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    2005~2011年アップルの何がニュースだったのか--CNET Japan歴代記事ランキングで解く

    文・井上和典/AERA編集部 2011/07/20 15:21

     時代を創り、時代を動かしてきたアップル製品。ニュースが配信されるや否や、バズ(騒ぎ)が巻き起こる。でも、みんなはアップルの何を読みたいの?「CNET Japan」編集長・別井貴志とジャーナリスト・神尾寿が、人気記事から昨今のIT事情までをぶっちゃける。
    AERA別冊「AERA×Apple アップルはお好きですか Love?」から抜粋

    別井:とりあえず、ざっくりと「アップル」がテーマということで、まずはサイト「CNET Japan」におけるアップル関連記事の閲読ランキングを出してみました。これは2005年からのPV(ページ閲覧回数)を集計したものです。いまでもアップルの記事は人気ですが、読者は変わってきているようです。

    神尾:そうですね。ジョブズがネクストからアップルに復帰して、丸っこいボンダイブルーのiMacやMac OS X、さらにはiPodが出てから、ユーザー層は一気に変わりました。90年代と00年代のマックユーザーは全然違うんです。

    別井:ガラッと変わりましたね。

    神尾:90年代はマニアックというか特殊というか……。言葉を丸めていますが、要は「マック信者」です(笑)。

    別井:Windowsと戦っているころから、ある一定数の信者がいます。03年にCNET Japanが始まったときも、社内には信者がいましてね。そのせいか、他のメディアよりアップルの記事が手厚くなっていた分、アップルファンが多く読んでくれているみたいで。

    神尾 寿/かみお・ひさし 神尾 寿/かみお・ひさし
    1977年生まれ。ジャーナリスト。90年代からIT専門誌の記者として活動。IT分野のほか、日本カー・オブ・ザ・イヤー2009-2010の選考委員を務めるほど車にも造詣が深い

    神尾:当時のアップル好きは、迫害された少数派のようなもので結束が固かったんです。それに「一般大衆とは違うんだ」というスノッブ(snob)意識が強かった。使っている人の職業もデザイナーなどが多く、「ボクはデザイナーだからね」といった選民思想みたいなものもあったし。

    別井:そうそう。「おまえらにはわかんねえかもしれないけど、すげえの使ってんだぜ、俺」みたいな。

    神尾:ジョブズ復帰前は、高い値段で、主に信者に向けて販売していた。でも、ジョブズが戻ってきてiPodを発売した01年あたりから、グッと大衆化してコンシューマーに目を向けた。と同時に、従来の「信者」を切ったんです。

    別井:iPod以前はビジネスとしてマイクロソフトに完敗でしたよね。

    神尾:マス・マーケティングで失敗しました。つまり、高い値段でも買ってくれる商売で、マニアックな層にウケればいい「ギークマーケット」を作らざるを得なかった。信者ばかりで新しいユーザーが入ってこないから、また値段を高くしなければならない、という悪循環です。

    別井:株価も10ドルを切った時代でしたからね。

    神尾:でも、ジョブズ復帰以降は、シンプルでわかりやすい言葉を使うようになり、女性を優遇するようになった。そんな大衆化に黙っちゃいられなかったのが、それまでの信者たち。耐え切れずにUNIXとかに方向性が向いてましたね。いまだとAndroidに古いマックユーザーがいるようですね。アップルのことを、けちょんけちょんに言ってる人が本当にいますよ。ジョブズは、信者を中心にしたマーケットは、もう考えていなかった。

    別井:確かに大衆化は成功して、90年代のコンピューター会社から音楽事業会社になって、今では電話・通信端末会社になった、と言えなくもない。ガラリと変えてきた。ただ、ハードウエアとソフトウエアを合わせて提供することだけは変えていない。

    神尾:そうですね。ジョブズの考え方が、ディズニーっぽくなったように思えます。

    別井:おもしろい表現ですね。

    神尾:ユーザーに提供しているのがハードウエアではなく、使用して得られる「体験」であり「価値」なんです。ハードはあくまで儲ける手段でしかない。ディズニーもそう。儲ける手段として入場料とお土産があり、客に提供しているのは体験。アップルも収益源となるプロダクトやソフトウエアは手段、という考え方に変わってきた。21世紀的なメーカービジネスで、トータルで世界観をつくっているんです。

    別井貴志/べつい・たかし 別井貴志/べつい・たかし
    1968年生まれ。「CNET Japan」編集長。アップルに関する情報に限らず、IT分野のニュースをリアルタイムに配信する。CNET Japanは2003年から運営している

    別井:なるほど。確かにユーザーに体験を与えるために、アップルはイノベーションを起こしてきました。コンピューター業界に限らず、音楽業界しかり、通信業界しかり。

    神尾:そのイノベーションの本質は「開放」です。80年代の初代Macは、電算室だけに置かれていたコンピューターからの開放。iPodは、CDアルバムのパッケージ販売からシングル単位のコンテンツとしての開放。そしてiPhoneはインターネットを身近なものにした。日本ではiモードが浸透していたからありがたみを感じませんが、世界ではとても大きなことでした。

    別井:開放という意味だけを取れば同じく巨大な存在となったグーグルも騒がれます。ただ、ちょっと違うんですよね。

    神尾:グーグルは知的エリートが考える開放。全部開放しちゃえば、頭がいいから何とかなるだろう、的な。伝える作業をしない。鼻持ちならない人たちが、偏差値65以上の人ばかりを見ているような開放です。

    別井:あはは。グーグルの本質を捉えてますね。

    神尾:でも、アップルは違う。普通の人が理解できるように咀嚼する意識が芽生えた。ユーザーに対し、おもてなしの考え方がある。ユーザーと向き合っているからこそ、アップルストアを造っているんです。

    別井:そうですね。アップルストアの存在は、まさにその象徴。グーグルとは違うベクトルを向いています。

    神尾:考え方を貫き通したいのがアップル。だからファンも多ければ、アンチも多い。

    別井:好きな芸能人1位は、嫌いな芸能人1位になったりするようにね。さて、記事ランキングに話を戻しますと……。

    週刊誌AERAが、丸ごと一冊「アップル」を本気で研究したムック
    『AERA×Apple LOVE? アップルはお好きですか』6月29日発売

    iPadやiPhoneの仕事活用例やスティーブ・ジョブズのプレゼン術などを実践的に紹介するだけでなく、「アップル」、そして「ジョブズ」にフォーカスし、イノベーション、デザイン、建築哲学などを多角的に分析。32ページ綴じ込み付録として「ビジネスに効くジョブズ10の言葉」を収録、ジョブズの仕事哲学を徹底的に特集しました。アップルの本質、ジョブズの素顔とは。ビジネスマインドに「変革」を与える1冊です。定価980円(税込み)。

    全国の書店のほか、Amazon.co.jpなどインターネットで購入できます。

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