KDDI高橋社長、au PAYは“後発”でも「十分に対抗できる」--分離プランにも言及

 KDDIは2019年1月31日、2019年3月期第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比0.3%増の3兆7717億円、営業利益は前年同期比1.1%増の8225億円と、引き続き増収増益の決算となった。

 同日の決算説明会では、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏が登壇。好調な業績の要因について、分離プランの影響で減少が続くauの通信料収入を、MVNOやライフデザイン事業など、他の事業で補っているためだと説明している。

決算説明会に登壇するKDDI代表取締役社長の高橋氏
決算説明会に登壇するKDDI代表取締役社長の高橋氏

 実際、auの通信ARPAは前年同期比0.7%減の5870円、au通信ARPA収入は2.7%減の1兆2975億円と落ち込んでいる。しかしながら高橋氏は、「auピタットプラン」「auフラットプラン」のキャンペーン需要が一巡し、さらに大容量プランの契約拡大やスマートフォンの浸透率が高まってきたことで、2019年の1月からは「反転した」と、回復傾向にあるとも話している。

分離プラン導入の影響でauの通信ARPAは減少傾向が続いているが、1月からは反転しているという
分離プラン導入の影響でauの通信ARPAは減少傾向が続いているが、1月からは反転しているという

 auの解約率に関しても、さまざまな取り組みによって0.72%にまで減少し、その影響もあって傘下MVNOの契約も含めたモバイルID数は、前年同期比2.1%増の2680万に伸びているとのこと。ただしスマートフォンの販売に関しては、分離プラン導入による流動性の低下に加え、第3四半期にキャリア間の競争が激化し、番号ポータビリティで弱含みとなったことから、販売台数が前年同期比30万台減となる、191万台に落ち込んでいる。

QRコード決済は後発でも「十分に対抗できる」

 通信事業で苦戦する一方、成長のけん引役となっているのがライフデザイン事業を中心とした「au経済圏」の拡大である。au経済圏は流通総額が1兆8900億円と、通期目標の74%の進捗率に達するほか、売上高も前年同期比23.7%増の4910億円となるなど順調に拡大を続けているという。

au経済圏は流通総額1兆9800億円に達するなど好調。通信料収入を補い業績の伸びに貢献している
au経済圏は流通総額1兆9800億円に達するなど好調。通信料収入を補い業績の伸びに貢献している

 その伸びを支えているのが付加価値ARPAの伸びで、前年同期比22%増の720円に増加。Netflixとのバンドルプランが好調なのに加え、月額制サービス「auスマートパス」の上位サービスである「auスマートパスプレミアム」の会員数も650万に達しているとのことだ。

 そしてもう1つ、伸びを支えているのが決済サービスだが、高橋氏はその決済に関して、4月からau WALLETをベースとしたQRコード決済「au PAY」を開始すると打ち出している。同種のサービスでは後発になるが、au WALLETには2000万を超える顧客基盤があることに加え、そのうち900万人が利用しているau WALLEのアプリ上からau PAYが利用できること、そして楽天とのパートナーシップにより、開始早々から100万カ所で決済が利用できることから「十分に対抗できる」と自信を見せる。

QRコード決済の「au PAY」は4月に開始予定。後発だがau WALLETの基盤と、提携した楽天のアセットを活用してライバルに対抗する構えだ
QRコード決済の「au PAY」は4月に開始予定。後発だがau WALLETの基盤と、提携した楽天のアセットを活用してライバルに対抗する構えだ

 中でも高橋氏が、他社にはないau PAYの優位性として訴えたのが、決済サービスを利用するための料金がすでにチャージされていることだ。au WALLETにはポイントやチャージを合わせ、すでに1000億以上の残高があり、それがau PAYによるau経済圏の拡大につながると、自信を示している。

 さらに今後の取り組みとして、高橋氏は5Gに関しても言及。2022年3月をもって3Gのサービスを終了するなどして、2019年中の一部エリアでの5Gサービス開始に向けた準備を始める一方、4Gに関してはしばらく5Gと併用して利用されることから、今後数年も強化していくという。

5Gに向けたスケジュールも明示。2022年をもって3Gのサービスを終了する一方、2019年には一部エリアでサービスを開始するとしている
5Gに向けたスケジュールも明示。2022年をもって3Gのサービスを終了する一方、2019年には一部エリアでサービスを開始するとしている

 また5Gとともに今後の成長が期待されるIoTに関しても、トヨタ自動車とのグローバル通信プラットフォームを米国で開始すること、そして2018年9月に設立した「KDDI DIGITAL GATE」に100社以上の企業が参加し、さまざまな取引が生まれていることなどをアピール。今後もさらに取り組みをさらに拡大するとしている。

「分離プラン」はドコモの動きに警戒

 同日は報道陣から、総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」が打ち出した緊急提言案に関する質問が相次いだ。この提言案では携帯電話会社に分離プランの徹底を求めているが、KDDIは「auピタットプラン」などですでに対応済みだ。ただ「今年NTTドコモが(分離プランを)入れる。同等の水準で来ればいいが、もう少し踏み込むと競争になる。しっかり対応しないといけない」と、高橋氏はドコモの動きに警戒感を示している。

 また緊急提言案では、48回の割賦を前提に端末を買いやすくする「アップグレードプログラムEX」などに関しても、“4年縛り”と批判しており抜本的な改善を求めている。これについて高橋氏は、「いま国会で法制度の見直しがなされており、それにともなって2019年の秋くらいにはガイドラインが設定される」とし、その内容を見てから対応を進める考えのようだ。

 ただ一方で「過去に分離モデルをやった時、(端末の)流動性が落ちたのは事実」とも話しており、端末の値引きが難しくなることで顧客の流動性が落ちることを懸念する様子も見せている。総務省の議論ではさらに、中古端末の販売強化に向けた取り組みも推し進められようとしているが、高橋氏は中古端末の販売が分離プラン導入後の大きな課題になるとしながらも、「今のところ積極的に扱うことは検討していない」と答えた。

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