「ACT2ではなく、レクイエムッ!」--ジョジョスマホ「JOJO L-02K」開発陣に2万5000字インタビュー - (page 2)

 ただ、実は当初はプロダクトをスマートフォンに限定していたわけではないんです。もう1度ジョジョとコラボするとしたら、1番ベストな形は何だろうという議論をしていて、端末を選ばずにずっと使えるアプリのようなコンテンツを模索したこともありました。その中で、私はタブレットの担当なのでセカンドデバイスとして振り切った場合には何ができるかということも考えましたが、やはり最終的にはお客さまが常に身に付けて、1番コンタクトポイントが多いもの、そしてファッション的な位置づけでもあるスマートフォンがジョジョにはふさわしいということで、改めてスマートフォンに落ち着いたという経緯があります。

鹿島氏 : なんとなく最後はスマートフォンに帰着するということは分かっていたんですけれども、ドコモのサービスのアセットや種類というのは多岐に渡っているので、どういうコラボレーションができるのかというところは、端末に関わらず踏み込んだ議論をしていましたね。

 そして、集英社さんにこのプロジェクトのご相談にうかがったのは、僕がプロダクト部に着任してから少し経った時なので、たしか約2年前の2016年の6月ぐらいだったと思います。そこからいろいろと本格的に動き始めたという感じですね。

——2人が出会った瞬間からこのプロジェクトは温められていたんですね。ところで前モデルが発売されてからこの5年半で、テレビアニメが放送されたり、原画展が開催されたり、グッズが増えたりと、ジョジョを取り巻く環境も大きく変化しましたが、どの辺りの層をターゲットにしているのでしょう。

鹿島氏 : 間違いなく、ガチ層ですよね(笑)。

津田氏 : ただ、ガチ層と言っても必ずしもハマった期間が長いことを表しているとは思っていなくて、若い方やアニメから触れた方でも、すごくのめり込んでいる方もいらっしゃると思います。僕らの肌感覚でもファンの裾野が広がっていると感じますね。

鹿島氏 : そうなんですよね、アニメが放送されたので前モデルの時よりも確実にファンは増えています。なので、今回の端末にアニメのコンテンツを使うという選択肢もあったと思うんです。たとえば、アニメならではの音とか動画みたいな動きのある表現を取り入れることもできたのですが、そこはあえてしませんでした。僕はアニメのDVDも全部持っていて大好きなんですが、最終的には原作のイラストに立ち返るというか、やっぱりそこに常に戻りたいという気持ちがありました。それと、アニメはまだ第4部までしか放送されていないので、逆にアニメを入れてしまうとそこまでのコンテンツしか使えないというリスクもありました。どうしても最新の第8部まで入れたいという思いが強かったので、原作コンテンツのみにこだわりましたね。

津田氏 : そういう意味では、前モデルが発売された2012年ごろはまだジョジョに関するグッズも少なくて、僕らもファンとしてグッズに対する飢餓感みたいなものはありましたよね。何が出ても初めての新しい状態から、そのあといろいろなグッズが展開されるようになって、いまでは普通の発想だと似たようなものになってしまう。そういった観点で、あえて原作に寄せるなど、より突き抜けた発想が必要になったのだと思います。原作の流れでもう1つお話ししておかないといけないのが、ジョジョが30周年であるということと、「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」がこの夏に国立新美術館で開催されるというところも、タイミングとしては非常に大きかったと思っています。この原画展があるからこそ、原作のイラストにもう一度光を当てるタイミングにもなったと思いました。


「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」

開発パートナーに「LG」を選んだ理由

——私もアニメは大好きですが、やはり原作に回帰するところがあって原作にこだわっていただけたのは嬉しいです。ちなみに、今回も開発パートナーはLGエレクトロニクスですが、やはり前モデルの実績もあり同じメーカーを選んだのでしょうか。

鹿島氏 : 実はメーカーを特定してプロジェクトをスタートしたわけではなく、何社かとお話をさせていただいていたんです。

津田氏 : 完全にゼロからの検討でしたね。

鹿島氏 : 僕らがやりたいことや、実装したい機能などを書き記した結構なボリュームのリストを、各移動機メーカーさんに提示を差し上げて、それに対してどの程度カスタマイズできるのかをおうかがいしていったというのが検討のプロセスで、結果的に1番カスタム範囲というか、僕らの目指す姿に近づけそうなご提案だったのが、LGエレクトロニクスのV30+だったということです。

