家具レンタルから職人マッチングまで、シェアエコサービスの今

 ここ数年一気にサービスの数と種類が増えてきた「シェアリングエコノミー」。所有から共有へ、消費者の意識が変わりつつある中、サービスを行う事業者は、何に注目し、どんなサービスを提供しているのかーー11月21日、東京都渋谷区の渋谷ストリームホールで開催された「LivingTechカンファレンス」で行われたセッション「シェアリングエコノミーが変えるリビング空間と住まい方」から探る。

 セッションには、家具が月々500円からレンタルできる「CLAS(クラス)」を手がけるクラス 代表取締役社長の久保裕丈氏、空間、店舗デザインなどの内装業を手がけるユニオンテック内で、工事マッチングアプリ「CraftBank」を立ち上げた代表取締役社長の韓英志氏、窓、サッシといった建材ブランドの老舗であるYKK APで、AIや顔認証システムを搭載した「未来ドア」などの新規商材を開発する経営企画室 事業開発部 部長の東克紀氏が登場。モデレーターは、スペースマーケット 代表取締役の重松大輔氏が務めた。

「シェアリングエコノミーが変えるリビング空間と住まい方」のセッション風景
「シェアリングエコノミーが変えるリビング空間と住まい方」のセッション風景

シェアエコサービスはBtoBからの浸透がポイント

CLAS 代表取締役社長の久保裕丈氏
CLAS 代表取締役社長の久保裕丈氏

 8月にサービスを開始したばかりのCLASでは、ホテルやマンスリーマンションなど、BtoB向け事業が現在好調だという。「当初はBtoC向けをメインに取り組みたいと考えており、事業の立ち上げには相当時間がかかると見ていた。家具のサブスクリプションは、まだ一般的なものではなく文化形成が必要。そうした意味からも徐々に事業を拡大していくイメージをもっていたが、法人向けの需要が予想以上に早く立ち上がった」と久保氏は説明する。

 なかでもホテル、マンスリーマンション向けの引き合いが多いという。「賃貸物件をマンスリーマンションに転用するケースが増えていて、その理由は家賃収入が4~5割アップすると言われているから。その際に家具をレンタルに切り替える需要が多い」と現状を話す。

 家具の調達方法は、買うか借りるかの大きく2つしかなく、柔軟性に乏しかった。その市場にフレキシブルかつ手間とコストの負担が少なく導入できる家具レンタルを取り入れた。コーディネイトや搬入、組み立てまですべてレンタル費用に含んでおり、買うより安く済むほか、経費として計上できるなど、法人向けのメリットも多いという。

 一方、韓氏は「日本が世界に誇れるものはアニメと職人。アニメはすでにバズっていて、誰でも『ドラゴンボール』は知っている。しかし職人はレベルが大変高いのに、まだあまり知られていない。職人のスキルをサービスにしたいと思った」とサービス開始の背景を話す。

ユニオンテック 代表取締役社長の韓英志氏
ユニオンテック 代表取締役社長の韓英志氏

 CraftBankは、「仕事を依頼したい人」と「腕の良い建設職人」をリアルタイムで直接つなぐアプリ。依頼者と職人が直接受発注をするため、中間マージンが発生せず、CraftBankが職人へ100%入金を保証。職人は最速作業日当日に銀行振込やコンビニで売上を受け取れる。しかしそれ以上に大きなモチベーションになっているのが「施主からありがとうと言われる」ことだと韓氏は話す。

 「現場は多重構造のため、施主と職人が直接会話する機会は少ない。そのため納品をしても、感想を聞いたり、感謝を言われたりする経験があまりない。CraftBankでは、依頼者と職人が直接受発注することで、あらたなワクワクを職人の方に提供できる」(韓氏)と、思わぬ効果が出たという。

 「建設は最もデジタル化、ネットワーク化が遅れている業界の1つ。悲しい話だが、職人の数は減っており、発注する側は職人が見つからないと言っている。しかし工事会社の人のなかには次の仕事がないと話していることもある。この原因の1つは情報の非対称性。コミュニケーションツールが電話や人づてによる紹介で、1つの工事に複数の会社が関わることで、職人に仕事の依頼が届くまで数日かかってしまう。この部分をぶち壊したい」(韓氏)と、建設業界における職人不足に警鐘を鳴らす。

 YKK AP内で新規事業を手がける東氏も「住宅業界の職人不足は深刻。発注しても家が建てられないこともある」と現状を説明。その課題解決のための1つの手段が、住宅をパネル化し、少ない人手とコストで住宅を設置できるコンテナハウスのような住居だという。YKK APでは2019年10月をめどに福岡県糸島市のリゾート地にパネル化したコンテナハウスを作る計画があるという。

 東氏は「世界ではMaaSと呼ばれる乗り物同士がつながっていく仕組みが生まれ始め、世の中の流れは所有からシェアへ変わりつつある。一方で住宅のダウンサイジング化も進み、不動産は自由に住む場所を選ぶ可動産へと変化し始めている。さらにホンダの『家モビ』のように住まいとクルマが融合した形が提案され、自動車の領域が家に入りつつある。家を取り巻く環境が変わる中、建材メーカーも新たな取組が求められている」と自社の立ち位置について話した。

 一方、2014年に設立したスペースマーケットを率いる重松氏は「シェアリングエコノミーは身近になってきた。サービス開始後半年程度は鳴かず飛ばずだったが、BtoB市場から開拓し、信頼を蓄積することで、個人向けのユーザーがつくようになった。現在はホスト、ゲストともに個人が増えている」と現状を説明。さらに「プラットフォームビジネスはある程度大きくなると、雪だるま式に増えていく。数人で複数の物件を取り扱う代行会社のような人も出てきて、その人たちはデザインの優れたスペースの構築や、オペレーションに長けている。個人ホストの方は、その人たちをモデルにして、スペース作りをするようになる」と最近の傾向を話した。

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