ヤフーが持つビッグデータを社外の課題解決に--日産や神戸市などと実証実験

 ヤフーは2月6日、AIを活用した企業間でのビッグデータ連携について、実証実験を本格的に開始すると発表した。


(左から)ヤフーチーフデータオフィサーの佐々木潔氏、日産自動車コーポレート市場情報統括本部エキスパート・リーダーの高橋直樹氏、神戸市長の久元喜造氏、Jリーグデジタル専務執行役員の出井宏明氏、ヤフー副社長最高執行責任者の川邊健太郎氏

 これは、ヤフーが展開する検索やECなど各種サービスで蓄積したビッグデータに加え、顧客企業の持つデータを組み合わせ、同社が持つAI技術やスパコンを使用した計算リソースを活用。生活者への深い理解に基づく商品企画や、需要予測にもとづく生産・物流の最適化など、企業や自治体、研究機関などの課題解決に貢献するとしている。

 ヤフーでは、同社のさまざまなサービスから収集したビッグデータを掛け合わせることで、単一サービスを上回る精度の予測を実現しており、同社の各サービスの予測に活用されている。一例として、「Yahoo!検索」の検索履歴と「Yahoo!ショッピング」の購買履歴を掛け合わせることで、Yahoo!ショッピングの新規ユーザーに対する商品レコメンドのクリック率が4.5倍に向上したという。

 こうしたビッグデータ活用を外部のユーザー企業にも展開。例えば、毎年3000商品の中から2商品程度しか定番として残らない食品業界にて、検索と購買データでユーザーニーズを把握し、購買を引き上げられるようにできるほか、1年で20億着以上が廃棄される衣料品も、在庫のコントロールや値引きのタイミングミスによる機会ロスの発生を、地域検索や購買情報から、何がどこでどれだけ必要なのかを予測。正確な値付けや在庫調整が可能とする。

 実証実験には、日産、江崎グリコ、Jリーグ、神戸市、福岡市が参加。データの活用は始まったばかりだが、一部企業では成果も出始めているという。さらに多くのユーザー企業や研究室、自治体などデータを持つ企業に参加してもらい、社内外のデータを組み合わせることで日本中の課題解決につなげる「データフォレスト」構想として、実験を進めながら2019年の事業化に向けて推進するとしている、


ヤフーのデータを使った初歩的な取り組み

 日産とは、市場調査を担当する部門と連携する。同部署は、市場調査に留まらず、販売予測やトレンド予測も手がけており、米国、中国、EU、インド、中近東エリアに拠点を持つ。各地からのインサイトを引き上げて会社の将来に向けた提言を実施する。

 日産自動車コーポレート市場情報統括本部エキスパート・リーダーの高橋直樹氏は、「ヤフーは消費者の多様なデータに加え、横断的に分析できるプラットフォームを持つパートナー」とし、初期段階での連携では、販売台数予測の可能性やブランドイメージにおける新たな知見が得られたという。高橋氏は、日産のコーポレートスローガンにならい、「(データの活用に関して)もっとやっちゃえヤフーさん」と期待を込めた。


Jリーグデジタルにおけるヤフーデータ活用(初期段階)

 Jリーグデジタルは、「DAZN」を含む国際映像制作やライブ配信のほか、オウンドメディアなどのコミュニケーション、チケッティング、マーケティングなど、Jリーグにおけるデジタル戦略を担うJリーグホールディングスの子会社。同社専務執行役員の出井宏明氏は、「2016年より顧客データベースに投資。2018年からは顧客体験の向上を目指して、顧客にメリットのあるサービスを提供する」とし、「リアルの場やさまざまなデバイスに対応したコンテンツを持っている。アプリ、オンラインストアなどで、どのようなアクションを起こすべきか、どのセグメントにどういった情報を出すと良いかを考えている」と説明。

 ヤフーのデータを使った初期の取り組みとして、出井氏は「野球とJリーグの観客の奪い合いに関してデータを活用して調査したところ、年1~2回しかサッカーを見ない顧客にとって、野球もサッカーも休暇の選択肢の一つとの結論に至ったという。週末の時間をいかにJリーグというコンテンツを楽しんでもらうのか、消費者理解、Jリーグの世の中の立ち位置など、ヤフーの力でさまざまなことができないかとワクワクしている」と語った。


神戸市との取り組み

 また、神戸市とは防災などの連携以外にも、市が持つ統計データやオープンデータと、ヤフーのマルチビッグデータをかけ合わせた課題解決などで三宮における再整備の効果を可視化。歩行者空間の拡大や居心地の良さなどに重点を置いた。また、救急車の稼働状況の分析でも連携し、増え続ける119番に対応するため、今後の救急需要を予測。人口密度が高い地区で時間帯で密度を調整するといったことも取り組む。

 なお、個人情報保護の観点については、基本的には統計情報しか使用しておらず、個人が特定できる形ではないという。また、データ自体を販売するのでは無く、API経由などでインサイトを提供するスタイルになるようだ。今後、もし個々人のデータを活用する方が効果的だと判断した場合は、法令順守、ユーザーへの許諾、理解を深めつつ検討するとしている。

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