※「V30+」の端末スペック。本体サイズは幅約152mm×高さ約75mm×厚さ約7.4mmで、重量は約158g。約6インチの有機ELディスプレイ、約1650万画素+約1310万画素のデュアル広角カメラ、2.45GHz+1.9GHzのオクタコアCPU、4GバイトのRAM、128GバイトのROM、3060mAhのバッテリを搭載。OSは最新のAndroid 8.0。

津田氏 : 若干形を変えたものとか、一緒に検討していく中でよりベストな形を追求していったところもあるのですが、先方もかなりの覚悟を持って取り組んでいただき、私たちが当初からやりたかったアイデアを、ほぼすべて盛り込んでいただけました。

鹿島氏 : これはコラボモデルならではなのですが、今回も荒木先生と集英社さんに監修していただいたので、コンテンツの一部を変えてほしいというリクエストをいただくこともあるんですね。そういった要求を吸収して開発に組み込むというところをある程度、柔軟にご対応いただけないとスケジュール的にも難しい。結果的に、それでも結構押せ押せになってしまったんですけれども、そこら辺の柔軟性みたいなところをアピールいただけたところも選定ポイントでしたね。

——LGエレクトロニクス側にも“ジョジョラー”がいたのでしょうか。

津田氏 : 実は先方は当初、ジョジョのことをあまりご存じではなかったんですよ。でも、いつの間にかどんどん読み進められていて、最後にはスティール・ボール・ランの話などで盛り上がったりしましたね。

——ということは、前モデルとはLGエレクトロニクス側の開発メンバーも異なると。

津田氏 : 基本的にはそうですね。なので、僕らがお願いしたことに対して、「これってどういう意味でしたっけ」ということにならないように、コミニケーションは密にしました。たとえば、このあとご紹介する音楽プレーヤーには、ミュートボタンをつけているんですね。ジョジョリオンに出てくるスタンド「ソフト・アンド・ウェット」の“音を奪う能力”の演出なんですけど、「どうしてミュートボタンが必要なんですか?」と不思議がられたり(笑)。そんなやりとりを繰り返しながら開発しましたね。

第2弾のコンセプトは「ジョジョニケーション」

——お2人の相当マニアックかつ細かい要求に困惑するLG担当者の顔が浮かびます(笑)。前モデルでは、搭載したい機能やデザインのアイデアが詰まった通称「鹿島ノート」がありましたが、今回もそういったアイデアノートを用意したのでしょうか。また、前回のノートから引き継がれたアイデアはありますか。

鹿島氏 : そうですね、前回ほどではないのですが、今回もノートにいろいろなアイデアを書いて、頭を整理しながら開発に挑みました。特にメーカーさんにどう作ってほしいかを伝えないといけないので、かなり詳細に説明する必要がありました。たとえば、ホーム画面のギミックが変わるといったところも、具体的なイメージを持ってもらうためにノートを見せてから、デジタルで再現してもらったりしましたね。音楽プレーヤーなどは前モデルと近い機能なので、前回のノートから引き継いだものもあります。ジョジョと一緒ですよ、継承するものもあれば、テーマとして変わるものもあるということです。


「JOJO L-02K」のアイデアノート

当初のホーム画面のラフスケッチなどが描かれている

——前モデルのL-06D JOJOは、4:3の画面アスペクト比を採用した端末形状が特徴的でした。これは電子書籍を読むのに最適化した画面サイズでしたが、今回はなぜ通常サイズのスマートフォンを採用したのでしょう。

鹿島氏 : まず、この端末のコンセプトを先にお伝えしておかなければいけないですね。前回のモデルが発売された2012年ごろは、電子書籍が走り始めたころだったので、形状もチャレンジングなものにしたんですけれども、今回はそうではなくて「コミュニケーション」がキーワードになっています。僕の中では「ジョジョニケーション」と呼んでいるんですけれども、そういった造語を1つのキーワードとして機能群を構築していきました。

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