塗るだけで電気加熱、フラッシュで光る布--最先端の“ウェアラブル素材”が京都に集結

 温度調整できるインナーダウンウェア、塗るだけで電気加熱できるコーティング剤、フラッシュで光る布ーー。日本の技術力から生まれた様々なウェアラブルテクノロジーを紹介するイベントがマテリアル京都(MTRL KYOTO)で開催された。

 マテリアル京都では、ものづくりに携わる人たちが素材をテーマに交流するミートアップを定期的に開催している。4回目となる今回は、ウェアラブルテクノロジーをテーマに、最先端の研究開発によりアパレルやファッションをはじめ、インテリア、建築、医療にまで利用シーンが広がる新旧素材や織技術について、機能や応用事例を紹介。素材の現物やそれらを使った製品の展示も行われた。

「機能性」と「耐久性」を兼ね備えたウェアラブル素材

 デジタル技術とアパレルの組み合わせは数年前から始まっているが、名古屋に本社があるTAIONはユニクロ独占状態のインナーダウン市場に切り込み、成功したことをきっかけにモバイルバッテリーで温度調節ができる新製品を開発している。

 同様の製品は釣具やバイクメーカーからも発売されているが、TAIONは独自のヒーティングシステムによって、“ちょうどいい体温”が維持できる機能を開発。ファッション性と着心地、価格でも評価され、先行発売したニューヨークをはじめ国内でも売り上げを伸ばしている。今後はスマホやセンシング機器との連携も検討しており、さらに販路を拡げるためのパートナーを探しているという。

TAIONのインナーダウンは他社と同じく丸めて収納できるほか袖部分が着脱可能など機能が充実している。
TAIONのインナーダウンは他社と同じく丸めて収納できるほか袖部分が着脱可能など機能が充実している
独自のヒーティングシステムを開発し、胸のマークを押して3段階で体温調整できる。
独自のヒーティングシステムを開発し、胸のマークを押して3段階で体温調整できる

 肌着メーカーのグンゼもウェアラブル分野に取り組んでおり、素材開発に長年力を入れてきた成果をもとに、はんだ付けで通電できる「ニット配線」を開発した。エナメル被覆銅線と耐熱繊維で作られており、編み物のように伸ばしたり、ひねったり、巻いたり、アイロン接着もできるフレキシブル性を備えている。耐久性も高く、動きにあわせて色が変化する手袋はエンタメ分野で高い機能性が評価されている。様々な電子機器や異種素材との組み合わせも可能で、温度センサーの反応で表示が変わるLEDバッグ、布製のピアノ、光るシリコンパーツなどをサンプル出展していた。

グンゼのニット配線は応用力と機能性の高さで今後利用範囲が広がりそうだ。
グンゼのニット配線は応用力と機能性の高さで今後利用範囲が広がりそうだ
ニット配線を利用した様々なサンプル品が展示されていた。
ニット配線を利用した様々なサンプル品が展示されていた

 ジャパンポリマークは熱転写技術を利用してポリウレタン樹脂の特製を生かした新素材「エクスケール」を開発している。耐久性や運動性が高く、キシリトール配合で汗をかくと涼しくなるフロッキープリントが可能で、ファッション性を維持しつつ機能を発揮できるため、スポーツウェアや作業着に向いている。さらにライトやフラッシュで光る素材などもあわせて開発している。

耐久性が高く冷却機能もあるエクスケールはJリーグのユニフォームにも採用された。
耐久性が高く冷却機能もあるエクスケールはJリーグのユニフォームにも採用された
ライトやフラッシュを当てると光る素材も紹介された。
ライトやフラッシュを当てると光る素材も紹介された

 コスモポリタンが開発した、塗ったところがヒーターになる電気加熱用コーティング剤「カーボ・イーサム」は、カーボンナノマテリアルを利用した技術で、風力発電のブレードやソーラーパネルに塗って雪を溶かしたり、シール状に加工して使われている。椅子などのインテリアやアパレル、建築物にも応用可能で、IoTデバイスと連携させるなどのアイデアを今後考えていきたいとしている。

電気を通すと温かくなるコーティング剤はどこでも塗れるので応用範囲が広い。
電気を通すと温かくなるコーティング剤はどこでも塗れるので応用範囲が広い

 そのほかにも会場では、丹後ちりめんの高度な織り技術がファッションやインテリア分野に応用されているケースや、10年前からデザイン業界で注目され、ジュエリーやインテリアを作ったり、ティファニーにも採用されている薄くて伸びるハニカム機構の素材。パナソニックが開発する配線可能で伸縮自在なストレッチャブルな樹脂素材、村田製作所からは圧電シート、そしてシールド部分に情報が表示できるウェアラブルヘルメットなどが紹介された。

丹後ちりめんの緻密な織り技術はハリウッドでも注目され、攻殻機動隊の映画衣装にも使われている
丹後ちりめんの緻密な織り技術はハリウッドでも注目され、攻殻機動隊の映画衣装にも使われている
昭和飛行機工業が開発するタイルサイズから数メートルに伸びるハニカム機構素材はデザイン業界で注目されている。
昭和飛行機工業が開発するタイルサイズから数メートルに伸びるハニカム機構素材はデザイン業界で注目されている
パナソニックは配線可能で伸縮自在なストレッチャブルな樹脂素材を紹介。
パナソニックは配線可能で伸縮自在なストレッチャブルな樹脂素材を紹介

 こうした新素材や技術は目に触れる機会が少ないが、マテリアル京都では展示や購入できる場を設け、さらに素材の用途や製品アイデアを考えるイノベーションプログラムの立ち上げなども予定している。メーカーだけでなく、クリエイターやデザイナーらが幅広く連携できる場から、どのようなものづくりが始まるか注目していきたい。

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