“激動”だった2017年の仮想通貨--大手取引所のコインチェック和田社長が振り返る

 2017年で話題となったトピックとして、避けて通れないのが仮想通貨だろう。2017年の初めは10万円程度だったビットコインの価格は、240万円をピークに一度下落したものの、現在は100万円台後半を行き来している。

 そのほかにも、改正資金決済法の施行、フォーク問題、税制面での対応など、さまざまなトピックが話題に上った。この激動の2017年を仮想通貨取引所はどのように見ていたのだろうか。国内取引所大手「coincheck(コインチェック)」を運営するコインチェック代表取締役社長の和田晃一良氏に、この1年を振り返ってもらった。


コインチェック代表取締役社長の和田晃一良氏

1年で最大のトピックは「注目度が上がったこと」

――2017年は激動の年だったかと思いますが、振り返ってみていかがでしょうか。

 一番は仮想通貨の注目度が上がったことですね。2017年1月はそこまで価格も上昇しておらず、ビジネス的にもブロックチェーンで何か模索しつつも、仮想通貨に関しては消極的な雰囲気でした。ベンチャーキャピタルが2017年に盛り上がると予想する分野の紹介記事でも、仮想通貨を挙げている人は見当たりませんでした。

 そのため、年明けからは特に大きな動きはなかったのですが、3月にビットコインがETF(上場投資信託)に上場するという話が出てくると、ビットコインの価格は一気に2倍ほど上昇しました(その後、承認されず)。今まで仮想通貨にアングラなイメージを持たれた方も多かったように思いますが、ETFの件も含め、既存の株式に台頭する存在として注目されるようになりました。

 国内では、4月に改正資金決済法が施行されたことも大きいでしょう。海外では、米国などでビットコインライセンスなどありますが、他国では仮想通貨に関する法律は整備されていませんでした。法改正に合わせ、本人確認や顧客への取引の説明・リスク周知など、ユーザーの裾野が広がったことに合わせた法律への対応が必要となりました。

 あとは、価格が大きく上がりましたね。先ほどのETF上場によるビットコインの高騰や、アルトコインの伸びにより、3~5月でユーザー数は大幅に増加しました。2016年12月で2000億円程度だった取扱高ですが、現在は4兆円を超え、1年で約20倍に拡大しました。ユーザー数も1年前の10倍以上に増えてます。これだけユーザーが増えるとインフラの増強も大変で、エンジニアやサポート体制の強化など、社員数も1年前の20倍近く増えています。


コインチェックでは、12月13日より出川哲朗さんが出演するテレビCMを放映。CM効果によりユーザー数は通常時の10倍に、AppStoreの「無料ランキング」では、無料カテゴリで5位、ファイナンスカテゴリで1位を記録したという


各取引所の取扱高の推移(出典:JPbitcoin

――夏ごろには、ビットコインのハードフォーク(仮想通貨の技術的問題点を解決すべく、仕様変更したコインを生成すること)が実施されました。

 ビットコインキャッシュの値動きは予想外でした。すでにハードフォークを実施したイーサリアム、イーサリアムクラシックと同じ動き(イーサリアムの価値が10万円だった場合、8万円の通貨と2万円の通貨に分かれる)と予想していたのですが。実際にフォークされると、両方ともに価格が上がり続け、気づいたらとんでもない額になっていました。

 ビットコインでは、手数料の高騰やトランザクションのスピードから決済面で使いづらいなどの課題がありますが、それを解決するにはハードフォークするしかありません。これにはビットコイン開発者も悩んでおり、サイドチェーンやライトニングネットワーク、ペイメントチャンネル(それぞれ送金手数料を引き下げ、トランザクション速度を高速化する技術)でこれらの課題を解決しようとする動きも出ています。ただし、ライトニングネットワークは理論・実験段階ですし、ペイメントチャンネルもこれからです。

――コインチェックでは、決済システム「coincheck payment」を提供していますが、実際にビットコインでの決済は増えているのでしょうか。

 coincheck paymentの導入店舗数は増加していますし、ビットコインを持つ人も増えた結果、決済額も伸びています。用途も、インバウンドよりも国内での利用が多くを占めます。しかし、ビットコインの現状を考えると、それ以外の通貨を使った決済も検討しています。その点、ビットコインキャッシュなどは、ブロックもすいており、トランザクションも多くないため決済に向いているでしょう。

 誰かの言葉ではあるのですが、今、国内で成長している産業はなかなかありません。株価が大きく上がっているわけではなく、米国と比べて巨大なIT企業が出現している状況でもないですし、投資で成功体験を持つ人は30~40代以下だとほぼいないでしょう。日本人は、よく投資するべきと言われますが、実際は投資をしても意味がないという状況に陥っています。

 それが、投機的ではありますが、仮想通貨を購入して値上がりし、リターンを得るという体験を初めて得られたわけです。投資はリターンがないと意味がありませんし、続きません。ある程度値動きがないと、投資がどういったものか入り口に立てないのです。


コインチェックアプリ画面。30~50代の男性がメインユーザーだが、半数以上は投資初経験だという。わかりやすいUIが支持されている

 ビットコインや仮想通貨は、良くも悪くも値動きが大きいので、今まで株式投資などの経験がない人でも投資に興味を持ち始めています。コインチェックのユーザー層は、30~50代の男性がメインですが、半数以上は投資を初めて経験した方です。投資もネットも強くないけどスマートフォンは持っているという人が、話題になって買ってみるというケースも多いのです。

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