ソラコム、押すだけでKDDIの“LTE-M”を使える「AWS IoT 1-Click」ボタンを発表

 ソラコムは7月4日、自社のカンファレンスイベント「“Discovery”2018」の開催に合わせて、IoTプラットフォーム「SORACOM」の新機能や新サービスなどを発表。IoT向け回線サービス「SORACOM Air for セルラー」に、「LTE-M」が利用可能な「SORACOM Air for セルラー pran-KM1」を提供することを明らかにした。

KDDIのLTE-Mネットワークを利用したIoT通信サービス「SORACOM Air for セルラー pran-KM1」を9月より提供する
KDDIのLTE-Mネットワークを利用したIoT通信サービス「SORACOM Air for セルラー pran-KM1」を9月より提供する

 これは2017年にソラコムを買収したKDDIが展開しているLTE-Mのネットワークを用いたもの。LTE-Mは従来のLTEを用いたサービスよりも低速だが、IoT向け通信方式であるLPWAの1つであるため、低消費電力かつ広範囲のエリアカバーを実現できる。もちろん、ウェブからの回線設定や管理ができる、ソラコムが提供するさまざまなサービスが利用できるなど、従来のSORACOM Air for セルラーと同じサービスを利用可能だ。

 このサービスは9月から提供する予定で、基本料は月額100円、データ通信料は1キロバイトあたり0.5円になるとのこと。同時にソラコムでは、同サービス対応の製品プロトタイプを制作するためのリファレンスデバイスとして、LTE-Mに対応したSeeedの「Wio LTE M1/NB1(BG96)」と、Quecteの「Quectel BG96」の2つを用意するとしている。

リファレンスデバイスとして、LTE-Mに対応したQuectel社の開発ボードキットなどが提供される
リファレンスデバイスとして、LTE-Mに対応したQuectel社の開発ボードキットなどが提供される

 またソラコムでは、そのLTE-Mを活用した新たな取り組みとして、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の「AWS IoT 1-Click」に対応したボタン型デバイス「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」を今年下半期に提供することも発表した。

 ソラコムの代表取締役社長である玉川憲氏はもともとAWS出身であり、ソラコムのサービスにもAWSが活用されている。現在ソラコムのIoTプラットフォームそのものはAWS以外の多様なクラウドサービスに対応しているが、そうした経緯もあってかソラコムはAWSと密に連携しており、両者を組み合わせて利用する顧客も多いとのことだ。

ソラコム代表取締役社長の玉川氏はAWSの出身であり、ソラコムもAWSと密に連携してサービスを提供している
ソラコム代表取締役社長の玉川氏はAWSの出身であり、ソラコムもAWSと密に連携してサービスを提供している

 また、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの技術統括本部 IoT/AI Solution Builder 部長/シニアソリューションアーキテクトの榎並利晃氏によると、AWSもIoTには非常に力を入れており、センサとクラウド、そして機械学習などを活用したインテグレーションなど、IoTに必要なすべての要素をAWS上に取り揃えているという。

 従来はそれらのサービスをパーツとして提供し、顧客に組み合わせて使ってもらうことを想定していたのだが、IoTを展開する顧客が、必ずしもセンサやクラウドなどに詳しいわけではない。そこで複雑な部分はAWSに任せ、ボタンを押すだけで簡単に必要なアクションを実行できるAWS IoT 1-Clickを提供するに至ったとのことだ。

 AWS IoT 1-Clickに対応したボタン型デバイスは、すでにWi-Fiのネットワークを用いた「AWS IoT エンタープライズボタン」が存在する。だが、SORACOM LTE-M ButtonはLTE-Mのネットワークを標準搭載しているため、ネットワーク接続のための設定や管理が必要ないことに加え、省電力に優れており単四乾電池2本で動作するなど、手軽に利用できるのがポイントになると玉川氏は話す。価格は1年間の通信料込みで8000円程度を想定しているが、個数・数量限定で、3980円で販売するキャンペーンを実施するとのことだ。

「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」の概要。「Amazon Dash Button」に似たボタン1つのシンプルなデバイスで、ネットワーク接続設定などの手間が必要なく利用できるのがポイント
「SORACOM LTE-M Button powered by AWS」の概要。「Amazon Dash Button」に似たボタン1つのシンプルなデバイスで、ネットワーク接続設定などの手間が必要なく利用できるのがポイント

 ソラコムではこのほかにも、大きく2つの新サービスを発表した。1つはSIMの認証技術を活用し、デバイスからクラウドサービスに接続するための初期設定をセキュアに実現する「SORACOM Krypton」だ。

 最近ではIoTの広まりによって、クラウドサービスに直接接続して利用するデバイスも増えている。だがソラコムの最高技術責任者 兼 共同創業者である安川健太氏によると、そうしたデバイスを大量生産し、1つ1つのデバイスをセキュアにクラウドサービスと接続して初期化するには事前の手間が非常にかかってしまう。また、認証設定をする上で途中に人の手が入ってしまうと、情報漏洩のリスクも起き得るという。

 そこでSORACOM Kryptonでは、デバイスに搭載されたSIMによる認証を活用することにより、セキュアにクラウドと接続して初期設定を実現するとのこと。さらに同社では、独自のSIMによる認証基盤「SORACOM Endose」を機能拡張することにより、携帯電話回線以外でもSIMによる認証を可能にしているとのことだ。

「SORACOM Krypton」の概要。デバイスに搭載されたSIMによる認証を活用することで、ネットワークを問わず手間なく安全にクラウドと接続し、初期化ができる
「SORACOM Krypton」の概要。デバイスに搭載されたSIMによる認証を活用することで、ネットワークを問わず手間なく安全にクラウドと接続し、初期化ができる

 もう1つの新サービスは「SORACOM Lagoon」。こちらはSORACOMのプラットフォーム上にIoTのデータを収集・蓄積するサービス「SORACOM Harvest」のダッシュボードを簡単に作成できるサービスだ。

 ソラコムの執行役員 プリンシパルソフトウェアエンジニアである片山暁雄氏によると、SORACOM Harvestはデバイスからのデータをすぐチェックできるため、顧客から好評を得ているとのこと。だがそれと同時に、複数デバイスのデータを並べて確認したり、しきい値を超えたらアラートを通知したり、現場の作業員などと情報をシェアしたりしたいなどの要望があったという。

「SORACOM Lagoon」の画面。さまざまなセンサーのデータをグラフィカルに表示し、並べて確認したり、しきい値を超えたらアラートを通知するよう設定したりできる
「SORACOM Lagoon」の画面。さまざまなセンサーのデータをグラフィカルに表示し、並べて確認したり、しきい値を超えたらアラートを通知するよう設定したりできる

 そうした声に応えて開発されたのがSORACOM Lagoonだという。これはオープンソースの「Grafana」をベースに、日本語化やSORACOM Harvestとの連携など独自の要素を加え、ソラコムがホスティングをすることですぐ利用できるダッシュボードになるとのこと。デバイスからのデータをグラフなどで確認できるのはもちろんのこと、しきい値を超えたらアラームを通知する機能や、閲覧専用のユーザーアカウントを作成することで、他のユーザーとの情報共有も簡単にできるという。

 こちらの料金は日本で利用する場合は3ユーザー(編集可能なユーザー1人、閲覧のみのユーザー2人)で月額980円、海外でも利用する場合は月額9.8ドルになるとのこと。なおSORACOM Krypton、SORACOM Lagoonともに、7月4日からサービス提供するとしている。

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