松村太郎が見た「iPad 2」--猛追するAndroid群、アップルの競争優位性とは

 Appleが米国時間3月2日に発表したiPadのセカンドモデル「iPad 2」は、米国では3月11日、日本でも3月25日に発売されることがアナウンスされた。現地の発表会場にソフトバンク孫正義社長がいたことから予想は付いていたが、日本国内では引き続き、ソフトバンクモバイルがiPadのWi-FiモデルとWi-Fi+3Gモデルの販売、データプランの提供を行うことが発表されている。

  • 「iPad 2」

 3月3日の朝10時より、アップルストア銀座にて日本向けにプレスイベントが行われ、実機展示も行われた。発表内容の振り返りながら、ファーストインプレッションをお届けしたい。なお、イベントの様子はアップルのウェブサイトにて映像が公開されている。

iPadが突き放していること、iPad 2で追いつかなければならなかったこと

 まず、Appleのプレスイベントの壇上に現れたのが、病気療養中のSteve Jobs氏であったことは、驚きとともにうれしい誤算だった。株主総会でも後継者計画のプラン提出が求められるなど、Jobs氏の健康状態がAppleのリスクとして数えられるようになっているが、その声をはねのけるように、力強い言葉を聞くことができた。しかし言葉の強さは、iPad、そしてiPad 2が決して絶対的優位にあるわけではないことの裏返し、とも受け取れる。

 Jobs氏は、冒頭、PC以外のビジネス領域として2001年のiPod、2007年のiPhone、そして2010年のiPadを紹介した。特にiPhoneはまもなく1億台を出荷するとしており、依然として強い需要に支えられている。2010年第4四半期において、端末のマーケットシェアは4%だが利益のシェアは50%を超えるなど、非常に効率のよいビジネスを展開していることでも知られている。またiPadは2010年4月から12月までに1500万台を出荷し、タブレット市場の90%のシェアを誇るとアピールした。

 iPadは、iPhoneと同じタッチベースのiOSを採用し、コンピュータにタブレット市場を見出すきっかけを与えたデバイスとして評価してよいだろう。App Storeのエコシステムによって、1年弱で6万5000本のアプリがiPadにはそろっており、iPadと同時にリリースしたiBooksは1億冊の本がダウンロードされたという。タブレットに最適化されたAndroid 3.0 Honeycomb向けには「100本しかアプリがない」と、アプリケーションやタブレット活用の充実度合いを数字で示し、教育機関などでの活用事例をビデオで示した。

 実店舗のApple Storeで最新のテクノロジに触れる場を提供し、すでに活用の場が拡がっていること、アプリが充実していること。これらはAndroidや他のプラットホームのタブレットにはまだない、iPadの圧倒的な優位点だ。

  • 「2011:Year of the copycats?」とJobs氏

 Jobs氏は「2010年はiPadの1年だった」と語り、Samsung、RIM、そしてモトローラの「Honeycomb」ロゴを出しながら「2011年はCopycat(まねっこ)の1年?」と皮肉った。しかしこれらのHoneycomb搭載端末たちは、Jobs氏には申し訳ないが、実によくできているタブレット製品だ。

 1月にラスベガスで開かれた2011 International CES、2月のMobile World CongressでHoneycombタブレットが披露された。日本でもドコモがLG電子の「Optimus Pad」、KDDIがモトローラの「XOOM」を販売するとアナウンスしている。実際にこれらのデバイスに触れると、特にブラウザの使用感はiPadを上回る快適性を示してくれる。そして何より、Flashコンテンツを表示することもできるのだ。

 NVIDIAのモバイルプロセッサ「Tegra 2」のデュアルコアチップによって、Optimus PadやXOOMといったHoneycombタブレットでは、そのユーザーインターフェースや表示スピード、スクロールの動作などはこれまでのAndroidデバイスやiPadとも見違えてスムーズだった。これらの性能を生かしてiPadが得意としていた映像やゲームなどのエンターテインメント分野での活用を提案し、Appleと真っ向勝負を仕掛ける体制を整えていた。

 いくら「まねっこ」と呼んでみても、タブレットの基本機能であるブラウザにおいて、すぐに違いを体験できるほどの性能差を放っておくわけにはいかない。そしてタブレットの世界を切り開いたトップランナーとして、早い時期に、次の答えを提示しておく必要があった。そこでiPad 2の3月発表や発売が位置づけられたと考えられる。

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