した

 この件について宮内氏は、「ヤフーは上場企業であるし、ヤフーの執行部が決めること。これからアスクル社をどんどん伸ばすためには大変苦しい判断だったと思うが、私は今回のヤフーの判断は、将来分かっていただけると思っている」と回答。孫氏とは異なりヤフーの方針を支持する考えを示した。一方で、争点となっているロハコ事業の分社化に関して、宮内氏らがヤフーに指示をするなど、グループぐるみでの施策ではないかと指摘されている点については否定した。

 それ以外の新領域に関して、宮内氏はQRコード決済の「PayPay」の契約数が累計で980万人に達したことを公表。累計決済回数も「今日まさに、1億回を突破した」(宮内氏)ことなどを明らかにするなど、好調な様子を示した。

「PayPay」は累計の決済回数が10ヵ月で1億回を突破したとのこと。今後も使用回数を増やすための施策を積極展開するとのことだ
「PayPay」は累計の決済回数が10ヵ月で1億回を突破したとのこと。今後も使用回数を増やすための施策を積極展開するとのことだ

 他にもコミュニティ型ワークスペース「WeWork」の日本国内のメンバー数が1万5000人を超え、全国に拡大を進めていることや、インドのOYO Hotelsとの合弁で「OYO Hotels Japan」を9月より開始する予定で、すでにOYOブランドとして登録が完了した国内のホテル棟数が80に達していることなど、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資企業との合弁が順調に進んでいることをアピールした。

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